自己責任とは何か2

 神戸新聞の2004/05/26朝刊に「拉致被害者家族に批判殺到 脅し、暴言も」という記事が載った。日朝首脳会談での小泉純一郎首相の対応を厳しく批判した拉致被害者家族会を非難する動きが出ているという。また、イラク人質事件でも同じように人質及び人質家族をバッシングする動きがあった。2004/05/20神戸新聞夕刊で、杉田敦(法政大学教授)さんがイラク人質事件を論考されているので一部を引用し両者に共通する意識を考えてみたい。

「拉致被害者家族に批判殺到 脅し、暴言も」
<以下引用>
(前略)
 「救う会」事務局(東京)にも「五人の子どもを連れ帰った首相へのねぎらいの言葉がない」など、家族への批判メールが殺到した。

 有本さん宅には二十四、二十五両日に知人以外から八件の電話があった。うち三件は家族を励ます内容だったが、五件は「首相にお礼を言うべき」などの批判。名乗らずに「文句もいいかげんにしとけ」「線香でも送ったるわ」といった脅し、暴言もあったという。

 小泉首相を擁護する根拠として「訪朝しなければ五人は帰れなかった」との意見がある。しかし、母の嘉代子さん(78)は反論する。「それだけなら私がやる、と拉致議連の平沼赳夫会長もおっしゃっていた。小泉首相にお礼は言えない」。

 落胆しながらも嘉代子さんは「批判も関心があるからこそ、と思うようにしている」と話す。

 一方、救う会へのメールは、小泉首相が訪朝を終えて家族会と面会した二十二日深夜から届き始め、二十五日までに七百数十件に上った。

 大半が批判で、「イラクで人質になった日本人と同じ。自分のことしか考えていないのか」との意見も。二十五日には「家族会が怒るのは当然」などと支持する内容も半分ほどになった。
(後略)
<引用終わり>(2004/05/26神戸新聞)

 「五人の子どもを連れ帰った首相へのねぎらいの言葉がない」、「文句もいいかげんにしとけ」「線香でも送ったるわ」、「イラクで人質になった日本人と同じ。自分のことしか考えていないのか」。これらの言葉は、どういう意味で発せられた言葉なのだろうか。
 
 「お世話になった人に対して失礼だ」という社会通念を装った批判の一方、「線香でも送ったるわ」という社会通念を逸脱した暴言もある。同一人物でないとしてもこのことで電話してくるのだから決して人倫上の批判ではないようだ。同じく「自分のことしか考えてない」と「公共」を主張し「利己」をいましめているような内容だが、わざわざ子供が帰ってこないと心配している両親に忠告もないだろう。

 イラク人質事件でも、命からがら帰国した高遠さんらは激しいバッシングの結果精神的に追いつめられた。「イラクで人質になった日本人と同じ」という批判もあるのでイラク人質事件の杉田敦(法政大学教授)さんの論評を見てみよう。

「変わらぬ国民意識」〜「従属すべき」という世論〜
杉田敦(法政大学教授)
<以下引用>
(前略)
▽世間とお上
 それにしても、国内の反応は、人質たちに対してきわめて厳しいものであったが、そこで示された「世論」は、次のようなものであったと思われる。

 大切なのは、日本国民としてのアイデンティティーである。それ以外のアイデンティティー、たとえば世界市民のようなものを真に受けるのは、勘違いしているか、さもなければ偽善である。

 日本国民は、日本政府の方針に従うべきであり、それを無視した揚合には、政府による保護をはじめとする、あらゆる権利を失う。イラクのような遠い国がどうなるかは、二義的な問題である。日本国民として心がけるぺきは、国民経済に損害を与えないことである。

 さらに、家族とは何かについての旧来の考え方が、そこでは再確認された。子供は親に心配をかけてはならず、親は子供が「世間」に迷惑をかけないようにせよ。「子供」が成人であっても同じである。どんな人道的な目的よりも、家族や世間が大事であり、人質となった人々はこの点で、反省しなければならない。

 親は親で、世間を騒がせたとをまずわびるべきである家族が無事帰って来てほしいと願うのなら、「お上」にはひたすらお願いすぺきであり、批判的言動は慎むように。個人や家族の事情は「私」、国家の事情は「公」であり、「私」は「公」に従属するのだから。

▽新・自由主義
 こうして人質たちは、「私」の都合で「公」に迷感をかけた「自己責任」を問われることになった。こうした公私観念の是非や、責任論の当否はここでは論じない。私が気になるのは、なぜ「自己責任」という言葉が今回、これほどまでに浸透したかである。

 それば、新・自由主義の奔流の中で、一般の人々の間に、ある種の不安感が共有されているからかもしれない。会社がつぷれても政府は救ってくれない。解雇されても、組合は助けてくれない。組織を離れては生きて行けないので、日々、苦しい中で耐えている。それなのに、まるで自己利益を超越したかのように、危ないところに向かう人たちを見て、心にさざ波が立った、ということであろうか。
(後略)
<引用終わり>
2004/05/20神戸新聞

 「和」を持ってと貴しとなす。集団性を重んじる考え方は、厳しく個人の責任を追及するということを妨げてきた。「自己責任」とはこのような集団的行動や意識を批判する言葉かと思っていたら、「世間」とか「公」とか「お上」に迷惑をかけないから自己責任だという。敗戦の反省や戦後の民主主義の延長上に「自己責任」があるのかと思っていたら、どっこい、両者に共通するのは「お上のすることにこれ以上文句を言うな」という脅しだった。
(2004/05/26)


北朝鮮に身代金支払い?

 今日(5/17)、ニュースを見ていたら、小泉首相の北朝鮮訪問に際し、政府は北朝鮮に25万トンの食糧援助と1000万ドルの医療支援を行うという。これは、拉致被害者の家族8人の身代金ではないか?まぎらわしい支援は、行うべきではない。

<以下引用>
首相の訪朝決断、その舞台裏とは

(前略)
 2月11日、 およそ半年ぶりの日朝政府間交渉。この場で、政府の高官による被害者家族の出迎え案を、日本側が初めて交渉のテーブルに載せていたのでした。
 
 さらに、総理の意向を受けて、 山崎 前副総裁が電撃的に行った北朝鮮当局者との会談で、山崎氏が政府高官の派遣に加え、数十万トン規模のコメ支援を実施する案を伝えます。この段階で経済支援が拉致問題進展の最低条件となってしまったのです。ここから、動きは一気に加速します。
 
 5月4日の政府間協議を前に、4月28日、官邸では総理、官房長官、そして、田中外務審議官らが対処方針を協議しました。この場で、小泉総理は、突然、自らが北朝鮮を訪問する意思があることを伝えるよう、指示しました。
 
 この発言を唐突に思った出席者が、時期尚早論を訴える場面もありましたが、総理の意思は固かったのです。
 
 「突っ込んだ意見交換ができたと思う」(外務省薮中三十二アジア大洋州局長)
 
 この時の政府間交渉で、北朝鮮側は日本政府に4つの条件を突きつけました。「総理か総理経験者の訪朝」「日本円で1000億円規模の経済援助」など4つのうち、最大の難関であるはずの「総理か総理経験者の訪朝」という条件は、小泉総理自らの訪朝の意向を伝えることで、一気にクリアされます。
 
 また、残りの3つの条件を満たすための対応も素早くとられます。
 
 「拉致の問題は日本と北朝鮮の問題。2国間で解決する問題だと」(小泉純一郎首相)
 
 そして、日本政府は残りの2つの条件についても調整を進め、「25万トンの食糧支援と1000万ドルの医療支援を提案」「帰国後の家族の意思確認」についても北朝鮮側に確約しました。日本側が全ての条件をほぼ丸飲みしたことで、北朝鮮側は13日夜、総理受け入れを日本側に伝えたのです。
 
 「ある程度進展があると判断しない限り、こういう決断はできませんから」(小泉純一郎首相)
 
 「見返りは与えない。これも基本路線であります」(自民党安倍晋三 幹事長)
 
 「拉致には一切の見返りを与えない」という大前提を掲げていた日本政府。交渉の経緯を知る政府関係者は、「食料支援が北朝鮮側に支払った『身代金』と受け取られかねない」と、懸念を示しています。総理の決断の是非は、首脳会談の後の評価を待つことになります。(TBS・HP、17日 17:30)
<引用終わり>

 小泉首相の北朝鮮訪問は、自らの国民年金未加入・未納問題を隠し、夏の参議院選挙を有利に戦うためのパフォーマンスといわれている。首相経験者との面談でも訪問に反対する意見が多かったようだ。

 小泉首相は、イラクの日本人誘拐事件に際し、「テロには屈しない。自衛隊が撤退することはない。」と明言した。そして、被害者に対し「外務省がイラクに渡航禁止を勧告している。もう少し考えてほしかった。」というような自己責任論を述べていた。それに呼応して、自民党の国会議員は「反日分子は助けなくていい」というようなことを言っていた。

 テロには屈しないのであればどうして身代金的なお金や物を払うのだろうか。首相訪朝で8人の家族の帰国と引き替えにこの身代金的なお金などを払うことになった場合、個々の家族に身代金を請求するのだろうか(国内での誘拐事件の場合、犯人への身代金を警察は出してくれない)。

 また、8人の方々以外の、死亡や行方不明とされる拉致被害者の調査追及はどうなるのだろうか。拉致被害者の有本恵子さんの両親らは16日、神戸で開かれたシンポジウムに参加し次のように述べている。

<引用開始>
有本さんの両親ら「安易な訪朝は危険」

(前略)
 「総理が訪朝することを聞きまして私は本当に驚きました。死んだと言われていますから(娘らのケースを)どのように解決してくださるのだろうかと思います」(有本嘉代子さん)
 
 有本さんらは「死亡や行方不明とされる拉致被害者10人や300人近い特定失踪者の正確な安否情報が得られないなら、交渉に応じるべきではない」と訪朝に疑問を投げかけました。(TBS・HP、17日0:17)
<引用終わり>

 もっともな話だ。拉致被害者5人のご家族8人の帰国でその他の拉致被害者の所在追及が出来なくなったり、また、お金(身代金)で解決するつもりなら問題だ。
 
 日本はジュネーブ条約追加第1議定書に入っていないため、国際法上堂々と民間人の拉致誘拐を非難できない。矢崎総業の村松さんがコロンビアでゲリラに誘拐された事件のときも救助できなかった。日本も早く、ジュネーブ条約追加第1・第2議定書に入るべきだ。
(2004/05/19)


政治不信やて〜〜税金の無駄使い・イラク戦費と年金〜

 「たけしのTVタックル」<血税のばらまき、マル秘、実態国益とは>という番組の再放送を見た。中国へのODA、イラク戦費の負担、社会保険庁の年金からの無駄遣いなどが取り上げられていた。

 イラクの戦費負担は、復興援助費が50億ドル、イラクへの債務放棄が70億ドルの120億ドル。湾岸戦争の130億ドルと同規模の負担になるようだ。

 イラク戦争の開戦当時、政府・自民党は湾岸戦争(海部首相)の例を挙げ、お金を出してもアメリカから感謝されなかった。汗が必要だと言って自衛隊を派遣した(さすがに、「血」とまでは言わなかったが)。お金は出さないのかと思ったら120億ドルも出していた。120億ドルも出してイラクから感謝されているのかというと、日本人が誘拐されたことから判るように、かえって嫌われている。また、アメリカは、アーミテージ国務副長官が議会で日本の「気前の良さを」指摘し、感謝するというより軽く見られている。結局、国民の税金が無駄になっただけのようだ。

湾岸戦争とイラク戦争の比較(金・汗)<2004/05/15現在>

 ・湾岸戦争−130億ドル
 ・イラク戦争−120億ドル+自衛隊のイラク派遣費用+自衛隊のインド洋上のフリーオイル関係費用、自衛隊の派遣+日本人5人の誘拐+外交官2人犠牲

 政府や評論家はイラク戦後の石油利権の確保などと宣っていたが、債務放棄で債権回収すら出来なくなる可能性が高い。小泉首相や自民党は、ブッシュ大統領やアメリカ政府と仲良しと言うことだが、国民の税金を勝手に回してもらっては困る。

年金改悪と議員の未納問題
 
 国民年金の未納問題が国会議員に広がっている。年金制度改革関連法案を提案した側の厚労省副大臣2人、福田官房長官、公明党の神崎委員長・冬柴幹事長、ついには小泉首相も6年11か月の未加入の期間があったことが判明した。小泉首相は、加入が義務化されてからの未納はない。学生時代の未納は、40年前の学生時代に、年金にいるとは考えてなかったなど開き直っている。しかし、社会保険庁に問い合わせるなど詳しい調査はしていないようだ。また、審議した衆院厚労委員会の衛藤委員長、与党議員の多数、民主党の菅代表をはじめ野党議員。結局、国民に国民年金にはいるのは義務だと言いながら、国会議員はその義務を果たしていなかったことになる。

 このような状態で年金制度改革関連法案が参議院を通過し成立することは、民主主義・議会主義の根幹にかかわる。仕切直して、再度、提案するのが筋というものであろう。

 小泉内閣については、小泉首相の言う「自分は義務加入の期間は払っているので問題がない」のなら、未納の閣僚は問題があると言うことだから即刻罷免すべきだろう。

公費天国
 
 外務省官僚のあきれた高給取りは有名である。また、ODA利権にからむ放漫援助。警察の裏金問題。社会保険庁の年金無駄使いも問題になっている。
 さらに、農林水産省のBSE対策費がまたすごい。BSE対策と称し、外国産牛肉でも補助金を交付した。さらに、農林水産省の役人は、広島の業者を救済するために、「ハンナン」の浅田会長に頼んで、外国産の牛肉を買ってもらって、税金を直接回した。
 結局、上に立つもの(公権力の行使をするもの)が私腹を肥やすという仕組み(システム)ができていて、それを直すことが出来ないということだ。つまり、政治家・官僚の金の回し合いのシステム。政治家や官僚が、税金を国民の血税と思っていない。自分の自由になる金と思っている。

 税金の使い道は、「費用対効果」という原則で実行せよ。年金制度改革で問題となっている年金の不足額3、000億円は、イラク戦争の戦費負担を止めれば十分まかなえる。何にお金を使うかという問題である。イラクの人が喜んでくれるなら復興援助の税金はおしくないが、アメリカへの戦費負担でイラクの人が日本を敵対視するなら無駄遣いだ。

 小泉首相は、クリーンイメージで売っている。しかし、国民の税金120億ドルをイラク戦争に投入し、湾岸戦争より出費を抑えたように思わせ、紛争地域への自衛隊を派遣を実現した。税金の使い回しは上手だ。なかなかの政治家である。
(2004/05/15)


アメリカよお前も未納か〜在日アメリカ軍賠償金未納・未払い〜

 毎日新聞によると、在日アメリカ軍が騒音の賠償金を払っていないと言うことが判明した。しかも、アメリカに親切な政府が肩代わりしてあげてるらしい。
 日本政府は、アメリカに言われてイラク関係で120億ドル出す予定だ。さらに、今回は、日米安保条約に基づく「地位協定」で約束したことを、米政府が守らないという事態である。
 外務省は毅然とした態度で、お金を払うか日米安全保障条約を破棄するか迫るべきだ。まあ、政府・外務省にそんなことが出来るとも思えないが。やはり、ここは、国民に付けを回す常套手段をとるのだろう。

<以下引用>
嘉手納など3爆音訴訟 米、19億円賠償拒否で国が肩代わり−−地位協定、宙に

 極東最大の米軍基地、嘉手納飛行場(沖縄県)の飛行差し止めなどを求めた「嘉手納爆音訴訟」など原告側の勝訴が確定した国内三つの騒音・爆音訴訟で、米政府が日米地位協定に基づく賠償金の負担分、計約19億円の支払いを拒否していることが14日分かった。日本が肩代わりしており、国民にツケが回されている実態が浮き彫りになった。

 照屋寛徳衆院議員(社民党)の質問主意書に、政府が一部について書面で答えた。答弁書や外務省日米地位協定室によると、米側が負担を拒否しているのは、嘉手納爆音訴訟判決(98年5月、賠償額約15億4000万円)のほか、第1〜3次横田基地騒音差し止め等請求訴訟(93年2月〜94年3月、同計約8億8000万円)と第1次厚木基地爆音訴訟(95年12月、同約1億円)判決。いずれも国が原告側に賠償金を支払った。

 地位協定は、米軍が損害を与えた民間人への賠償について、米側にのみ責任がある場合、賠償額の75%を米国、25%を日本が負担すると規定。本来は総額約25億2000万円中、約18億9000万円は米国負担となる。外務省は「規定に基づき米側に75%の負担を請求している。まだ妥結していない」と話す。拒否理由は「信頼関係が損なわれる恐れがあり話せない」という。

 照屋議員は「地位協定の明文すら守らせることができない外務省の弱腰の対米交渉が原因」と話している。

 地位協定の抜本見直しを求めている稲嶺恵一知事は「現在の地位協定が守られていないことが大変遺憾だ。政府に強く働きかけたい」と不快感を示した。【松藤幸之輔】(毎日新聞 2004年5月15日)
<引用終わり>


裏金発覚を畏れ文書の破棄を選ぶ
<警察の不正経理問題>

 神戸新聞4/28朝刊及び毎日新聞4/28夕刊に、神奈川県警「捜査費」会計文書破棄という記事が載っていた。
<以下引用>
 神奈川県警本部と同県内警察署の少なくとも10部署が今年1〜3月にかけて、保存期限内の1998年度の捜査費などの会計文書を破棄していたことが27日、分かった。98年度分は5年間と内規で決められた保存期限が3月31日で切れるが、北海道警などの一連の不正経理問題を受け、警察庁が期限延長を指示していた。同県警は「担当職員が不注意で破棄してしまった。意図的ではない」などと釈明している。

 県警によると、会計文書を破棄したのは、刑事総務課など県警本部の一部部署と警察署など。捜査費や捜査用報償費、出張旅費などに関する会計文書のファイルを捨てていた。担当職員が今年1〜3月、昨年12月31日で5年間の保存期限が切れた他の行政文書などと一緒に、会計文書も破棄したという。

 警察庁は3月24日、道警や福岡県警などで不正経理が発覚したのを受け、98年度分の会計文書も将来の調査に備え、保存するよう各警察本部に指示していた。

 しかし、九州管区警察局が98年度分の会計文書を破棄したのが今月になって発覚したことから、神奈川県警会計課が本部、各署を調査した結果、破棄が判明した。

 舟川靖弘・同県警総務部長は「年度単位の会計文書と、年末に保存期限が切れる一般行政文書は異なるのに、間違えた。意図的ではない。詳しいことは調査中」と話している。
<引用終わり>

 子供だましのような説明を誰が信用するのだろう。神奈川県警については不祥事が過去沢山あり、隠蔽体質がその分他府県より進んでいるのだろうか。

 不正な会計処理というよりも「公金詐欺」というのが近いような警察の捜査費流用事件は、警察の「詐欺事件」の捜査・立件を困難にしていると思う。詐欺を働いている本人が詐欺を捜査・立件できるとは信じられないからだ。
 
 また、今回の破棄事件は、8・15の終戦時、陸軍省や参謀本部が重要書類を焼いた事例を思い起こさせる。敗戦で、自分たちに都合が悪い書類を焼くことで責任を回避するというやり方だ。書類を残せばアジア・太平洋戦争戦争の責任を追及される。今回の場合は、残せば、公金横領あるいは詐欺を追及される。燃やせば、不注意による懲戒程度で済むという計算だろうか。とまれ、終戦が近いということなら喜ばしいことなのだが。
(2004/04/28)


自己責任とは何か

自己責任キャンペーン
 イラクの日本人人質事件に関して、「自己責任論」キャンペーンが展開されている。人質が15日に解放された後、閣僚や政府関係者から「軽率な行動が招いた災難」という自己責任論が噴出(神戸2004/04/17)。神戸新聞の「発言」の欄では、4/22に人質問題を政争に使うな」という投稿で、「自己責任の原則」を指摘している。また、同じく4/23、「自己責任が求められる」というの投稿で「欧米各国では、勧告を無視し、危険を承知で入国した人が、トラブルに巻き込まれてもそれは自己責任という考え方で対応している。」世界の常識だと書いている。一般人を巻き込んで、政府に迷惑を掛けたものを排除するというキャンペーンを誰かが展開しているのだろうか。

政府経費請求
 これを受けて、「衆院有事法制特別委員会で政府がイラク日本人人質事件で支出した経費に関連して、解放された高遠菜穂子さんら三人が、バクダッドからアラブ首長国連邦のドバイに移動した際のチャーター便運航費約6千ドル(六十六万円)を三人に請求する方針を示した。このほかドバイの病院でかかった体調検査の費用や、三人と合流した家族の航空運賃、滞在費などの経費は自己負担処理したことも明らかにした。」(神戸4/20)

海外の評価
 一方、20日付フランス紙ルモンドは、イラク日本人人質事件で日本国内に「自己責任論」が台頭していることを東京発で紹介、政府や保守系メディアが人質の無責任さを責め、健康診断や帰国費用の負担を求めたことを批判した。 「日本では人質に解放費用の支払い義務」と題した記事は「日本人は人道主義に駆り立てられた若者を誇るべきなのに、政府などは人質の無責任さをこき下ろすことにきゅうきゅうとしている」と指摘。人質が「イラクで仕事を続けたい」と発言したことをきっかけに「政府と保守系メディアに無理解と怒号が沸き起こった」とし、費用負担要求について「この慎みのなさは制裁まで伴っている」と非難した。また「(人質の)若者の純真さと無謀さが(結果として)、死刑制度や難民認定などで国際的に決してよくない日本のイメージを高めた」と評価。パウエル米国務長官が「危険を冒す人がいなければ社会は進歩しない」と人質に慰めの言葉を贈ったことも紹介した。さらに人質解放に重要な役割を果たしたイラク・イスラム聖職者協会の代表が、小泉純一郎首相から感謝の言葉がなかったことを嘆いていると伝えた。(毎日4/21)

人質の家族に会わない首相
 「イラク3邦人解放特別評論」(4/16神戸)では、高村薫さんが「人質が解放されたことはよかった。しかし、小泉純一郎首相は一国のトップとしてあるまじき態度だった。人質の家族に会わない、国民には『救出に全力を挙げる』と言うだけ。説明義務を全く果たさなかったが、幸運にも命拾いした。国も国民も自衛隊を派遣することで、さまざまな危険が起こりえることを理解していなかった。民間人の人質と国策である自衛隊派遣がはかりにかけられた状況は、国や政治が機能していないことの証ではないか」と述べている。ニュースを見ていると、外国のトップは、災害が起こったときすぐに駆けつける。国民にも、率先して会うし、説明も丁寧だ。小泉首相は、日本の政治家の典型ということだろう。

国民年金未払い
 日本の政治家の特色と言えば、倫理観がないこともその一つだ。4/17の神戸新聞では、「十六日朝の閣議後記者会見は閣僚から苦言が相次いだ。『自己責任を考えて』(河村建夫文部科学相)、『危険を承知であえて行った。大騒ぎをどう受け止めるのか』(中川昭一経済産業相)−。」と政治家が述べたという。その政治家が、特に経済産業大臣の中川昭一は、国民年金を21年もはらっていなかったということである。その他にも総務大臣の麻生太郎は3年十か月、石破防衛庁長官は02年9月から払っていなかった。この「自己責任」はどう取るのだろうか。

自己責任とは何か
 今回のイラク日本人人質事件は、政府が自衛隊をアメリカの求めに応じて派遣したことが原因だ。それまでイラクでは、対日感情がとても良く親日的だった。しかし、アメリカがイラクを侵略し、その手先となり自衛隊を派遣したからイラクの人の見る目も変わった。そのため、イラクで人道活動をしていたボランティアやジャーナリストまで誘拐されるという状況になった。責任は誰にあるか明らかである。阪神大震災のような天災なら自己責任と言われても諦めもつく。しかし、今回は、加害者?ないし責任が誰にあるかはっきりしている。政府が経費を払い陳謝するのが当然だろう。しかし、救出の経費を請求し謝りもしない。よく高級イタリア料理店にいくグルメの小泉首相や高額給与や手当をもらっている大使や外務省はいったい今回何をしたのだろうか。
 自衛隊派遣の責任を追及されないために自己責任キャンペーンを小泉内閣が仕組んだというのが真相だろう。
 (2004/04/24)


「白い巨塔」は今も

 山崎豊子原作の白い巨塔」がリメイクされ、2003年10月〜2004年3月まで、フジテレビで放映された。田宮次郎主演のオリジナルは1978年6月より放映されたので、26年ぶりのリバイバルということになる。
 この間、日本の社会は進歩したのだろうか。医学界は変わったのだろうか。

2004/04/16付けの神戸新聞では、「日歯汚職で連合副会長 金品の授受認める 元社会保険庁長官は否認」という記事が載っていた。日本歯科医師会は歯科医師の診療報酬改定を巡り、元社会保険庁長官で中医協委員の下村健容疑者に歯科医師に有利な発言をしてもらうために金品を送った。その記事のくだりに、「特捜部の調べでは、下村容疑者は2001年6月、都内の料亭で飲食接待を受け、その場で臼田容疑者から現金約200万円を受け取った疑いが持たれている。」

 リメイクの「白い巨塔」でも、唐沢寿明扮する財前助教授を浪速大の教授にするため、義父の産婦人科医(西田敏行)と医師会会長が高級料亭で医学部長(伊武雅刀)を始めとする教授連を接待し、実弾を配る場面がある。オリジナルの話でリメイクは誇張ではと思っていたら、どっこ今も同じことが行われていたようだ。

 人間の社会は、30年ぐらいでは進歩しないということか。お医者さんにはもう少し、人間の倫理を自覚してもらいたい。歯科医師の話で医師は違うてか。
(2004/04/18)
診療報酬改定は無効
 「臼田会長らはこのほかにも、下村元委員に対し、少なくとも400万円を渡していたという。」(朝日、2004/04/23)このような中で決められた、02年度の診療報酬改定は無効ではないか。振り出しに戻してもう一度審議すべきだ。
(2004/04/24)



 建設会社代表らが、日雇い労働者のための雇用(失業)保険「日雇労働求職者給付金」をだまし取っていた事件で、兵庫県警暴対二課と有馬、灘署などは七日、詐欺の疑いで、西宮市塩瀬町生瀬、建設会社代表池崎定男(57)▽尼崎市昭和通一、無職沖田英二郎(32)▽同市杭瀬南新町二、美容師幸野光章(34)の三容疑者を逮捕した。  調べでは、池崎容疑者らは、尼崎公共職業安定所に同社を雇用保険適用事業所として届け出た上で、就労実態のない幸野容疑者が二〇〇二年八月からの約一年間、同社で働いたように装い、印紙(約三万三千円分)で同保険料を納付し、〇二年十月からの約一年間に同給付金九十万七千五百円をだまし取った疑い。  同課などは、共犯の別の無職男(35)についても同容疑での逮捕状を取り、行方を追っている。(神戸新聞2004/04/08)

警察の不正経理・裏金問題

 朝日新聞2月11日付に「事件もでっち上げ、元道警幹部が組織的な裏金作りを証言」という記事が載った。以前から警察の不正経理については報道されていた。今回は、北海道警の旭川中央署の捜査用報償費が、捜査協力者に支払われなかったという疑惑で、内部告発があり、具体的な不正を示す書類が外部に出た。北海道警は、この疑惑を示す文書の出所が不明ととぼけていた。住民監査請求が行われ、監査委員会は警察を追認し請求を棄却した。道議会でも道警の芦刈勝治本部長が不正はないと強弁し、知事も、警察を信用しているなどと追認した。テレビで道議会の高橋知事の答弁を聞いたが、警察に嘘をつかれたのだからきちっとおとしまえをつけるべきである。道民の代表として、完全になめられている。道警の報償費をゼロにしてもいいのではないか。

 警察が嘘を付き嘘の書類を捏造する。警察の仕事は、法に違反し不正を働いたものを逮捕し、検察官に送ることである。今回の不正疑惑でも、警察の組織は自ら警察を捜査し不正を働いたものを逮捕すべきだろう。検察庁の裏金問題では、三井事件で検察庁の裏金はほぼなくなったようである。警察も今回の原田氏の勇気ある発言で不正をなくしてもらいたい。
 
 先日、捜査終了のご苦労さん会を公費で行っているというニュースを見た(一人3、000円?とか5、000円?とか忘れたが)。時代は変わっている。今時そんな風に予算を使っている役所はない警察だけである。
警察の意識改革も問題である。

 「警察の裏金作り」に対し、元道警釧路方面本部長の原田宏二氏が、証言した。「警察OBで現在フリーの立場となり、現役時代から改善したいという思いを持っていたが、しがらみの中でできず。今が道警の不正経理を正す最後のチャンスと思って証言した」という原田氏の発言に警察の中にも正義感のある人間がいるということを知ってうれしかった。組織に長年勤務し幹部であった方が、その組織の不正を証言することは苦悩されたことと思う。どこにも立派な人はいるものだ。

道警報償費不正支出疑惑について十日、記者会見で配布した告白文の証言内容は次の通り。

<原田氏の証言一部>

実態を明らかにする理由

 これまで、いくつかの社から何回も、元旭川中央署長との理由で取材を受けました。その際、私がお話しするときが来れば、匿名ではない形でしたいとお願いをしてきました。監査結果が出た現在、それなりの立場にいた者が真実を話すべきときが来たと判断しました。皆さんからその無責任さを指摘されるでしょう。昔の仲間からも裏切り者とのそしりを受けるのではなど、ずいぶんちゅうちょもしましたが、その理由は次のとおりです。

(一)どんどん道警の信頼が失われていくなかで、現場の警察官やその家族の人はさぞ肩身の狭い思いをしているのではないでしょうか。一日も早く現場の警察官が誇りを持って仕事ができるようになってもらいたいと思うのです。今回が道警が更生できる最後のチャンスだと思います。

(二)少なくとも私が退職した平成七年まで裏金が存在し、組織的に行われていました。従って、今問題になっている旭川中央署の二人の元署長は、かつてともに仕事した仲間ですが、彼らだけが責められる問題ではなく、関与した全組織の幹部やOBも責任を負うべきだと思います。現在もこうしたことが行われているかどうかは、確認できません。

(三)在職中に地元出身の最高幹部の立場にありながら、保身と甘えと自らの力量不足から改善に積極的に取り組まなかったことに責任を感じ、長い間、後悔の気持ちが続いてました。かつて、道庁などの問題が明るみに出た際、道警のみが追及をのがれました。しかし、私がそうであったように、現職の皆さんに、真実を語ることを求め、改善を期待することはできないのかもしれません。だとすれば、OBの私が事実を公表しなければと思ったのです。

(以下略、詳細は)
道警報償費不正疑惑 元釧本本部長の証言要旨


<以下引用>

「事件もでっち上げ、元道警幹部が組織的な裏金作りを証言」

 元北海道警釧路方面本部長で、旭川中央署長も務めた原田宏二氏(66)が10日、札幌市内で記者会見し、在職していた95年まで、捜査費や捜査用報償費を組織的に裏金としてプールし、署長の交際費などに使っていたと明らかにした。監査で裏金が発覚するのを防ぐため、架空の事件をでっち上げたことも証言した。住民監査請求が棄却されたことを受け、「最高幹部だった自分がありのままを公表しなければと思った」と会見した理由を説明した。

 原田氏は1957年に道警に入り、90年3月から91年10月まで旭川中央署長を務めた。95年2月に釧路方面本部長(警視長)を最後に退職した。現在は無職。

 記者会見で原田氏は、裏金作りの対象は道費の報償費や旅費、国費の旅費、捜査費などに及んでいたと証言。金額は定期的に道警本部から書面で示され、この額に応じた小切手が送られてくる。小切手は署の会計課によって現金化され、副署長に裏金として渡り、裏帳簿で管理していたという。必要な会計上の書類は「すべて経理担当者がひそかに下書きを作り、署員に記入を依頼していたようだ」と述べた。

 使い道については「署長交際費、異動時の餞別(せんべつ)、部内の懇親会費、冠婚葬祭費、タクシーチケットの支払いなどが主だった」とした。警察庁などの接待費や道議会対策にも使われていたという。

 また、「(国費の捜査費に関する会計検査院の)監査では、署長や課長はどのような事件だったか聞かれたときのために、ありもしない事件を苦労してでっち上げた」と述べた。

 記者会見には旭川中央署の捜査用報償費を巡って住民監査請求した弁護士グループの一人が同席した。実名で証言した理由について原田氏は「現職に真実を語ることを求め、改善を期待できないのだとすれば、住民監査結果が公になった時点で、最高幹部だった自分がありのままを公表しなければと思った」と説明した。

 道警の佐々木友善総務部長は「報道により承知しており、本人(原田氏)から話を聞いてみたい」とのコメントを出した。

 警察庁は10日夜、原田氏の記者会見について「北海道警の元幹部が、資料を配布して記者会見したことについては承知している。警察庁としては、北海道警において、本人から話を聴くものと承知しており、その推移を見守りたい」とのコメントを出した。(朝日新聞2004/02/11)
<引用終わり>


イラク問題(小泉政権の対応)

アメリカのイラク攻撃の意図

 アメリカがイラクを攻撃したのは、石油を握るということと軍需産業の要求、ネオコンというイスラエルグループの要求が合わさったものと見ることが出来る。イラクの国土は荒廃し、多くの民衆の命が失われた。市民は、生活基盤を失い、治安の悪化と貧困にあえいでいる。このような状況は、アメリカは百も承知で、戦闘終結宣言以後もイラク民衆を挑発し、混乱を無理矢理作りだしている(田中宇の国際ニュース解説、イスラエル化する米軍)。イラクの混乱・中東全体の混乱は、産軍複合体にとっても、イスラエルにとっても利益である。

国内問題としてのイラク問題

 小泉首相は、アメリカに大義のないのを分かっていて支持をし自衛隊を派遣するのだろう。確かに、アフガニスタンやイラクへの攻撃、少し前のパナマやグレナダ攻撃、イランコントラ事件などを考えると、アメリカは何でもするし、平気で日本も攻撃するだろう。小泉が友好国を強調するのはよく分かる。北朝鮮がアメリカを畏れるのはもっともなことだ。
 しかし、本当の理由即ち「アメリカが怖い」と言わず。自民党の政治家などは、「北朝鮮が日本を攻撃してきたとき、アメリカ軍に守ってもらう必要があるから」というような論理を述べている。論理のすり替えである。イラク攻撃を利用して、自民党の本懐である憲法改正に繋げる手段として利用しようとしているのではないか。自衛隊を紛争地域に派遣することで、海外派兵の実績を作る。当然、憲法9条との乖離が進み、改正をしなければいけないと言い出す。自衛隊を軍隊とする。将来的には、徴兵制も視野に入れる。小泉が、こう考えているなら確信犯である。
(2004/01/06)