14作目、ヒールバトル
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     1項目、

      「私が闇の低脳、いや帝王だ」
       宝石『ホッホ』の強奪に成功した怪盗カメデオマはアジトで1人、祝杯をあげていた。
      (この世の中に私より上の悪のヒーローはおるまい)
       この日、朝より何度同じ言葉を叫んできた事か。
      (私が一番なのだ)
       だがカメデオマの心の中には、一抹の寂しさが漂っていた。それは誰もともに祝ってくれないこ
      とだ。
      (私は一番、肥大。ち、違う偉大なのだ)
       名前のカメデオマから別名カメレオマンといわれているこの男は、虚栄心の塊でもあるのだ。
      その上目立ちやがり屋でもある。
       得意技は変装とボンバー、爆弾である。
      (どうかしてスポーツ新聞の表紙を、飾る事はできまいか)
      (エアーガンでも改造して猫でも撃つか、いや猫はたたるというから犬でも・・・いやいや、犬は
      今年の干支ではあるまいか。それはまずい)
       といろいろ考えていたが、ふと何か閃(ひらめ)いたらしい。

       2、3日経ったある日、浪花の街の空に大気球が浮かんだ。ライトブルーで空の色に溶け込み
      そうな美しい色の、1人用の飛行船である。横には怪盗カメデオマ参上、と大きく描かれていた。
      (まさか警察も、市民の見ている前で撃ち落しはできまい。夜になれば闇に乗じて逃げおおせれ
      るさ)
       と、たかをくくっていた。
       下では大勢の野次馬と、脇署長率いる高井氏警察の面々が、気球を見上げて騒いでいた。
      「船出くん、ジエットヘリの出動要請はすんだかね」
      「はっ、もうすぐ発進するとの連絡が」
      「くそっ、カメデオンの奴め。我々をなめおって」

       その内に警察のジエットヘリが、爆音を轟かせて飛んできた。見る見るうちにカメデオマの気球に
      近づいていく。
       カメデオマはそちらの方を、食い入るように見つめていたが、
      (ふん、何も出来やせんさ)
       大胆不敵にニヤリと笑いながらタバコを取り出し、口にくわえた。腰のポシエットにはいろんな
      火薬、爆弾が収められている。
      (いざとなったらこれで叩き落してやる)

       そのとき、ジエットヘリの操縦席の男の顔が視界に入った。
      (うん?)
       操縦席の男が笑ったようにみえた。その男は銀髪の髪をなびかせていた。
      (奴は!)
       その男はまぎれもなく、宿敵のウラシマンであった。
       ウラシマンはこの日TVを見ていて、カメデオマのことをしり、
      (負けては居れん)
       と思い急いで、奈良のアジトを飛び出してきたのだ。
      「署長、あのジエットヘリに乗っているのはウラシマンです」
       下界では双眼鏡を携えた警察官が、脇に大声で叫んでいた。
      「何、ややこしい時にややこしい奴が現われおって」

       突然カメデオマの気球と、ウラシマンのジエットヘリが同時に消えた。ウラシマン得意の『とき』
      攻撃だ。時間を操作して空間を移動するのだ。

        14作目、終わり
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        今回は落ちがありません。すみません。