隣がずっと、暖かかった気がした。

 目を覚ましたとき、室内は明るく、首元までしっかりとかけられた布団は暖かく、結わい髪を解かれた頭はしっかりと枕に固定され、見知らぬ部屋で、なぜかイルカは一人だった。

 久しぶりにとれた、深い睡眠後の目覚めは、爽快の一言だった。
 思わず、がばりと起き上がり、辺りを見回す。
 まとまりよく片付けられた室内には、忍び関連の書物や道具があり、さらに枕元には写真があって、イルカはしばし唖然とした。幼いころのカカシが写っている。

 そういえば記憶が無くなった瞬間、隣にはカカシがいた。
 突然、イルカの顔色が悪いといいだし、けっきょく帰ることになってしまった原因だ。あのときは何を言い出すのかと少し恨めしかったが、腹がくちた瞬間に気を失うようにして寝入ってしまったらしい自分を思えば、カカシの判断は正しかったと言わざるをえないだろう。
 他人が分かるほどに、イルカは体力も気力も、限界を迎えていたらしい。

「〜〜〜…っ」

 布団に顔をうずめ、悶絶する。
 恥ずかしくてどうしようもない。
 よりによって上忍だ、しかもカカシだ。

 悪い人でないと知っているが、苦手意識がある。なのにこんな失態を見せたうえに、目が覚めれば室内にひとつしかない一人用のベッドに、自分一人がど真ん中で寝こけていたのだ。いったいカカシはどこで寝たのか、考えたくない。自分のやらかしたことに頭を抱えた。

 とどめは、布団からようよう這い出したイルカが、小さな台所にある食卓の上でみつけたもの。
 三角の握り飯がみっつ、メモと一緒に覆いをかけられて置いてあった。

『あなたの分の朝飯です。鍵はかけて、いつでもいいので返して下さい』

 ありえねぇ、とは心のなかだけで呟いておくことにした。悪い人ではないどころか、完璧なる良い人だ。上忍で腕も立って金もあって性格も良い人だなんて、ありえない。ありえない、と思いたい。だが目の前におにぎりがあるのも、確かだった。
 昨日の記憶では、同僚が昼まで出てくるなと言っていた覚えがあるが、構わない。イルカは寝ていた布団を整えると、覆いごとお握りを失敬し、扉に鍵をかけてカカシ宅を後にしたのだった。




 家に帰ってひとまずの用意を終え、受付に着いたのは昼過ぎだった。
 昨日の同僚はすでに交代していたが、いつもの見知った受付員が入っていた。

「おう、イルカじゃないか。どうしたんだよ。大丈夫か? 今日、休みだろ?」

 そんなことをいうから軽く驚く。
 訊けば、昨日、体調不良と見られるために翌日の勤務を休むとの申し送りがされていたらしい。同僚の気遣いで、昼までどころか丸一日は休んでいられたようだったが、イルカの気分が落ち着かなかったのだからしょうがない。

 なんとかな、と返事をしつつ、カカシの予定を探ってみた。
 やはりと言おうか、予想通り里を離れての任務中だ。予定期間時刻は今日の夜中で、さらにいえば任務開始時間は今日の明け方だった。カカシのほうこそ、超過任務ではないのだろうか、とふと思う。

 胸ポケットの一番安全な場所に、鍵を入れているが、まったく落ち着かない。それに、どうやら支払った形跡のない昨夜の晩飯代や、一泊の礼をどうするべきかと頭のなかはぐるぐると回っていた。
 そのまま、慌ただしい受付の事務処理を引き受け、いずれ再開するだろうアカデミーへ手伝いに行き、あれこれとするうちにいつのまにか夜がやってきていた。
 身体の疲れは感じるが、それで倒れるとは思わない。

 昨日もそうだった。
 確かに自分は定められた勤務時間外の労働をしていたが、それは同僚の仕事が普通にやっていればどうやっても終わらない量で、そのうちのイルカが手伝える部分を、イルカが自主的に申し出てやっていただけだ。

 最近の忙しさは尋常ではなく、助け合わなくては皆やっていけない。
 だからこそ、多少の無理はしなければいけないと思っていたし、皆もそうしていた。けしてイルカ一人が辛かったわけでもない。
 たしかに独り身だからという理由もあって、自宅に帰っていなかった期間が、皆よりずばぬけて長かったことは自覚していたが、それで自分の身体がどうにかなるとは思っていなかった。

 イルカだとて忍びなのだから、多少の無理はきく。
 カカシは目に映るものにたいして、少し過敏なのだろうか。顔見知り程度の中忍の体調など、普通は個人の裁量だと放っておくだろうに。

 それにカカシもずいぶんと疲れた様子だった。人のことなど構っている場合ではないだろう。ベッドを他人に明け渡す余裕があったのだろうか。
 そんなことをつらつらと思いながら仕事をし、適当に菓子パンをつまみながら腹をなだめ、頭痛を感じて時計を見上げれば、いつのまにか日付が変わろうとしていた。
 慌ててやりかけの書類をまとめ、受付へと向かう。昼と同じ同僚が、まだいたのかっ? と驚いていたが、かまわずに訊いた。

「あのさ、カカシさん、帰ってきてたか?」

 は? と同僚は首を傾げたが、すぐに頷きを返してくれた。

「ついさっき報告書を受け取ったぜ。お前も凄いけどあの人も凄いよな。えぇと、どんだけだ。五日連続で外に出る任務続けてんだぜ、さすがに明日は休み―――」

 最後までは聞かなかった。ありがとうとだけ言い置いて、受付を駆け足で出る。
 大通りで追いつけなければ、迷惑だろうが自宅まで行こう。とにもかくにも、鍵を返して、丁重に礼を述べねばならなかった。

 急激に走り出したものだから、肋骨が痛い。おそらく事務仕事からの筋肉の凝りが、身体を軋ませているようだったが、白い息を切らして駆けたおかげか、大通りの端でカカシをみつけることができた。
 夜中のために人通りが数えるほどだったことと、カカシの頭髪が淡い色だったこと。さらには、人影もまばらな通りだというのに、女性数名がカカシを取り巻いていたからだった。

 判別できた時点で足をとめ、内心、腰が引けた。
 どうみても、横から男が入り込んでいい雰囲気ではない。
 ふと、今日がとある恋人たちのイベント日だったことに思い至った。
 カカシを取り囲んでいる女性たちが、それぞれに華やかな飾り付けをした小箱をもっているのが見える。

「あー…そうか、そうだよなあ…」

 一人ごちて、自分を省みて苦笑してしまった。そういえば、と思い出すのが一日の終わりのこんな真夜中、というのが可笑しかった。まったく、カカシに比べての自分の彩りのなさも笑うしかない。
 ただ、カカシが羨ましいか、と問われれば、首を傾げるだろう。
 遠目にみえる様子では、どうも和気藹々とした話し合いが行われているようでは、ない。

 カカシの両手はズボンのポケットに入れられたままで、時折、首を横に振っている。
 話しまでは聞こえないが、だいたい分かってしまう。

「…もったいねぇ」

 とは小声の呟きだ。
 通りにはいくつかの開いている店舗からの明かりしかなく、はっきりとは女性たちの姿は見えないものの、充分に可愛らしくみえ、イルカなどは鼻の下を伸ばしてしまいそうな様子の女性ばかりにみえる。カカシに詰め寄っている様子も、なにやら健気にみえるほどだ。

 どうなるのだろう、と寒い中しばらく見守っていれば、やがて一人が顔を覆って立ち去り、一人はカカシを突き飛ばすように押してから肩を怒らせ消え、最後の一人は大胆にカカシへと抱きつこうとした挙句、それをカカシに避けられ地面に四つんばいになるはめになった。数秒の静止の時間があり、そして立ち上がったかと思うと、イルカにさえわざとらしいように聞こえる泣き声をあげながら走り去った。

 正直、足が動かない。
 このままカカシに声などかけようものなら、いかにも盗み見していました、というようなタイミングだ。さすがに失礼だろう。

 いまはいったん離れて、また後で自宅にでも届けにいこうか。
 そう思って踵を返した背中へ、イルカ先生じゃない、という聞き覚えのある軽い声がかかった。

「え?」

 驚いて、思わず辺りを見渡してから気づいた。上忍師の引継ぎのときに話したこともあるくの一の夕日紅が、カカシの隣に立って、イルカをみていた。
 ちょうど、イルカからはカカシの身体の影になって、暗さも手伝い、紅の姿が見えていなかったのだろう。全く気づかなかった。比べて、中忍と上忍の力差なのか、紅からはイルカがすぐに見つけられたようだった。

「いったいどうしたの、アカデミーの先生がこんなところで」
「ど、どうも…任務お疲れ様です」

 間抜けな自分を罵倒しつつ、イルカは仕方なくカカシと紅へ歩み寄る。
 ばつが悪いはずのカカシが黙ってイルカを見ているから、より己が間抜けに思えてくるから不思議だ。
 こうなればさっさと礼を言い、昨夜の代金を支払って鍵を返して立ち去るべきだろう。

「あ、あの、カカシさん、昨日は大変失礼を…」

 近寄るまでの間がもたず、歩を進めながらも、申し訳ありませんといいかけたイルカを、カカシの、何してるの、という言葉が制した。
 それは酷く冷たく聞こえる声音で、イルカの足が思わず止まる。

「ちょっと、カカシ?」
「こんな真夜中に、さっきまでどこにいたの、あんた」

 咄嗟に浮かんだのは、先ほどのやりとりを見られていたカカシが怒っているのだろう、という予想だった。カカシからの見えない冷気が恐ろしく、血の気が一気に引いて、すいません、と勢い良く頭を下げた。

「あの、カカシさんを探していて、その、見るつもりはなかったんですっ。声も聞こえてませんし、ええと、絶対に誰にも言いませんからっ」
「…は? なに言ってるんですか、あんた。そんなことどうでもいいし、俺が言ってるのはそういうことじゃないんだけど」
「え? うわ…っ」

 頭を上げたイルカの眼前に、カカシが近寄ってきていた。驚いて一歩下がろうとしたイルカの顎を、カカシの指が捉える。指は冷たかった。

「昨日より酷いクマ、作ってるじゃないですか。顔色もよくなってないし。今日一日、休みだったはずでしょう。そんな格好で、どこに行ってたんですか」
「え、えぇと、その…」

 なぜ休みだということを知っているのかという疑問より、あまりの剣幕と言葉に口ごもれば、はぁ、と疲れ果てたようなため息をつかれた。

「いいよ、もう。分かるから。あんたのそれは病気だね」
「は、はぁ…」

 どうも心配をされていたようだとは分かったが、どうにも気配が険しい。なぜそんなに目くじらを立てられているのか腑に落ちなかったが、とにかく礼を述べて預かり物を返すことが先立った。

「あの、昨日は本当に申し訳ありませんでした。ありがとうございましたっ。これ、預かっていたものです。朝飯もすいませんでした、美味かったです」

 一気に言って頭を下げた。
 カカシが、そう良かったね、となぜか一転して気のない様子を見せる。
 懐から差し出した、小さな鍵をイルカの手から受け取って、そのまま仕舞わずに指先でくるくると弄んでいた。

「それで、昨日の晩飯の代金なんですが、おいくらでしたでしょうか。俺、あのとき、いつのまにか寝ちまって…カカシさんの布団とってしまって、本当に…っ」
「ああ、いいよ別に、布団もメシ代も」

 カカシは鍵を熱心に指先でこねくりまわしながら、あっさりとそう言った。

「いえ、そういうわけにはっ」
「いいって。メシ代も大した額じゃなかったしね」
「でも」
「あんたは疲れてたし、そんな人を連れ回した俺が悪い。それにメシだって俺があんたにお願いして付き合ってもらったんだから、俺に奢られてれば?」
「そんな……」

 カカシは酷くそっけなく、イルカは困ってしまった。額の大小やことの仔細に関わらず、そういうわけにはいかない、というのが正直な心境だったが、カカシのほうは帰ってきた鍵のほうが気になるのか、視線は小さなそれを見たままだ。

 カカシも連日の任務で疲れているだろう。こんな私事で時間をとらせるのも申し訳なかった。些細な金額であればこそ払いたいと言いたいが、カカシからすればクソ真面目で面倒なことだと、態度で言われているようで、気も焦る。

 上忍相手にこんな貸し借りをしたことなどなく、相応の対処方法が分からずに空転しかかるイルカの視界に、まだ鍵を弄っているカカシの手元がうつった。さっさと懐に仕舞えばいいものを、何かを気にするようにいつまでも触っているから、とっさに口が動いた。

「鍵に細工とか複製とか、なんにもしてませんから、俺!」

 白い息を大きく吐き出しながら言った瞬間、一拍おいて、カカシが噴出した。そして静かにイルカとカカシの会話をみていたようだった紅も、軽やかな笑い声を立てていた。
 イルカの顔が染まる。
 くつくつと喉を鳴らしながら、カカシが言った。

「いや…別にそんなこと、疑っちゃいないよ。イルカ先生だしね」
「は、はぁ…」

 それはイルカだから、なのか「先生だから」なのかはカカシの口調からは判別つき難かったが、いずれにしろ疑われているわけではなかったらしい。
 それよりもさ、とカカシの指が、通りの向こうを指した。
 指先をおって視線を向けると、深夜の大通りにいくつか残っている明かりのうちのひとつ、終日営業のコンビニがあった。

「昨日の代金が気になるならさ、あれでどう?」
「? あれ、とは…」
「ほら、あの店の前にお菓子の安売りしてるでしょ? あれ、ちょうだい」

 確かに、夜の冷え込むこの時期だというのに、その店先には小ぶりの台が置かれ、賑やかではあるが安っぽい飾りつけのされた小箱がいくつも転がっていた。台の前には、「五割引」と手書き文字の張り紙がされている。あきらかに、売れ残りの扱いだ。

「あれ、ですか…」
「そ、あれ」

 なんか甘いものが食べたくなってきちゃって、などとカカシが言う。
 それならば、先ほどの女性たちからプレゼントを受け取ればよかったんじゃなかろうか、と思ってしまう。カカシほどの男であれば、差し出すほうも、受け取ったからといって確実ななにかを期待しているわけではないだろう。こんなむさ苦しい男に菓子を、しかも売れ残りの値引き商品をねだらなくても。
 とはいえ、カカシからすれば、笑い話ですむだろう男からの贈り物のほうが、気持ちも楽なのかもしれなかった。

「…わかりました、少々お待ちください」

 言い置いて少し離れていた店先に駆け寄る。遠目でみえていたとおり、売れ残りの菓子たちが転がっていた。値段も、定価であれば牛丼一杯ほどのものが、半額に値下げされているのでとても安い。
 これでは昨日の夕食代にはとても足りない。
 いくつか種類があるようだが、どれも同じような値段らしく、値札が付いていないものもあった。

「ど、どうしよう……」

 この真夜中の寒空に、カカシとなぜか紅も待たせているのだ。冷えは身体に良くない。焦った頭で手に取ったのは、違う種類の小箱が三つ。チョコレート菓子なのは一目瞭然だったから、細かい中身は気にせずに外見が違うものだけを選び、レジへと急いだ。
 袋をもって店をでれば、まだ二人の姿はあり、焦って駆け足で戻る。

「―――…が面倒みて育てんの、楽しみにしてんだよ、知ってた?」
「気の長い話しね」

 お待たせしました、と駆け寄れば、二人の会話が止む。
 紅がイルカの顔をまじまじと見てきた。
 つい先ほど、コンビニのレジで感じたような居た堪れない心地を味わったが、すぐに紅は視線を外して、じゃあね、と手をひらつかせた。

 驚くイルカに構わず、そのまま背中をむけて去ってしまった。
 ろくな挨拶もない別れに慌てたが、カカシは平然としていて、この二人のあいだではあれで普通なのかもしれないと思い直した。

「…お二人のお話の邪魔をしてしまい、すいませんでした」
「は? …ああ、紅のこと? 単に受付で顔合わせただけだけど、用は済んだから」

 カカシはこともなげに言ったが、複数の女性との場面に居合わせていることや別れの簡潔さなどが、二人の近しさをあらわしている気がした。本当に自分は野暮だな、と内心で苦笑してしまった。

「それで、これで本当によろしいんでしょうか? …一宿一飯の礼がこんなものでは」
「いいんじゃない? 俺がいいって言ってるんだし」

 躊躇いがちに見せたビニール袋を、あっさりとカカシが受け取る。
 ふと、カカシの視線が、いま気づいたというようにイルカを見た。

「晩飯は?」
「え? あ、いえ、はい、食いました」
「なにを」
「え、えぇと、」

 口ごもってから、小さくクリームパンですと答えれば、痛烈に舌打ちをされた。
 日常生活で、上司にもあたる人間に目の前で舌打ちされるほど自分は失敗したのだろうかと、俯いて自問していると、今度は「次の勤務はいつ」と言われた。
 端的すぎて何を訊かれたのか分かるまでに一拍の間があり、それから焦って答えた。

「明日の昼からです」
「そう、じゃあ帰るよ」
「…へ?」

 背を向けたカカシにぽかんとしていると、数歩先をいったカカシが、何してるの、と叱責に似た声音でイルカに言う。どうも、着いてこいといった様子だとは分かるが、どこへなにをしに、が分からない。
 だから戸惑ったままでいると、苛立った気配で、カカシが言った。

「あんた、このまま明日の昼まで、また仕事しに戻るつもりでしょ」

 驚く。千里眼だろうか、カカシは。

「なんでそんなに、無理して仕事してるかはあえて訊きません。起きてるあいだの時間を、すべて仕事に使うのも、あんたの自由でしょう。でも、今日の仕事はこれで終わりにしときなよ。あの親切な同僚さんたちのためにもね」
「……」
「送ってくから、イルカ先生、あなたは帰りなさい」

 最後には、諭すようにいわれた。
 カカシには分かっていたのだろう。
 イルカが身勝手に仕事をしていたことを。

 忙しいのは確かだったが、自分の仕事でもないことを無理やり引き受け、甘えた性根でぐずぐずと家に帰らなかったことを、カカシは承知していたのだと思った。だから、怒るし帰りなさいと言うのだ。
 結局、途中まで連行されるように後ろを歩き、途中で礼を言ってカカシとは別れた。別れ際、

「…ちゃんと家にメシ、あるんだろうね。あと、風呂入りなさいよ。臭うよ」
「申し訳ありません。いろいろお気遣いいただきまして、ありがとうございます」
「それはいいから。…また顔色悪かったら、帰らせるからね。ちゃんと寝なさい」
「……はい」

 幼子にむけるような小言をいうカカシの、普段みる様子との落差が可笑しく、頭を下げつつ唇が苦笑に緩んだ。
 自分の家に帰り、風呂に入って体中を泡立てて洗い、即席の味噌汁だけを腹にいれてから冷たい布団に潜った。目を閉じて、安息を願う。
 けれど、やっぱり夢も眠りも、今のイルカには遠かった。




2010.04.18