その18、新たなる闘い・野望
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時は移る。
激動の時代から混沌の時代へ。
そして新たなる闘いの場へ。
内部抗争が絶えなかった花丸一家も昨年の豊潤会議により、争いも終わり一時(いっとき)
の平穏な時間をむかえていた。坂虎組との一大抗争も減少の一途をたどり、七陸暗殺に失敗し
た緒間毛一派らの逃走・撤退により終末を迎えつつあった。
坂虎組に鞍替えを企んでいた若頭の小髯も、豊潤会議で衆議一致の結果、三代目におされ
それを承諾して、表面は補佐グループとの関係も修復されることとなった。
しかし、一見平和に見えた『とある居酒屋』の周りにも新たな火種がくすぶリ始めようとしていた。
七陸チルドレンと呼ばれていた、三井墨友興業の若頭那賀とその補佐たちと流れ板、平河が
裏で合体したと言う噂が流れたのは、今年も松が取れるか取れないかと言う雪の舞い散る寒い
日であった。
それからの彼らの動きは、はやかった。
とある日本海の沖あい。
元、花丸一家の二代目組長であった伊川剛三と、同じく元相談役の山路良平は互いの友人で
ある草部と石川との4人で舟釣りにきていた。相変わらず小物ねらいの彼らであったが、釣果は
まあまあである。4人とも上機嫌で1日を過ごしていた。
そこに野球帽を目深にかぶった、1人の若い男が別の釣り舟で近づいていった。
その男の名は、中田久。三井墨友興業・若頭補佐の1人である。次期若頭の噂もあるほどの
いけいけの戦闘派である。中田の乗った釣り船は静かに近づいて行き、腰にさしてあるベレッタ
を取り出し、伊川と山路に向かって24mmの弾を続けて送り込んだ。ふぃを突かれた2人は海に
落ち魚にかじられともに軽傷、ヒットに成功した中田は静かにその場を去った。
同じ頃、今は貿易商を営んでいる短五郎は、場所も同じ日本海の小浜に蟹を買い付けにきて
いた。蟹とジャンケンをして値段を決めていた短の、後から近づく2人連れの男達。短の後ろに寄
り添うように近づいていく。ジャンケン蟹に夢中で何も気づかない短。グーばかり出して勝ちをおさ
めていた。
轟然と火を噴くトカレフ。蟹を握り締め、その場に崩れ落ちる短。蟹にはさまれ指に軽症を負う。
ヒットマンは真丸亀(かめ)と、その若衆である若井修(しゅう)。
そして場所は遠く離れるが、北海道で隠居中の元かしら補佐の1人、三矢路。今は足を洗い
足湯温泉を経営している。その彼を狙い北海道に飛んだのは、流れ板平河である。平河の武器
は刺身包丁。寝込みを襲うも三矢路も激しく抵抗、隠し持ったエアガンを乱射。凄まじい闘いとな
った。しかし、年齢の差はいかんともしがたくエアガンを破壊された。平河は包丁を残し逃亡した。
江戸では相変わらず、女あさりの毎日を送る静かなるスー。黙って笑い人を斬ると野侠人仲間
で恐れられた植山元(もと)も、本部の目の届かない江戸では、そのキャラクターを最大限にいか
しH店を徘徊していた。彼を狙う影が忍びよっているとも知らず、今日も女のもとにいた。
狙っているのは森森たけし、やはり那賀の補佐を勤めている1人であった。
部屋に忍び込み、布団の上から狙撃。狙い違わず数少ない髪の毛にあたり、数本に被害。
植山は二度と立ち上がれないほどのダメージを心に受けた。
こうして花丸一家の外堀は埋めらつつあった。
残りは3人。
その18、終わり
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