高齢者の健康
A. 高齢者とは T.一応の目安として65才以上 WHOでは 45〜60未満 中年 middle age 60〜75未満 年長者 the elderly 75以上 老年者 the aged U.若い人との違いは 老化による機能の低下、実質細胞の減少 → 間質細胞の増加 V.高齢者の病気の特徴 1.老化と関係が深い病気 ⇒ 骨粗鬆症など。 2.一人で多くの病気を持つことが多い。 3.症状が非典型的で容易に重症化する。合併症を起こしやすく、回復が遅い。 4.水・電解質の異常を来しやすい 5.精神症状を来しやすい 6.薬の副作用が出やすい B. 高齢者の特性 1)心理 2)知能 3)体力 4)感覚機能 5)運動 ⇒ 一般的には若い時代から行っていた運動や、それに近い運動がよいとされている。魚釣り、ゴルフ、テニス、ゲートボール、体操、散歩、ハイキング、水泳、庭いじりなど。適当な運動を長期間行うことによって、軽傷高血圧、糖尿病、肥満、高脂質血症などが改善されといわれている。 6) 性機能 ⇒ 60才〜80才の高齢者に関する性のあるアンケート実態調査によると、60才代で性欲は男では90%にみられ、女では50%にみられる。70才代や80才代では男で30%以上に性欲がある。欲求が全くない人は約10%で、ほとんどない人は26%程度である。これらの人々には、「健康状態が良くない、おっくうである、体に悪い、相手がいない」などの理由があるようだ。 女の場合には男に比較して消極的で、心理的欲求といえるようであるためか、男との交際を望む人は28%程度である。女では更年期を過ぎると性器官の退行性変化が生じ、男でも50歳を過ぎる頃から同様な変化が始まり、一般に加齢とともに進行する。 7)免疫機能の低下 覚えてほしい、次のC〜Eの言葉 C. QOL Quolity of life(生活の質)の向上 「QOLの改善」などと使われている。 一般的には、人間が日常生活上で必要とされている満足感、幸福感、安定感を規定している様々な要因の質のことを言う。この考え方は、福祉、医療、工学その他の諸科学が、自らの科学上、技術上の問題を見直し、調和のとれた質的に充足した生活を志向する契機となった。社会福祉や介護の「生活の場」でも、生活の諸環境や生活者自身の意識などを整えることで、暮らしの質をより良いものにするという視点が必要になってきている D. ADL Activities of daily living(日常生活動作) 「ADLの向上」などと使われる。 人間が毎日の生活を送るために必要な基本的な動作群のこと。具体的には、食事、睡眠、着脱衣、移動、洗面、入浴、排泄などのこと。障害者や高齢者について、ADLの各観点から能力評価を行うことにより、自立能力をを分析し、効率的なリハビリテーションを行うことを目的とする。ただし、現状では、評価基準について一定の標準的な尺度はなく、いくつかの尺度が用いられている。たとえば老人ホームへの入所判定基準に用いられているものとしては、歩行、排泄、食事、入浴、着脱衣の5項目について「自分でできる」「一部介助が必要」「全部介助が必要」の3段階の評価をしている。 E. Normalization(ノーマライゼーション) どのような障害を持つ人であっても特別視されることなく、社会的に生活する個人として、一般の社会に参加し、行動できるようにすべきであるという考え方。車椅子でも生活できるようにするための環境の改善や、障害に対する理解を求める啓発活動などは、この考え方の具体化である。デンマーク、スウェーデンなどの北欧の国々で発達した社会福祉の理念であり、1981年の国際障害者年のテーマ「完全参加と平等」を支える哲学として紹介されて以来、我が国においても浸透、定着しつつある F. 高齢者の健康にとって大切なこと 1.心の健康 2.体の健康 3.家族の健康 1.心の健康 @ 趣味を持つ ⇒ 向上心と生き甲斐をもって毎日を送ることができる。 趣味(囲碁、将棋、ゲートボール、編み物、華道、茶道など)うまくなりたい。人に勝ちたい。孫のためにチョッキを編んで着せたい。これらは向上心と生き甲斐につながる。 A 判断力 ⇒ 時代は変わっているのだから、現代流に考え直す。 ぜいたくばっかりして。もったいない。今の若いもんは・・・。自分が正しい。今の考え方は間違っている。このような頑固一徹な、自分の立場、自我の主張は大いに必要なことである。また、確かに経験豊かな分、正しいことも多い。しかし時代は変わっているのだから、現代流に考え直すあるいは考え直せる柔軟さをもってほしい。 B 議論の可能性 ⇒ 聞く耳を持つ。 昔は良かった。私の若いときには、など同じことばかりを言う。こちらのことを聞いてくれない。→ 当たり前のことで、70年も80年も生きてきたライフスタイルや考え方は一朝一夕に変わらない。しかし我々からすればついて行けない。だから家族の思いやりが必要になる。すなわち高齢者を尊敬する。高齢者を認める。馬鹿にしない。話を聞く。話し相手になることが大切である。 2.体の健康 快食・快便・快眠 良くかむこと。 ⇒ 歯の健康。 眠れないことを気にしない。 だめなら余りがんばりすぎないで、さっさと薬に頼った方がいい。 運動・入浴 歩くこと。動くこと。とにかくベッドで寝ていない ⇒ できる限り起きるようにする。テレビは見ていても少しも、脳の刺激にならない ⇒ 見ていない、ただ眺めているだけ。 3.家族の健康 高齢者を世話するためには、世話をする者が元気でなければならない。経済的に恵まれ、二世帯住宅などがあれば最高である。 高齢者本人の状態にもよるが、基本的には老人は生まれたばかりの赤ちゃんに回帰してゆくと考えておいたら間違いがない。赤ちゃんにおっぱいを飲ませ、離乳食を与え、ハイハイをし一人立ちしてゆくのと反対に、ちょうどビデオをプレイバックするが如く、徐々に、今まで一人でできていたことに、助けが必要となり、最後は離乳食(おかゆなど) → 飲み物を与えなければならない状態となる。これは誰しもが歩む道である。それらができるためには、介護する家族やまわりの者に、時間的余裕と物理的な余裕が必要であり、それに加えて元気でなければならない。親は赤ちゃんを育てるときに、文句を言いながら育てたでしょうか?私は誰の手も借りずに大きくなったのでしょうか?この基本に戻って感謝しながら、無事年寄りを見送っていこうではありませんか! G. リハビリテーション(QOLやADLを高めるために) ※理学療法士(PT Physical Therapist) 基本的動作〔いろいろなことができる)能力の回復をはかるため、治療体操、電気刺激、マッサージ、温熱その他の療法を施す ※作業療法士(OT Occupational Therapist) 応用的動作能力または社会適応能力の回復をはかるため、手芸、工芸その他の作業をできるように指導する。 H. 在宅ケア 在宅ケアとはケアが必要な人(高齢者、障害者、患者)に対する、その人の家庭での生活の継続を補償されるために提供されるサービスの総称。 在宅ケアの必要性 ⇒ 普通人と同じような一人前の生活を送れるように、社会的に支援していこうという考え方、すなわちノーマライゼーションの思想が世界的な潮流となっている。 プライマリーケア ヘルスケア ヘルスケア 生活環境や家族を含む生活状況をふまえ、生活指導を行って疾患の増悪や発生の予防、健康維持などを総合的に進めることメディカルケア。疾患を的確に把握し、適切な診療を行うとともに、必要に応じて専門医への委託を行うことや、専門医からの情報を診療に活用することをはじめ、慢性疾患の継続的治療やリハビリテーションについて主治医としての役割を果たすこと。 在宅サービスのシステム化の必要性 ⇒ 在宅ケアを要する人が保健・医療・福祉サービスをニーズに応じて総合的に受けられるような仕組み。 在宅ケアに含まれるサービス 1.保健サービス 訪問看護指導事業 機能訓練事業 2.医療サービス 往診 訪問診療 訪問看護 訪問リハビリテーション 老人在宅ケア 3.福祉サービス ホームサービス デイサービス ショートステイ 老人日常生活用具給付 食事サービス 入浴サービス 住宅改造サービス I. 老人の認知症 T.65歳以上の痴呆の出現率 6.9% 全国で126万人位と言われている U.診断基準 1.改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS−R) 2.国立精研式痴呆スクリーニング・テスト 3.N式精神機能検査 4.柄澤式老人知能の臨床的判定基準 5.痴呆老人の日常生活自立度判定基準 6.DSM−VーRによる痴呆の診断基準 7.アルツハイママー型痴呆の診断(NINCDS−ADRDA研究班の診断基準 8.痴呆と区別されるもの V.仮性痴呆 一見痴呆に見えるが痴呆ではなく、知的障害が可逆性(元に戻りうる)である。いわゆる「ぼけ」は社会生活に支障を来さない限り痴呆に含めない。薬剤(向精神薬、睡眠薬、抗不安薬)などの副作用もある。 物忘れ、理解力の低下、体験の一部を忘れている⇒痴呆に含めない 判断力が保たれているか、物忘れをしていることを自覚している⇒痴呆に含めない W.痴呆の原因はアルツハイマー型、脳血管性(動脈硬化性を含む)がほとんど アルツハイマー型 → 物忘れ、理解力の低下、思考の渋滞、気分の不安定などから始まり、徐々に健忘症状、人物誤認、作話、見当織障害、人格の崩壊へと進む。ときには被害妄想、猜疑的妄想も見られ、感情も易刺激状態、感情失禁、うつ状態なども生じるが、やがて次第に感情は鈍麻する。痴呆が進行すると、無為、無関心となり、終日ぼんやりとして過ごす症例もあれば、徘徊、弄便、夜間せん妄、妄想、幻覚を来す症例もある。そしてこれらの経過を通じて何事にも深刻味を欠き、病識がない(自分が病気だと自覚できない)のが特徴的といえる。さらにすすむと自分の名前や家族の名前も忘れる。 参考文献: 1)老人診療 医事出版社 長谷川恒雄 2)高齢者在宅ケアマニュアル 大阪府医師会 3)老年期診療マニュアル 日本医師会 4)服薬指導 高齢者編 医薬ジャーナル 平井俊策他 |
Started on 20th. July 1997 and last modified on ![]() |