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2作目、ドアをあけると
1項目
久しぶりに友人と飲む機会があった。
1人は同業者の絵馬と言う男で、もう1人は仲間の町野である。大阪の難波の駅で待ち合わせをして
南のある小料理屋で飲む事にした。時間はPM6:00ぐらいだったろうか。
それから飲み始め、小一時間が立っていた。他愛の無い話で盛り上がって矢尻は上機嫌である。
飲む時はあまり、あてを食べる方ではなく、好きな物を取りまず、ビールを一本飲んでそのあと、焼酎の
水割りを結構早いペースで、あおるように飲む。
最も、いつも家では早く寝る方なので、あまり深酒と言う事はしない。飲めば陽気な方なので飲み友達も
割と多いと思っている。町野は殆どアルコールは飲まないが、機嫌よくニコニコとしながら話し相手になって
くれる。
「ごめん、ちょっとトイレ。」
私は二人に声をかけて席を立った。少し足がふら付いたが酔っていると言うほどではない。
(えーと、確かトイレはこの通路の右へいったところだったか。)
あった、あった。
小用を足し手を洗って、トイレのドアを開けた。そのとき気のせいか、何か外の空気が違っているような
気がしたが、気に止めずに席に戻った。
席にはちゃんと、元社長のえーと誰だっけ名前が出てこない。やむおえずDとする。Dが座っていた。
ん?何かおかしいような気が再びしたが、まあいいかと思い直しDの前に座った。Dはすでに出来上がっ
ているらしく、でこ、いや額を赤く染め機嫌がよさそうであった。Dは以前江戸にいた事もあり、くせのある
標準語でしゃべるのが特徴だ。おかげで矢尻も妙な日本語を話すようになっている。
しばらく話をしていたがまた、トイレにいきたくなった。
再びトイレに立った矢尻だが、さすがに今度は得意の千鳥足になってきている。トイレの鏡で顔をみると、
Dに負けずに真っ赤かだった。
(今日は少し飲みすぎかな?もうすでに8杯は飲んでいるはずだ。)
年に似合わず茶髪に染めた、頭をなでつけトイレのドアを開けた。すると今度はドアの外はいきなり
カウンターになっていた。いや始めからカウンターだったかもしれない。
脇の隣に座りながら、この少し感じる違和感の正体は、なんであろうかとぼんやりと考えていた。
「だからね、脇さんがホームページで書いているある居酒屋にてという小説ね。」
段々とろれつが廻らなくなってきている。
「なかなか面白いよ。」
と、おもしろいよというところにアクセントをつけ、江戸奈良弁で話す矢尻であった。その内、脇が矢尻
の髪の毛のほうに目をちらちらとやり始めた。
(おっ、最近年で白髪が増えてきた脇さんは、私の茶髪の美しい髪がうらやましく思い、見ているのだな。)
(ところで私は、なぜ今日脇さんと飲んでいるのだろうか。確か始めは違う人間と飲んでいたような気が
するのだが。それも何年か前の事のような。)
またトイレに行きたくなった。鼻歌を歌いながら脇に声をかけトイレに入った。
手を洗いながら、急に眠くなってきた。もうそろそろ帰るか、明日も仕事だ。
ドアを開け、外にでた。そこは自分の家だった。女房が私の顔をみてつぶやいた。
「あなた、髪の毛真っ白よ!!。」
2作目、ドアを開けると、おわり
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