お手洗い1本め
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女子トイレ

異邦人の祝詞

男子トイレ

異邦人の祝詞

先日、新幹線に乗って久しぶりに東京へ行った。平日午前9時すぎの東京行き新幹線って結構混んでいるのだ。何日か前に指定席をおさえたのだが、喫煙席は満員で禁煙席しか取れなかった。で、めずらしく禁煙車輌に乗り込んでみてびっくり。新大阪駅からの乗客には僕と同様の出張サラリーマンもいるのだが、その号車の前半分には白人系外国人の団体が乗り込んでいきなりテンションが高い。大声で話しまくる男女と走り回る子供たち。「あー、観光旅行で楽しそうだな。白人の子供はやんちゃしてても可愛いな」などと思いながら持ってきた文庫本に目を落とすと、次の瞬間に我が耳を疑った。

パン、パン。「なんたら〜かんたら〜」

ありゃ、どう聴いても祝詞やで。ノリト。何で新幹線の中で祝詞が聞こえてくるんやろ。ふと顔を上げてすべてを悟った。さっきまで大声を上げてえらい盛り上がっていた白人系外国人の一団は静まりかえり、座席の隣の人同士で向かい合い、一方が頭を垂れ、もう一方がその前で柏手を打って祝詞をあげている。そうしておいておもむろに、頭を垂れた人の額前方約15cmの中空に片手をかざして祈っている。これは、むかし学生時代に大学キャンパスでよくみかけた新興宗教のような団体に似ているなー。めったに女の子から声なんかかけてもらえない僕のような、いかにもギャルと縁遠そうな男子学生をつかまえて「あなたのためにお祈りをさせてください」とか「私たちのお祈りで癌がなおるんです!」とか言って詰め寄ってくる女子学生がおったわ。彼女らの背後にはごっつい体躯の外国人女性が目を光らせてた。たまに気の弱そうな男子学生がキャンパスの端のほうで座らされて、目をつむらされて・・・。女子学生は、気の弱そうな男子学生の額前方約15cmの中空に片手をかざしてブツブツいいながら祈ってた。仏教系の大学のキャンパスでは特に異様な風景にみえたものだ。

まぁ、どこで誰に何のお祈りをしようが、癌が治ろうが治るまいが僕にとってはどうでもいいし、宗教の自由はこの国の憲法で保証されてるんやから好きにやってもろたらええと思うけど、他人の迷惑は考えていただきたい。新幹線の中で煙草の煙を嫌う権利があるなら、わけのわからんお祈りを聞きたくない権利だってあるはずだ(なんのこっちゃ・・)。
僕としてはやっぱり、次から新幹線に乗るときは精神的な健康を考えて、たとえ煙草を吸わなくなっても喫煙車輌に乗ろう。大概、ああいう手合いの連中はいわゆる「健康的な生活」を送りたがっているやろから、禁煙席を予約するはずやしね・・。などとしょーもない事を考えながら、青い空に白く映えるマウント・フジをみて「イッツソービューティフル!」「アンビリーバブル!」などと大騒ぎする彼らにすっかり場を支配されてしまった車輌の中で悶々としているうちに東京駅へ到着してしまったのだった。
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いじわるな自動改札機


東京駅へ着いた。JR在来線に乗り換えるために乗り換え改札へ向かった。修学旅行とおぼしき高校生が大勢滞留しているゾーンをすりぬけて、改札口に近付く。
鈍くさいやつが切符をよく取り忘れたりしよるな〜、こういうとこで・・と思っていると、僕の進む方向にある改札機を通り抜けたおっちゃんが切符を受け取らずにそのまま行ってしまった。「しゃあないなぁ〜。追いかけて切符もっていったろか」と思いつつ、自分の切符を改札機に挿入した。こういう事はよくある。取り忘れた人の切符を引っこ抜いて、次ぎに出てくる自分の切符を受け取ればよいはずだ。さて、では、おっちゃんの切符をも受け取らねば。
シュイン・・・ス、ス、スーッ・・・ペロンッ
おや〜っ?(^^;....おっちゃんの切符が改札機に吸い込まれて、かわりに僕の切符が出てきたで。[大阪市内→東京]って書いてあるし、僕の切符やわな、コレ。
「あぁっ!俺の切符きゃーしてちょーよ!」
あ、おっちゃんが切符の取り忘れに気付いて戻って来はった・・・。
ぼく 「いえ、これは僕のやと思いますねんけど・・。忘れてはった切符、なんか、改札機の中に吸い込まれていきよりましたで」
おっちゃん 「名古屋って書いてにゃーがね!おみゃーさんの切符だがね。この機械、う、うぅ〜ん・・・(ガチャガチャ)」
ぼく「いや・・・そんなとこ勝手に開けようとしてもあきまへんで。ちょっと係の人呼んで来まっさかい (^^;ゞ」
完全にそこの改札機の人の流れは阻害されてしまった。JRが合理化の一環で全国的に導入した「高機能」な自動改札機なのだろうが、取り残された切符が次の人の邪魔にならないようにすぐに回収されてしまうとは・・。「ちょっと、切符取り忘れてましたよ」と後続の人が手渡しできる旧機種の改札機(以前から私鉄で使われていたような)のほうが良いような気がする。切符を取り忘れたとおぼしき人が見あたらない場合は、改札機の上に置いておけば良かったもんな。よくは分からないが、他人の取り忘れ切符を自分のポケットにしまい込む輩が増えたとかで、こうした仕様の自動改札機が登場したものか。
いじわるな改札機が引き起こした騒動に巻き込まれたせいで、ちょっと時間をロスしてしまい、出張先の待ち合わせ時間に遅れそうになった。不正乗車などを防止すると同時に人件費を削減する目的、つまり管理者側の都合で導入された自動改札機は、利用者にとって不便な面も多いような気がする。

(1999年12月14日)
おがみ大五郎


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