日本という国



 小熊英二「日本という国」(理論社)読んだ。中学生以上を対象にした近現代史の本である。字が大きく漢字にはルビがふってあり読みやすい。論理は明快で内容も深く、ぜひ、多くの人に読んでもらいたい。

 本の内容は、明治の近代化と戦後の日本がいかに米国(アメリカ)に従属してきたかという内容である。

 明治時代、どうして、学校へ行くようになったのか。ほとんどの人にとって、学校でやっている勉強の大部分が、今の社会では直接役に立たないことを知っている。それなのに、なぜ勉強した人の方がえらくなるのか?なぜ、実社会での生活で役立たないのに勉強するのか。疑問に思った人がいると思う。この本は、その疑問に答えてくれる。

 また、戦後、日本はどうして米国(アメリカ)に従属するようになったのか。「思いやり予算」で米軍基地の日本人労働者の労務費から、基地の光熱費や施設整備費までを日本政府が払っている。なぜ、アメリカの家来になったのか。敗戦と冷戦が大きく影響している。しかし、91年に冷戦が崩壊したのに、まだ隷属を続けている。これからの日本はどうしたらいんだろうと思っている人がいると思う。そんな人は是非読んで下さい。

日本はアメリカの家来

 戦後、日本は、アメリカの家来になることでアジア各国から戦後賠償をまけてもらい経済成長出来た。フィリピンや韓国など戦後賠償を放棄しなかった国には、賠償がおこなわれたが、冷戦構造の中で親米独裁政権が多かったため個人レベルに賠償金が下りていかなかった。そのため。90年前半の冷戦構造の崩壊以後、親米の必要がなくなり、フィリピン・台湾・韓国で民主化が行われた。そこで、それらの国から個人の損害賠償請求がおこされるようになった。

 冷戦の崩壊で日本の高度成長も終わった。アメリカも冷戦時代は、日本の自衛隊は日本に張りついてソビエトに対する備えをすることで満足していた。しかし、冷戦崩壊後は、ソ連に対する備えは必要なくなった。さらに、アメリカはアフガニスタン・イラクなど世界中に機動的に展開するようになった。世界に展開するアメリカ軍に一緒についてきてもらいたいという要求が強くなった。アメリカの先軍となるように要求されている。

 そこで、冷戦の崩壊後、日本は、「新ガイドライン」「周辺事態法」などアメリカ軍に協力する法律を次々作った。アメリカの次の要求は<憲法9条の改悪>だ。日本の経済的な規制緩和は、アメリカの要求で次々緩和されてきた。アメリカの年次報告書に上げられた項目が次々変えられていったことは常識となっている。憲法9条の「改正」もアメリカの要求での内政変更である。

 冷戦の崩壊で世界の主要先進国の軍隊は、ハイテク化し機動性を増すため縮小がおこなわれた。正規軍の人員の30〜50%、戦車が50〜60%、海上兵力が15〜20%、航空兵力も15〜50%減っている。しかし、その中で、自衛隊は、人員が2%、戦車が18%しか減っていない。それどころか、海上兵力は30%航空兵力は4%増加している。今日本政府は大変な借金をしている。にもかかわらず兵力を削減していない。郵政民営化で公務員を減らすと言いながら、自衛隊員は減らしていない。アメリカの手足となるためには兵力を減らせないのだ。

 また、在日米軍が減っていない。冷戦の崩壊で、ドイツでは在独米軍の半数が、韓国では在韓米軍の1/3が撤退する予定だ。韓国の米軍基地面積も約1/3に縮小する。なのに日本の在日米軍と基地は減らないのか。これについてはアメリカの政府高官は、在日米軍の駐留費の約7割を日本政府が負担している。「米国内におくよりも日本に軍隊を駐留させる方が安上がりだ。」と述べている。日本の思いやり予算は日本駐留米兵へひとりあたり年間約12万ドル。冷戦時代の最前線だったドイツは年間1万ドル、世界第3位の駐留米軍がいる韓国は年間2万ドルしかそれぞれの政府は支出していない。桁が違う。

 アメリカ政府、アメリカ人の常識は、「安保条約で在日米軍がいるのは日本を軍事大国にしないため」という、これほどばかにされて、そんな国の軍隊のグァム移転にどうして約103億ドルの60%も出さねばならないのか。駐留経費はもう「思いやる」必要ないのではないか。

 今後も、日本は対米従属の道を歩むのか。アメリカの手足として世界で戦争するのか。アジアと共に道を歩むのか。国民の真価が問われている。アメリカ政治を変えなければならない。

安倍内閣を読み解く−その文脈とは

 2006年9月26日に安倍内閣が発足した。それ以来、「美しい国づくり」という施策が次々と実行されている。防衛庁を防衛省に。教育基本法の改悪。教育再生会議による教育の国家管理。しかし、国家主義は見せかけではないか。国家主義的な装いをしているが、小泉前首相以来アメリカ従属の度合いが強くなっただけではないか。「美しい国」とは、美国(中国語でアメリカ)?ではないのか。安倍氏の祖父の岸元首相は、国民の大反対の中で安保条約を改定し対米従属の道を歩んだ。今国会で自民党は、国民投票法を成立させようとしている。安倍首相も祖父と同じ道を歩むのだろうか。

(2007/03/06)