金平糖の降る夜に。
「―――で、どう思う?」
「いや、大人気ないでしょ、それ」
ハッと鼻で笑いつつ放たれた、みたらしアンコの容赦ない一言に、カカシはグサッと傷つき、ベンチに倒れこんだ。
傷つけた本人は、カカシの持参した相談のみたらし団子をくわえて、知らぬ顔をきめこんでいる。
カカシは気合をいれて、ベンチに座りなおし、いやいや、と聞きなおした。
「でも実際、そういうこと出来るんだから、したって悪かないでしょ?」
「そりゃあそうだ」
どっちよ、とカカシはアンコの返答につっこんだ。
さっきはダメ出ししておいて、今度は肯定なんて酷いじゃないか。
「だからさー、ぶっちゃけ、アタシとしては、あんたがそれを実行することを止めやしないよ? ていうか、そういう状況になってるっていうあんたのヌルさがいかんともしがたいとおもうけどね、まあそれはおいといて」
「……」
「問題は、おおっぴらにソレをするってのは、里の規則で禁止されてるってことだ」
だからそれを問題視しなさそうな人間を選んで相談したらお前になったんだ、とは賢明にもカカシは口に出さなかった。胡乱な目つきがそれを表していたかもしれないが。
それに、相談相手を選んでいる時点で自分がセコイことは分かっている。
「そりゃ…知ってるけどさ」
「知ってて、んで、アタシの知ってる限りじゃあんたはそれを守ろうと心がけてる方だよね。それがなんで今更? そんなに不安? 忍犬使ってストーカーさせるぐらい」
「………ストーカーじゃないよ。ちょっと数日気配を消して尾行してもらうだけだ」
「じゃあ言い換えよう。この変・質・者」
再びの言葉のいかづちに、グッサリとカカシは傷ついた。
自由にしていいと言い放ったあとでイルカに痕をつけてはダメ人間といわれ、忍犬を使おうかと思うんだがどうだろうかといえば、大人気ないと鼻で笑われた。ついでに変質者とまでいわれた。
…確かにそういう一面はあるかもしれないが。
「…やっぱ、ダメか」
「ダメに決まってんでしょー。だいたい、相談する前に答え分かってるくせに、なあに言ってんだか」
「……」
「アタシは背中押してやるほど優しくないかんね。そういうのはアスマにでもやってもらいな」
アスマなら、確かに、心底軽蔑したような目を向けつつも、まあ好きにすりゃあいいさといいそうだ。冷たい視線に抑止力がありそうだが。
想像して少し笑って、カカシは立ち上がった。
「お? 忍犬呼び出すの?」
「…もうちょっと我慢するよ。相談のってくれてさんきゅ」
「今度、この二倍の団子もっておいで」
ちらりと視線だけ振り返ると、悪魔のようなニタリ顔でアンコが笑っていた。
「そしたら、このこと、イルカに話さないでやるよ」
「―――…わかってたけど、ほんとお前は鬼のようなやつだ」
「あら、ありがとう」
褒めてない、という突っ込みの言葉は、我ながら、弱々しかった。
2007.12.02