19作目、妖怪大戦争
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          2項目、一匹目・アルエロマン

      「チッ、このままではまずい」
       対妖怪用装備もしていないし、武器もこいつでは効き目がなさそうだ。盛山はとりあえずこの場
      から身をかわす事にした。おでん屋の親父の事も気に掛かるが、やつらは一般市民にはよほどの
      事がない限り手を出さないだろう。
       盛山はチーフズを握り締めながら、駆け出した。

      「ヒョホホホ、逃げられないわよ」
       アルエロマンは右手を空に向かって突き上げ
      「メビュウスの環」
       と叫んだ。
       そのとたんあたり一面に、奇妙なエロい光が輝いた。そして空間がゆがみ始めた

       その頃、盛山はアルエロマンより2kmも離れたところまで走ってきていた。
      「この辺までくればOkだろう。くそっ妖怪め、今度あうときは・・・」
       盛山はあたりを見回しながら、銃を握った手で額の汗をぬぐった。

      「ヒョホホホ、無駄だといったでしょう」
       いきなり盛山の真後ろから、声がした。
       驚いて盛山は後ろを振り返った。そこにはアルエロマンが立っていた。
       その横には、驚いた事におでん屋の主人も腰を抜かしたかっこうで、そのままの場所にいた。
      「これは、どうしたことだ。前のままの場所から変わっていないじゃないか」
      「あの世で先に待ってて、すぐに脇も送ってあげるから」
      「わ、脇警視?」
      「警視が目的なのか」
      「そうよ、奴を周りから散々苦しめて最後に殺すのよ。アルエロ」
       アルエロマンの左右の手にはナイフが数十本、光っていた。
      「貴方は、今ここで死ぬのよ」
       アルエロマンの両手から一斉にナイフが、盛山をめがけて飛んだ。
      「ぐっ」
       避けるまもなく、盛山の体にナイフがつきささった

      「け、警視殿・・・・・・」
       薄れ行く、意識の中で盛山は遠くでサイレンの音が鳴るのを感じた。
      「ケキョ、邪魔が入りそうですわね。アルエロ」
       紫色のマントのすそを翻しながら、小刻みに震える手をかざし、アルエロマンはその場を立ち去
      ろうとした。その時である、彼の前にゆっくりと一人の男が立ちふさがった。
       七色に輝く光と供にその男は表われた。愛の求道師、夢を運ぶ光の戦士、レインボーマンである。
      七色仮面ではありませんよ。ところで、再三申し上げますがこの辺の表現の差の事でのクレーム
      等は一切、受け付けませんのでよろしくお願いしますだ。

      「むっ?レインボーマンじゃあありませんか。段取りがち、違う」
       アルエロマンは震える右手を上げ
      「メ、メビュ・・・・・」
       と言いかけたが
      「アルエロマン、私にはその技は効かない」
      「な、なんですと?う、うぐっ・・・・・・」

       数分の後、盛山は救急車の隊員に担架で担がれている自分に気づいた。
      「う、うむっ」
       起き上がろうとしたが、そばに一人の男がいて彼を静止した。
      「静かにしていろ、盛山」
      「わ、脇警視?」
      「もう少しで致命傷になる所だったんだぞ」
      「や、奴は。アルエロマンは」
      「心配するな、奴はもう動けまい」

       彼らから少し離れた所に、アルエロマン・・・いやもうアルコールが切れて元の人間に戻った、
      サラリーマン鮒出圧香増(あつかまし)が倒れていた。
    
       そしてその場から1kmほど離れた、高圧の塔の最上部に二匹の妖怪がたっていた。
      「ちっ、鮒出の奴め。だらしのない奴やわー。飲みようがたらへんねん、瓶ちゃん、次は自分の番
      やで」
      「わかりまつた、ぼくやりまつ」
       カメレオンのマスクをつけた、アドバルーンのようなカメデオマの目が光った。(光れへん、光れ
      へん)

         2項目、終わり
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