金平糖の降る夜に。




 今朝はびっくりした。
 起きて、そのまま扉の横に作りつけて有る新聞受けの覗いてたら、なんでか見える通りの電柱の影に、でっかいゴミ袋みたいなのがあったんだ。
 コタツ布団の上下まとめたか、っていうぐらいの大きさで、色が茶色でさ。
 ここらの地区のは緑色だし、なんだマナー悪い粗大ゴミかと思ったんだけど、よくみたら、っていうかそんなに見なくても目が付いててさ。
 こっちみてるし、しかも見覚えあって。

 つい、降りていって、お前カカシさんとこの…って声かけちまったんだ。
 そしたら寒いだろ、冬の朝って。
 鼻水たらしながら白い息はいてさ、ばふって返事したんだ。
 しかも腹鳴らしててさ。

 知らない犬じゃないし、なんでこんなとこいるのかってナゾだったけど、放っておいちゃカカシさんに申し訳ないし(だって、あの人、犬の上着を揃いでつくるぐらいだ。忍獣として可愛がる、を一歩踏み込んで情を注いでると思うんだ)とりあえず部屋にいれてやった。
 でかいなあ、この犬。

 ちょっと新聞をとりにいくだけだと思ってたから、コンロに火をつけっぱなしにしてて、味噌汁が沸き立ってた。この味噌汁は四日前にカカシがつくってくれたものでなくて(とうに無くなった)自分で作ったものだ。
 慌てて火をけして、そうだコイツにもメシやりたいけど犬缶なんてないしなあ、って困ってたら、味噌汁鍋にむかって鼻を鳴らすもんだから、いいのかなあ、なんて思いながら白飯に汁ぶっかけてやったら、尻尾ふりながら食べるんだよ。

 ああいうの、かわいいよなあ。
 忍犬って一番頼りになるし凄腕で、とくにカカシさんの忍犬はよく訓練されてるから、ビシッとしてるけど、こうやって喜びいさん、って感じでぶっかけメシ食ってるのみたら、普通の犬っぽい。

 それにしても、忍犬って主人以外からだと絶対にメシ食わない、ってきいたことあるんだけど…いいのかな。
 なんか、ガツガツ食ってるけど。
 …まあいいか。
 向こうも知らないヤツじゃない、って思ってくれたんだろ。
 この部屋、カカシさんがよく居るから匂いもするんだし。

 うん。
 そう思っておこう。
 けしてカカシさんの躾が悪いとか、不安を覚えるとかじゃなくて。

 でもカカシさんはいま里に居ないはずなのに、なんでコイツだけ居るんだろ?
 不思議だなあ。
 って。
 うわ!
 ―――びっくりした。
 いきなり、消えた。
 米粒が飛び散ったよ。
 きっと口寄せされたんだ。
 あの消え方は。

 あーあ、かわいそうに、ありゃ汁と飯粒が顔に飛び散ったに違いないよ。
 カカシさんがそれみて怒んなきゃいいけど。
 さーて、アカデミー行く準備するかあ。
 今日も夜練習だ。
 …ちょっと疲れたなあ。




2007.12.04