お手洗い2本め
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女子トイレ

「ご遠慮願います」と「ご協力願います」

男子トイレ

今朝、地下鉄谷町線の駅売店でこんな会話を耳にした。

お客>タンサンあらへん?タンサン?
店員>ナショナルの単三でよろしいか?
お客>ちゃうちゃう。電池と違うて、飲むもん飲むもん!(笑)
店員>あぁ、飲物やったらいろいろおまっせ。
お客>タンサンいうてもあんさんに伝わらへんねんな。
店員>だんさんみたいに注文しはる人も珍しいでっさかい。はい、ほんならアルカリ1本でよろしいか?
お客>せやから、ちゃうっちゅーねん。電池と違うて、飲むもん飲むもん!(笑)
店員>そうでっか。ほんならこの「キリン 朝のきれいな水」で手ぇ打ってください。
お客>へ?
店員>アルカリイオン水ですねん。
後半のほうはかなり作ってしまったが、概ねこんな調子のやりとりで、作業員風の男性が炭酸飲料水を購入していた。いやーさすがは大阪。笑いをさりげなく意識的に日常生活へ取り入れ、何でもない会話も楽しんでしまうのだ。今更ながらに我ら大阪人の素晴らしさを目の当たりにした、今朝の出勤途中の出来事だった。



ところで、通勤電車といえば気になるのがところ構わず携帯電話を使いまくる人。携帯電話が世の中に出回りだした頃を思い出してほしい。電車やレストランなどの他人同士が密集した公共の場所で、「あぁ、もしもし俺やけどぉ! 」などと出し抜けにしゃべり出す奴が、いかに白眼視されていたか。携帯電話を所有していることがそんなに嬉しいんか、コイツは。しょーもない阿呆みたいな話ばっかり人前で堂々と垂れ流しやがって、ほんま恥ずかしい奴っちゃ。と、多くの人は怒りに打ち震えていたハズである。
ところが、近頃はどうだ。あっちから水戸黄門のテーマ曲が流れてきたと思えば、こっちからはドラエモンか。そっちからはよーわからん最近のヒット曲らしいメロディーが、そこらからはバビル2世が。サラリーマン、OL、主婦、フリーターらしき若者、コギャル、小中学生までもが携帯電話やらPHSを満員電車の車内で当然の権利のように使っている。こんな状況でよく喧嘩がおきないものだ。かく言う僕もPHSの着信音に「ムトゥ 踊るマハラジャ」のテーマ曲とかELTとかを仕込んでいるが(^^;、公共的閉鎖空間にいるときは、忘れないかぎり極力電源を切っている。たまに電源をオフにするのを忘れているときに、ごく稀に着信音が鳴り出したとしても、電話に出ることなくすぐに電源を切ることにしている。
通勤に利用している南海電鉄高野線では、今までこういう類の車内アナウンスが流れていた。
「車内では携帯電話の使用が他のお客様のご迷惑となりませんよう、ご協力願います」
だが、そんな優しい言い方の注意では、他人の迷惑を屁とも思わない輩に通じるハズもなく、アナウンスの効果はまったくなかった。ところが、少し前に突如として次のような車内アナウンスが流れ出した。
「車内での携帯電話の使用は他のお客様のご迷惑となりますので禁止しております。電源を切るかマナーモードにして、携帯電話のご使用はご遠慮願います」
携帯電話の使用を明瞭に禁止するアナウンスが電車の車内に流れた直後、どこからともなく着信音が鳴り響いた。大学生らしき女性が、比較的小声で応答している。あのアナウンスの手前、さすがに遠慮しとるな・・と思っていたら、僕の横の中年女性2人連れがここぞとばかりに聞こえよがしに非難の声を上げ始めた。「えらい大きい声でしゃべってはるね〜」「ほんま迷惑やわ〜」いや、あんたらの声のほうがよっぽどうるさいんやけど・・と胸の中で呟いた。ともあれ、電車が終着駅に到着するまでの間、携帯電話の着信音がいつもと比べて圧倒的に少なかったのは間違いない。
最近は、携帯電話の使用を明瞭に禁止したこのような車内アナウンスが流れていないような気がする。誰かから文句が出たのだろうか。そのためか、電車車内は携帯電話着信音の嵐とわけのわからない独りよがりのような声であふれている。しかし、現代日本人は大人も子供も、上位権力から規制がかかるまでしたい放題やってしまい、自制という意識がまったく働かない幼稚な国民に成り下がってしまったのだろうか。昔、小中学校などに流行のおもちゃ等をこっそりと持ち込むのが流行ったりすると、大勢があたりかまわずそれを取り出して遊ぶようになり、結局、持ち込み禁止令が出て教師に全部没収されていたのを思い出す。または、自動車のシートベルトも道路交通法で着用が義務づけられるまでは誰も着用していなかったこと、同様にチャイルドシートの必要性が以前からしきりに叫ばれていたにもかかわらず法規制がかかるまではほとんど普及していなかったこと、旅客機の座席が全席禁煙化されるまでは他人の迷惑も考えずに愛煙家が紫煙を吐きまくっていたこと、電車やバスなどで立っているのが辛そうな老人がどんなにたくさんいようともシルバーシート以外の座席に座っている若者は堂々と座り続けていることなど、多くの日本人の幼稚性を上げればきりがない。
世間ではだいぶん前からしきりと規制緩和があちこちで唱えられてきたが、上位権力から何かにつけて規制されていないと秩序が保てないような幼稚な社会が、何でもかんでも規制をとっぱらわれたのちに、自制をもってちゃんとやっていけるものかどうか非常に疑問である。みんなが好き放題にしまくって、取り返しのつかない無茶苦茶な世の中になってしまったら自分たち全員が困ることになるのだが。

(2000年02月23日)
おがみ大五郎


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