七陸が「はなちゃん」に着いたときには、既に相談役の山路が来ていた。山路は一人でビールを飲んでいたが、七陸をみると手をふって笑顔で
迎えてくれた。
「おう、久しぶりやな」
山路は現役を退いてからは、伊川専属の相談役みたいになっていた。
「叔父さんも、久しぶりで。」
七陸が山路の横に座ろうとした時、組長の伊川が入ってきた。
「やっぱり七陸かい、後姿を見て誰やろうと思ったわ。」
珍しく上機嫌で伊川は、笑いながら入ってきた。
「組長もいまでしたか。」
七陸は山路の隣から席を一つ空け、伊川が席に座るのを待って腰を
おろした。
「おう。七陸もじゃんじゃん飲むまんかい。」
「はい、有難う御座います。」
「小髯はまだかいな?」
「はい、先ほど連絡がおましてもうすぐお見えになるかと。」
その声が終わらないうちに扉が開いて小髯が入ってきた。
「またせましたかいのー。」
例によってあたりを睥睨しながら、山路、伊川の後ろをとおり七陸の隣に
座った。
「これで、全員そろったわけやな。」
山路が、みんなの顔を順番にみながら七陸に確認した。
「はあ、顧問だけが入院中なんで。」
「それは聞いてる。ほんで話ちゅうのはなんやな。」
「はい、実は・・・・。」
そのあと、何がはなしあわれたのかは分らない。一時間後伊川は機嫌
良く、その場の分を皆支払い山路と一緒に帰っていった。
入れ違いに盛土がはいってきた。
「おー、ひさしぶりやのー。かしら、話はついたんかい。」
盛土は、先ほどまで伊川が座っていた席にすわりながら話だした。
「ん?どうなったんじゃい。」
そのとき、今まで黙っていた小髯が口を開いた。
「ちっ、七陸の手にまんまとのせられたわい。」
「というと?」
「とりあえず、親父とは手打ちじゃ。」
若頭・小髯