火おこしで生徒が燃える授業を
既知をひっくりかえし、未知にむかう
4月、どんな生徒でも「がんばろう!」と新たな気持ちになっている。歴史を学ぶ最初であればこそ、「歴史っておもしろい」と思わせたい。何事も第1印象が大切。火おこしは、生徒が夢中になり、大喜びする教材のひとつだ。
一本の棒と板から煙が出て、火がおきる。生徒は木と木をこすり合わせると、発火するという知識(既知)は持っているが、大変な労力と時間がかかる遅れた技術だと思っている。なかには火がおこるのに1時間はかかるだろうなどと。まして自分に火おこしができるとは思っても見ない(未知)。
ところがキリモミ式の発火法でも、小学校高学年から中学生の生徒なら1分ほどで簡単に発火させる事ができる。ヒキリ棒が左右に動かないように注意しさえすれば、二人が向かい合わせになって、疲れたら交代する方法をとってもよい。
発火したときの驚きと喜びは、声となって教室にこだまする。そして「先生!オレにもやらせて!」と身をのりだしてくる。
同時に「原始の技術は馬鹿にならないぞ。原始人の工夫はすごい!」と、既成の知識やイメージがひっくりかえされる。
脱線と系統
このような学習は、教科書的な系統からみれば「脱線」の授業だが、室町時代には荏胡麻による明かりと「座」の学習、江戸時代の菜種油による明かりと「国訴」、鯨油による明かりとペリーによる「開国」、明治時代のガス灯の明かりと明石の「文明開化」、電灯による明かりと「産業革命」と学習は明かりを通じて「系統」的に進んでいく。抽象化にむかう授業が原始の火おこしからスタートする。
では、実際に発火具をつくって、生徒とともに火おこしをやってみよう。
【用意するもの】
@杉の板(厚さ1p程度)。板のふちにV字の切り込みをいれる。幅4ミリ、深さ3〜4ミリ程度、V字のおくに皿状のくぼみ(直径1センチ、深さ2ミリ程度)をつくりヒキリウスをつくる。
Aセイタカアワダチソウ……直径1p程度。セイタカアワダチソウは、秋に刈り取って、1カ月ほど陰干しをしておいたものを使う。原始時代に日本になかった植物だが、比較的まっすぐなヒキリ棒をとることができ、発火もさせやすいす。セイタカアワダチソウは郊外に出ればどこにでも自生しているし、手近になければ、ラミンの棒を教材会社やDIYの店で用意をしてもよい。
今回の実験では二人組でキリモミをして、ここまで49秒だった。
発火具にはほかにさまざまなものがある。下の文献を参考に火おこしに挑戦してみていただきたい。
参考文献:『火をつくる』岩城正夫著,大月書店刊