金平糖の降る夜に。
夕方になって、カカシに任務が下った。
帰ってくるのが週末になりそな内容に、カカシはしばし考え、門をでるまえに団子屋に寄った。
団子屋といっても、団子ばかりでなくほかにも饅頭やおはぎやおかきも売っている、和菓子屋に近い小さな店だ。
古びた引き戸の向こうは土間のつくりになっていて、そのすぐ奥にガラスのケースが並んでいる。引き戸にかけられた渋緑色の古びた暖簾は『たま弥』と染め抜かれていて、いかにも爺さんの代からやっています、というような店がまえだった。
甘味好きには、相当有名な店だと聞いている。
(だから昨日の賄賂も、わざわざこの店で買っていったから、最初、アンコは包みだけでこの店の団子だと分かったようで、かなり喜んでいた)
その暖簾をくぐって、商い中は開け放しの引き戸の敷居をまたぐ。
いらっしゃいませ、と声がかけられたから、団子二包みと、少しばかり無茶な頼みごとをした。
明日のいつでもいいから、みたらしアンコという忍びに届けてほしい、という頼みだ。
小さな店舗だったから無理だろうな、と思いつつ言うと、変な顔をされた。
アンコめ、やはり里中の甘味屋のブラックリストにのっているのかと考えたが、店員の、お名前をいただいてよろしいでしょうか、という声に、はたけカカシです、と名乗ると、さらに変な顔をされた。
「―――あの、なにか」
「いえ、その…実は今日、みたらしアンコという方がいらして当店の団子をお買い求めくださったのですが、そのとき、その、お代金をつけていかれまして…」
アイツめ。
里の上忍がツケで団子を買うなんて、恥もいいとこだ。
他人事ながら、頭を抱えたくなったカカシは、次の店員の台詞に、泣きたくなった。
「その際、アンコさまが仰るには、…はたけカカシにつけといて、と…仰って、その、当店は掛売りはしておりませんので困っておりました次第で…」
…アイツめ。
人の恥まで売っていったらしい。
「―――すいませんでした。俺が払います」
「申し訳ありません」
「いえ、同僚が迷惑をかけてすいません。それで、おいくらですか」
「あ、団子二十包みでございます。誠にありがとうございました」
「に、じゅ…―――」
あまりのショックに、カカシは明日の予約を取り消すのを忘れ、店を出たのだった。
2007.12.02