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3項目「まだわからへんのかなー。」
「レンターなんだ。一日7,500円もするんだぞ。傷でもつけたら・・・」
私はそこにいた自衛隊員の一人に思わずかみついた。その男はゆっくりと私の方に振り返った。冷たい
いうつろな目で私を見ると、先ほどの男たちのように黙ったまま、銃口をこちらに向けた。
冗談じゃない、7,500円ぐらいで命を取られてはたまらない。私はもう一度きた方向に逃げ出した。
、
「畜生、どうなっているんだ。」
さっきのところに戻っても、奴らは2人ほどいたんだ。どうする、もう周りでは発砲音も聞こえなくなった。
全員やられたのだろうか、先ほど私を助けてくれた河出さんは無事だろうか。頭から血を流していた脇
さんはあのままだろうか。性格は悪くあまり仲の良くなかった彼だが、捨てておくわけにはいかないだろう。
しかしこのままでいくと私も同じ目にあってしまう。脇さんは独身で親もいないからいいが、私には美人
の妻もいれば子供も孫もいるのだ。脇さんには申し訳ないが、このままブッシュに隠れて時がたつのを
待つ事にしよう。
このあたりなら見つからないだろうと、ブッシュの一番奥のところに身を潜めた。
静かに時間が過ぎてゆく。
少し冷静になってきた。(いったい何がおきているのだろうか?)
始めはビックリかと思っていたのだが、河出さんの様子を考えてみるとそうではなさそうだ。実際に
脇さんも殺されてしまった。確か梅田さんと森田さんのコンビも、仲良く倒れていたように思う。
そうだレシーバーだ。雲野さんも沖田さんも持っていたはずだ。チャンネルは確か8だった。
スイッチをいれ静かに呼び出してみた。誰かが聞いているだろう。
そのときいきなりレシーバーに声が飛び込んできた。
「こちらは25連隊第3中隊。応答願います。」
「ガーピー・・・・ザーッ」
何だ今のは?
「ザーッ・・・」
レシーバもだめか、とするともうどうする事も。
そうだ、やはり脇さんの死体をとりもどしておこう。それが友人に対する、せめてもの行いというものだろう。
私はこっそりと、潜んでいたブッシュから抜け出して、脇さんが倒れていたところに向かって這うように
進んでいった。(確かあのあたりに、脇さんともう一人の男が・・・)
そこには一面、血痕と人を引きずった後が二筋。
もう疑いようがない、これは本当のことなんだ。しかしなぜ自衛隊が私達を?何ヶ月か前にフィールド
を探していた時に、確か脇さんの家の近くに駐屯している、自衛隊の周りを何回も廻ったことがあったけ。
あれかそのときに何か、見てはいけないものを見てしまったのかも知れない。それともこのようなゲームで
遊んでいる私達が目障りになってきたのか。
どちらにしても殺されるほどの事はしていないはずだ。
「なぜなんだ・・・。」
マスク越しに矢尻の目から大粒の涙が。ん?何か引っかかる事が。何だろう、確かに何かが。
あれはどこだったか、車の側にいた10人の自衛隊の・・・
何が引っかかるのか、一番端にいた隊員だ。まてよ彼だけSWАTの制服を着ていなかったか?
その頃、駐車場のところでは、今日参加していないはずの舟出と亀山が、脇と一緒に雑談をしていた。
「矢尻さん、まだドッキリってわからへんのかなー。」
3項目「まだわからへんのかな」
1作目「実弾は撃ちたいが」 終わり
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