農作業の様子 私たちはドアイ村の農家におじゃまし、農作業を体験させていただいた。 ベトナムの農民は皆菅笠(すげがさ)をかぶり、裸足で田んぼに入る。 靴を履いている人はほとんどおらず、普段はサンダルかつっかけで、田んぼに入るときは畦(あぜ)に脱ぎ捨てる。 私たちが長靴で田んぼに入ると、そんなものは脱げと身振りで示された。 確かに長靴で入ると足をとられ、動きづらかった。 田植えは、機械も導入され始めているが、ベトナムではまだまだ手で植えるのが一般的である。 私たちは悪戦苦闘したが、ベトナムの人たちは手馴れたものであった。 田んぼの横に用水路があり、そこから人の手で水を汲み入れている。 用水路は深くて広く、牛がすっぽりと入って水浴びをしていることもあった。 水を汲む際には、特殊な形をしたブリキのバケツの先に左右2本ずつの紐をつけた道具を使用する。 これを2人で持ち、田んぼと用水路との間にある畦に立つ。 そして紐を操ってバケツに水をすくい取り、田んぼに引き入れる。 うまく操るにはコツがいり、また、2人のリズムが合わなければならないので難しい。 ある農家を訪れ、豚の餌作りを手伝わせていただいた。 そこでは20匹程の子豚が飼われていた。 豚の餌は豚小屋の横にある石造りの小さな部屋で作られる。 鍋に水を入れて、わらを燃やして火を起こし、湯を沸かす。 その中に米粒や米・トウモロコシの糠(ぬか)を入れ、グツグツと煮る。 そして芋の葉・茎を包丁で細かく刻んだものを加え、市場で購入した栄養のある粉、さらに水を加えて冷まし、でき上がりである。 それはまるで七草粥のようで、子豚たちはむさぼるように食べていた。 餌の量が多いので芋の葉・茎を刻む作業をしたときは、包丁を持つ手が痛くなった。 餌を作る部屋は風が通らないせいもあって猛烈に暑く、煙が部屋に充満し、目にしみた。 6人がかりで約1時間もかかった。 普段はこの作業をおばさん1人で、しかも1日3回やるというのだから大変だ。 その他には鶏やウズラを飼っている農家も見学させてもらった。 1つの小屋の中に1000羽以上もの鶏がひしめき合っており、まるで小さな養鶏場があるようであった。 また、ウズラも1700羽が飼われていた。 ウズラの卵は食用にも使われるが、仲介人を通して市場で売られる。 ↑かまどで火を燃やすメンバー ↑芋の茎を刻む農民 ベトナムには稲を中心に、あひるや水牛・豚の糞を効率よく利用した農業の仕組みがある。 例えば田んぼに豚の糞を、畑にあひるの糞を肥料として、またその田で飼っている魚や海老には水牛の糞を使う。 一方、田や畑で取れた稲のクズや芋の葉を豚・水牛・鶏の餌にする。 これらはファーミングシステム(別名VACシステム)と呼ばれており、日本や他の国でも行なわれている環境にやさしい方法なのである。 実際に見てみると、「システム」というよりは昔から行なわれてきた 「リサイクル農法」という感じを受けた。 ベトナムの農民たちは長い時間の中で自然とこの方法を編み出していったのであろう。 |