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       5作目、こぶとり爺さん(新解釈・昔話)

      むかし、2255年浪花の町に亀という男がいた。
     彼は親切な男と言う事で、町では有名であった。少し肥えていて右の頬にこぶし大のコブがあった。
     それについて、町のハナタレがきどもにからかわれる事もあったが心の広いこの男は気にも留め
     なかった

      この町には、もう一人矢尻という爺さんもいた。こちらの方は意地悪な性格で皆に嫌われていた。
     この爺さんの方には左の頬にコブがあった。
      
      さてある日の事、亀爺さんは仕事に出かけていた。電気通信の関係の仕事で電柱に電線を張る
     仕事である。亀爺さんは働き者で一人黙々と電線を張り巡らしていた。そうするうちににわかに雨が
     降ってきた。亀爺さんはあわてて、雨宿りのできる大きな木の陰に隠れる事にした。

      しかし、雨はやむ様子も見せず降り続いている。仕方なしに木の陰で少し休む事にした。
     ところが最近徹夜の仕事が続いていた為、そのままウトウトと眠ってしまった。
     
      何時間立ったろうか、亀爺さんはなにやら遠くの方でにぎやかな声がするのを耳にした。
     『ほいやらほー、ほいやらほー。』
      何か楽しげな声だ。
      亀爺は声のする方に歩き出した。少し歩くとあるビルの一隅で灯りがもれる。声はその方からする
     らしい。

     『ほいやらほー、ほいやらほー。』
      ここだ、ここだ。亀爺は隙間からのぞいてみた。奥のほうではヤクザが十人ほど踊っていた。
     赤いヤクザ、青いヤクザ。黄色のヤクザ、ひと際大きな黒いヤクザ。それらが手を振り足を廻し
     酒を飲み、笑い踊りまくっていた。
     「ほーっ。これはなんとした事じゃ。」
 
     『次じゃ、次じゃ−。』
      一段と声を大きくして、ボスヤクザが踊りを若いもんにうながしている。
      もとより、唄と踊りの好きな亀爺さんはつい、恐さも忘れ踊りの輪に入っていった。
     「ほいやらほー、ほいやらほー。」

      始めは亀爺さんの突然の出現にビックリ仰天していたヤクザ達だったが、彼の踊りの面白さに
     一緒になって踊りだした。

     『コケコッコ−・・・・。』とは、さすがに2255年ではなかないか。
      とにかく朝になった。
     『しまった。朝だ警察が来る。』
      と言ったかどうか、とりあえずヤクザ屋さんたちは三々五々どこかへ消えていった。
     終わり。ん?何で終わりなの?鬼・・・いや、ヤクザ屋さんたちに亀爺さんのコブを取ってもらうん
    じゃあないの?終わり?何で?
     亀爺さんは、少し肥えていた。こ・ぶ・と・り、小太り爺さん?

       この件に関しての、抗議は断固受付ません。

       5作目、こぶとり爺さん終わり
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