テーマ サラダボールの国 アメリカ合衆国(岩本賢治)
(帝国書院地図の利用法)
@アメリカ合衆国の成立と移民 アメリカ合衆国の国土の拡大の様子を読みとらせ、大西洋岸から太平洋岸へと拡大していくことに気づかせる。地図中メイフラワー号は、1620年イギリスからアメリカ大陸へ移住した清教徒を運んだ180トンの船である。彼らがたどり着いたボストン郊外のプリマスは、ヨーロッパとの大圏コース上、つまり地球上の2点を結ぶ最短コース上にあることを説明する。
地図上から国土となった年代を読みとらせ、簡単に説明する。1776年東部13州の独立、1783年パリ条約によりイギリスから獲得。1803年ルイジアナをフランスから購入、1819年フロリダをスペインから買収、テキサスを1845年にメキシコから合併し、さらに1848年メキシコとの戦争によって割譲させ、カズデンもメキシコより購入をした。生徒に国境線に注目させ、「アメリカとカナダの国境はなぜまっすぐなのか。」と質問し、自然に決まった国境でないことに気づかせる。北方のオレゴンは1846年北緯49度をアメリカとカナダの国境とすることで交渉が成立した。
西部への白人の移住がふえるにつれ,先住民族のインディアンはさらにその西へ強制移住させられていった。このことも一言ふれておきたい。生徒は映画「ポカフォンタス」を想起するかも知れない。エピソードとして挿入するとよい。
A「アメリカ合衆国の住民」A・B 地図からアメリカは世界各地からの移民を受け入れてきたを読みとらせる。年代をおってヨーロッパ系からラテンアメリカ系、そして最近はアジア系の移民が多いことに気づかせる。そのグラフには表されていないが、白人に次いで人口が多いのは,アフリカから強制移住させられた奴隷の子孫である黒人で,人口は2,933万人強(1988年3月現在)で、合衆国の総人口の12.2%を占めている。黒人の居住地を地域別にみると、南部が56%と過半数を占め、北東部が16.5%、中西部が19%、西部が8.5%となっている。また、各地域の総人口に占める黒人の比率は、南部20%、北東部10%、中西部9・4%、西部5%となり、やはり南部の比率が高い。
南部では1960年代のはじめごろには,人種差別の法があったが,永年の公民権運動によって法律上の差別はなくなった。政治やスポーツ,音楽などの分野で活躍する人も多く、黒人の地位は向上したが,白人による差別がなくなったわけではない。
1995年アメリカのプロスポーツ界で高額所得を獲得しているのは、第1位はプロバスケットボールのスーパースター、マイケル・ジョーダン(32)で年俸約44億円、第2位はボクシング元ヘビー級チャンピョン、マイク・タイソン(29)は約40億円で、いずれも黒人選手である。
地図AABに注目させ、アフリカ系住民、スペイン語系住民の割合をおおよそ合計させ、発表させる。全米第2の都市ロサンゼルスでは、90年の白人人口比は37.7%にすぎず、いまや「少数」である。他にヒスパニックが39.9%、黒人が14%、アジア系が9.8%となっている。ロサンゼルスは、95年、野茂英雄選手の活躍で耳に新しい。ロサンゼルス・ドジャーズには、アメリカの海外領土であるプエルトリコの選手が多い。他にもメキシコ、パナマ、ドミニカ共和国、韓国など「多国籍軍」と言われるほど豊富で多様な国籍の選手を擁している。このような都市だからこそ野茂選手を抵抗なく受け入れたのだろう。
B多くの民族が住むニューヨーク アメリカ最大の都市ニューヨーク、第2の都市ロサンゼルスはともに多くの民族が共生する町であることに気づかせる。かつては「人種のるつぼ」ともいわれ、少数民族の同化・融合を自明としていたが、少数民族もそれぞれのアイデンティティーを保持しつつ、他者を容認して共存していこうとする立場が主張されている。少数民族の共存状態は、「サラダボール」「モザイク」ともよばれている。
(参考文献:大塚秀之『現代アメリカ合衆国論』兵庫部落問題研究所,豊田薫『世界地理の授業』日本書籍,『知恵蔵』朝日新聞社,『朝日百科
世界の地理』朝日新聞社)