雪窓
「好きです、良かったら付き合ってください」
って言われたオレ。
うみのイルカもうすぐ三十才。
告ってきたのは、はたけカカシ同じくもうすぐ三十才。
上忍だ!
あ、ありえねー、と思いつつオレは丁重に、
「えーと、その、なんかの冗談ですよね?」
と言ってみた。全く丁重でもなんでもなかった。つい口がいつもどおりに滑った。
そしたら上忍さまったら、クワッと右眉を吊り上げて、っていうか額宛ずらしてるから右しか眉毛見えてないだけなんだけど、とにかく吊り上げて、オレに怒った。
「冗談で言うわけないでしょうが。とにかく、どうなんですか、俺のこと好き? 嫌い?」
「ええ? そんな急に言われてもですねー…、嫌いではないようなー…」
嫌いだったら、週に三回も誘われたからって上忍と飲みに行かねーよなあー。俺も気を使って割り勘とかしてたから財布にも響いてたし。でも楽しかったし。
かといって付き合うのもなー、って、あ。
「もしかして付き合うって、呑み屋ですか」
付き合うが彼氏彼女とかいう付き合うかと思ったけど、誤解してたかも、って聞きなおしたら、ガックーって頭下げられた。ふさふさの銀髪がばっさーって流れた。柔らかそうな髪質だなー。
「…あんたのその素ボケも馴れましたけど、ここでそれはキツいデス…。違いますよ、ちゃんと恋人同士で付き合って、です。イチャイチャして記念日にゃ一緒に過ごして、素っ裸で抱き合ったりする、付き合いのほうデス」
めちゃめちゃはっきり言われた。
オレはまたしても考え込む。イチャイチャなあ…、確かにオレ、現在進行形で彼女居ない歴更新中だけどさー、普通に好きぐらいで、こんなもったいない人と付き合ってもいいんだろうか? もったいなくね? いや、この人が。
と思ったので、断ろうとしたら、
「はい、けってー。時間切れ。今からあんたは俺の恋人」
「え? まだ返事してませんよ」
「駄目っていうのが遅かったから、返事はハイだと認識しました。じゃあ、イルカ先生は俺の恋人ね。じゃあ今夜、お祝いにメシ、食べに行きましょうね」
なんて言って、あっという間に上忍さま、もといカカシ先生は消えた。おーい。いいのかなあ。
夕暮れ時の、校舎裏の一本杉の下で、俺は呑気に首を捻ったのだった。
晩飯の後には、いいのかなあ、なんていえなくなることもしらないで。はあ。
晩飯のあと、カカシ先生の行動は早かった。
オレをしこたま飲ませたあと、家まで送っていきますよ、って親切にしてくれて、オレも飲んでるあいだにいつもと同じよーな気分になっちまってて、足もふらついてるし、じゃあお願いしますーって言ったのが間違いの始まり。
アパートの前でカギを渡して、玄関入った途端、カカシ先生は野獣と化したのだった。いや、野獣に悪いかも。野生の生き物は人を計画的に罠に嵌めたりしないもんな。
バタン、と扉の閉まった音。
その瞬間に、部屋の明かりがつく前に、ぐるんて回ったオレの世界。カカシ先生に押し倒されて、キスされてた。
「ん…ッ、ぁ」
「イルカせんせ、好き、大好き」
「ちょ…、なん……!」
抗議しようにも口は回らないし、頭のなかはグルグル回ってるし、そのうち、舌はあったかくてよく動くのに絡められて、オレの口はふにゃふにゃになっちまった。
気持ちよかった。
好き、って言われながらキスされるのってこんなに気持ち良いもんなんだって初めて知った。
オレはもう体の力が入らなくて、押し倒されたまま、酸欠みたいにへろへろになってた。
それをカカシ先生は難なく横抱きに抱き上げて、オレはすげえショックを受けた。オレけっこう重いはずなのに。
酔っててもそういうショックって受けるもんなんだな。
そんでオレはいっつも寝てるベッドにお帰りなさい。
ただし、カカシ先生も一緒だ。
カカシ先生は手早くオレの服を脱がしていって、合間にキスをずっとしてくる。
だからオレは気づいたら素っ裸になってて、カカシ先生もたぶん素っ裸だった。
ベッドが軋んで、カカシ先生が覆いかぶさってきたときには、体温を感じたから。
手のひらが、オレの体を触りまくる。
酔っ払ってるから、くすぐったいとかよく分からなくて、でも痛いようなのは分かって、水も欲しくて喘いでたら、堪んないとか言われた。
オレにしたら、その色っぽい声のほうが問題だと思った。
そんなの喘ぐのに忙しくて言えなかったけど。
そのうちオレの大事なアレが弄られて、オレはもっと喘ぐ羽目になった。しかも、いつのまにかその奥の、そんなとこ触んないでくれって言いたくなるようなとこも触られた。
「ゃ…っ、そこ、やめ、て下さい…ッ、汚い…!」
「気持ち良い? すげえトロトロ。後ろ指、三本も入ってるよ。分かる? 俺の指、あんたン中、ぐちゅぐちゅにしてんの。ココ、悦いんデショ?」
そう言ってカカシ先生が触ったとこは、すごい痺れが腹に響くみたいで、オレは泣きそうになった。気持ち良いとか、悪いとか、言う前に、頭が真っ白になる。
「ダ、ダメ、です、そこ…、だめ、です…」
「うそ、一回イっちゃいな。俺の指で、イって。俺、見ててあげる」
「あ、あぁ…ッ、ん、はぁん、あん、あぁぁ、…!」
瞼の裏がチカッと白くなって、オレはカカシ先生の手のひらにたくさん出してしまったようだった。頭がクラクラしてたけど、カカシ先生が、たくさん出たよ、ってオレに言った。
「言わ、ないで…ッ」
「恥ずかしい? もっと恥ずかしいことするんだから、いいじゃない。ココ、入れるよ。俺の。あんたに。入るかなあ、俺のでっかいから、あんたのナカ、いっぱいにしてあげる」
オレの足が、太腿の裏から抱えられて、オレはベッドの上で折りたたまれたようになった。ちょうど、尻の窄みが折りたたまれた先に来て、カカシ先生に丸見えの状態。すごい恥ずかしい状態だ。胸が圧迫されて苦しくて、言葉もロクに出ない。
「や、離し…て、ください、いや、やだ…っ」
「ココ、あったかいよね。ヌルヌルしてて、気持ち良い。ちょっと痛いし気持ち悪いかもだけど、あとでちゃんと気持ち良くしてあげるからね」
そのあとに襲って来た痛みと違和感といったら無かった。
ダメ、入らない、無理、気持ち悪い、出して、イヤ、痛い、おっきい、やめて、硬い、熱い、色んなことをオレはうわごとのように言って、でもカカシ先生は止めてくれなかった。
オレの中を、大きくて太いので犯して、痛くて気持ち悪くて泣き出したオレをキスで宥めながら、でも抜いてくれなかっいてくれなかった。熱いのが、オレの中を、何度も入ったり出たりを繰り返して、破裂しそうなぐらい、中を突いて、掻き回す。
オレはベッドの上で逃げたくて、体が勝手に逃げようとするんだけど、それを引き摺られて戻されて、また突かれた。
「ひゥ、んん…ッ、ン! ん、ん、や、ああ、あ、あ、ぁ」
カカシ先生のは本当に大きくて、オレの中をいっぱいにした。オレの頭の中はもうカカシ先生だけになってて、泣きながら喘いでるオレにキスするカカシ先生に、オレはキスを強請って、舌を絡めて、キスした。
すごく気持ちよかった。
「う…あぁ…あん、あ、はぁ…あん…あぁ」
「気持ちイイ? あんたのナカ、もうぐちょぐちょ、凄い気持ちイイよ、最高、大好き、イルカせんせい、大好き」
「…は、あぁ…、う、ん、イイ、いい、です、気持ち、ィいです、ぁ…、あぁ…」
オレが見たのは、嬉しそうなカカシ先生の顔。
それでオレはもっと気持ちよくなってしまって、オレの中を好き勝手に動き回って、ぐちょぐちょになってるらしいオレのあそこを犯してるカカシ先生のアレを締め付けたらしい。
カカシ先生はオレを抱きしめるようにしてオレの腰を固定して、ぴったりと腰をくっつけて、ひときわ大きく突き入れを繰り返した。
オレはもう喘ぐのも難しいぐらいで、舌を噛まないようにするだけで精一杯だった。
カカシ先生の硬いのがオレの痺れるようなところを掠って、オレの頭の中は真っ白になって、それから腹の中でカカシ先生のあったかいのが脹らんで、縮んだ。
腹の中が変な感じだ、と思ったけど、とにかく息が続かなくて息を整えてたら、オレの中で縮んでたカカシ先生がまた脹らんできてて、それからまた、した。
結局、明け方まで、オレは酔っ払ってたというのに、揺さぶられ続けた、らしい。途中で気を失ったから分かんねえけどな。
そんなわけで、酷いことをされた気分になってた翌朝、カカシ先生は凄く優しかった。
上げ膳据え膳ってのはこういうことをいうんだろう、っていうぐらい、カカシ先生はオレの言うことを何でも聞いてくれた。あの天下の写輪眼のカカシが!
という優越感はまあ確かにあったけど、一瞬で、実は、昨夜の記憶があんまり気持ちよすぎて、俺はカカシ先生への気持ちを真剣に考え始めたのだった。
嫌いなわけじゃないと思うんだ、でも好きかっていわれると違うような気もするしなあーという程度だったオレは、カカシ先生のあのテクに、カカシ先生の本気を見たわけだった。
カカシ先生、本気なんだ! みたいな。
だからオレもカカシ先生に本気答えないとなー、という自問モードに入りかけていた俺だったけど、そのとき、アカデミーに欠勤連絡を入れて朝飯の片づけをして洗濯をしてもちろんベッドのシーツも替えてくれてオレの身づくろいまでしてくれたカカシ先生が、お昼ご飯をお盆に載せてベッドまでやってきた。もちろんオレは歩けないので、今日一日は絶対にベッドに居るしかない。
「なに考えてるの?」
幸せそうな顔がオレに向かって微笑む。あー、いい笑顔だなー。こっちまで和みそう。
じゃなくて。
「あー…、オレってカカシ先生のこと、本気で好きなのかなーって考えてました」
素直なオレはそのまんまを答えてしまった。カカシ先生はもちろん微妙な顔になった。けど、すぐに、はあぁぁーって大きなため息をつくと、盆を窓際においてからオレの頭をぐしゃぐしゃって掻き回した。うわ、せっかくカカシ先生が結ってくれた頭なのに、もったいない。まあカカシ先生がしたんだからいいけど。カカシ先生は微妙な顔から、しょーがねーなーって苦笑いな顔になってた。
そんで、こっ恥ずかしいこと訊いてきた。
「昨日、気持ちよかったですか?」
「えぇぇ!? うーん、はい、めちゃめちゃ気持ちよくて人生初かっていうぐらい気持ちよかったです。ありがとうございました」
「いえいえ、どういたしました」
素直なオレは素直に答えた。オレが頭を下げると、カカシ先生も合わせて下げてくれる。でね、とカカシ先生。
「普通は、嫌いだったら気持ちよくなりません」
「え? そうなんですか? めちゃめちゃ気持ちよかったんですけど」
「だから、俺のこと、好きなんじゃないんですか?」
「あー、そっかなー」
すごいシンプルで分かりやすい理屈だった。そうか、気持ちよかったもんなー。確かに嫌いだったら、あんな痛くて気持ち悪いのがあんなに気持ち良くなるはずないよな。
うん、納得した。
「はい、オレ、気づくの遅いですよね。カカシ先生、これからもよろしくお願いします」
「いえいえ、分かってもらえて俺も嬉しいです。これからもよろしくね、イルカせんせ」
にっこり笑ったカカシ先生は、もとが美形なもんだから、そりゃあ眼福だった。オレは身も心もすっきりとして、カカシ先生に昼飯を強請ったのだった。
あとで、本当にカカシ先生のことが好きになってから気づいたんだが、体が良かったら好きって変じゃないか?
と素直にカカシ先生に訊いてみたら、オレの素ボケに付き合って、オレが自分の気持ちに気づくのを待ってたら、三十越して一生無理そうだったから、体に納得させたほうが早いと思ったの、とこれまた素直に白状してくれた。
考えてみたら、最初の気持ち良い体験も、オレを酔っ払わせてからのコトだったのを思い出すと、カカシ先生って罠というか計画性があるよなー、と思ったので言ってみた。
そしたら、そういう素ボケなとこももちろん大好きですよ、ってカカシ先生は笑い転げながら、オレにキスしてくれたのだった。
2007.5.27