金平糖の降る夜に。
上忍待機所の扉を開けると、幾人かの姿があり、見知った面々が窓際の長椅子に集まっていた。
ちょっとした考え事と先ほどのことを思い出しながら、無意識のうちにそちらに足を向けていた。
よお、と声をかけられたから、手をあげて流して、そのまま長椅子に座る。
腕にはまだ、あの柔らかい感触が残っている。
うーん、と首を捻っていると、斜め向かいから、どうしたの、と訊かれる。
まあちょっと、と言葉を濁したが、今度は反対斜め向かいからヤジが飛んだ。
「どーせまたイルカでしょ」
ちら、とカカシは視線を流した。
ヤジを飛ばしたアンコは痛くもない顔で、隣の紅にニヤリと笑っている。
「そういえば最近、イルカに会えてないわね。受付にいないし。なあに、何かしてるの?」
「アカデミーでクリスマス会やるんだって。その準備で忙しくて、彼氏のメンテナンスもするヒマないってんで、そこの彼氏は最近、拗ねてるわけだ」
「はぁん、なるほどな」
「あら、可哀想」
心にも無い慰めと視線を、カカシは綺麗に無視して、ニヤニヤと笑うアンコへ訊く。
「まつきカガリって、胸、デカかったんだよね」
いきなりの質問に、さすがのアンコも酢をのんだような顔になったが、すぐに、もとのニヤニヤ顔に戻った。
「デカいっつーか、まあ全体的に細っこい女でさ、それにしてはデカいって話しよ。なんだ、女に興味あり?」
「―――お前にんな顔される話しじゃないことは確かだよ。…さっき、そのまつきカガリさんに会ったかもしれないから確かめただけ」
「はあん? んでなんでチチのことを訊くかな」
「もしかしたらそうかなって思っただけだよ」
なんだよと口々に五月蝿くなった周りに黙り込んで、カカシは抱きとめた柔らかさを思い出す。
身体は細かった。
傾いで投げ出された身体を抱きとめても、軽くて頼りなくて、驚いた。
ぼんやりと受け止めた腕と手のひらをみていると、いらないツッコミが入る。
「さっそく手を出したわけか。感触でも思い出してんのかよ」
苦笑して、イルカの顔が浮かびつつ、それなりに正直に答えた。
そういえば受け止めたときにみたあの顔、それはそれは真っ赤で林檎のようだった。
彼にとって困ったことにならなければいいと思う。
「まあ、参考にする程度には、かな?」
はあ? と素っ頓狂な声をあげたアスマは、良く分からないと言葉の謎解きを迫ったが、カカシはのらりくらりと黙ったままにした。
2007.12.18