金平糖の降る夜に。




 白状します。
 帰ってません。
 すいません。
 ご主人に叱られます。

 でも口寄せされ直されてないんだからアンタの必要性はいまんところ無いんだよっていわれたら確かにそのとおりだとおもったのでがんばりました。
 ご主人が出した命令を手伝えといわれてがんばりました。

 今日も朝から電柱の影から見守っています。
 もうすぐ起床なのでそれを見届けようとおもっています。
 あ、出てきました。
 新聞をとっています。
 髪がぼさぼさです。
 ご主人がいないから油断しているのかもしれません。

 これはぜひご主人に伝えなくてはいけません。
 きっと喜んでくれるはずです。

 それにしてもおなかがへりました。
 知らない人とご主人じゃない人からはごはんをもらってはいけないので、昨日から自分でかった犬缶しか食べていません。
 お味噌汁をぶっかけたご飯とか食べたいです。

 ほかほかのごはんを想像すると鼻がくうんとなりました。
 そしたら気づかれました。
 いけません。
 身体が大きいから電柱に隠れきれていなかったようです。
 まんまとお家に招かれました。
 ごはんもいただきました。
 うまいです。
 はぐはぐ食べていると身体がむずむずしました。


 ヤバイです。


 あっというまに呼び戻されました。
 目の前に鬼のようなご主人がいました。
 眉間に何本も皺がよっています。
 ご主人はわしのたぷたぷ口元を摘んで

「…さて、どういう流れでイルカさんにメシもらったのか、聞かせてもらおうか」

 といいました。
 なんでバレたんだろう。
 ご主人はまったく侮れません。




2007.12.05