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とある居酒屋で・その3
今日は朝から変な夢をみた。
内容ははっきりとは覚えていないが、小説の戦国自衛隊に似ているような、何かそんな感じであった
と思う。そのせいで朝から頭がはっきりとしない。
おかげで仕事がうまくいかなかった。こういう日は気分治しに、あの居酒屋にいくにかぎる。
今度は2度目なので、すんなりとたどり着けた。暖簾をくぐると珍しく客はひとり、あの電話番の
若者だ。
何か親密そうに話をしている。(あまり関わらない方がいいだろう。)と、少し離れたところに腰を
おろした。美人ママさんはこちらに気づき、おしぼりを片手に
「ビールは何にします?」
と聞いてきた。
(おやおや、まだ常連扱いではないのか)そりゃそうだろうと思い、
「ドライ。」
といつものやつを注文した。
「魚は何があるのかな。」
「カレイ、シャケ、鯖の塩焼き・・・」
と首をかしげながら指をおった。
「それじゃあ、鯖の塩焼きを。」
そのやりとりを面白くなさそうに、聞いていた若者は持っていた、週刊誌を取り出し読み始めた。
今日は珍しくママさんは、私の相手をしてくれている。
「会社はこの近くですか?」
「いや、一駅向こうの泉大津から。」
「まあ、隣駅から」
と他愛もない話で時間が過ぎていく。今日は珍しく客は若者一人のままである。
しばらくするとそれまで、明るかった外が急に暗くなり雨が降り出した。
そして雷が・・・・光とともに、すさまじい音がゴロゴロと。
一瞬、店内が暗くなったと思ったのは私の錯覚か。
「それで、鉄砲はいつ撃ちにいくの。」
「うん、次の日曜日や。」
「40人ぐらい集まんねん。」
(て、鉄砲?やはり東京に攻め込むきか)びっくりして、電話番男の方を見るとなんと
若者の服が先ほどと変わっていた。上はいつものベストであるが、下のズボンは迷彩服である。
いつの間に着替えたのか、するとここは彼らのアジトなのだろうか。此処から戦闘にでていくのか。
あれ、よくみるとママさんの顔が変わっている、これはどうしたことだ。
美人に変わりはないのだが、めがねも掛けているしエプロンも違う。それよりも明らかに違うのは
やせているという事だ。いやこちらが普通か。どちらにしてもおかしい、ママさんもどきに声をかけようと
私は身を乗り出した。
その時、急に私の隣から手がカウンターに伸びた。一人の男が座っていた。
(いつのまに私の気づかないうちに。)
その男は何も言わずに、空になったコップを置いたまま黙っている。それを見たママさんもどきが
これも何も言わずに、焼酎をつぎ男の前に置いた。何だ、何だここは、どうなっているのか。新しい
兵隊を送る別れの杯の場か。そしてまた、新しい男が入ってきた。これはすぐに田舎の地回りと
わかる品のなさそうな男で、さすがに迷彩服は着ていないが、凶暴そうな顔つきである。
また続いて客が二人。この二人もやはり地回りっぽく、男と女のくみあわせである。先にきた男と
挨拶をかわしあっているが、よくみるとかなり年はいってるように思える。
「はらみとつらみ。」
何かのまじないか、新しくきた男がつぶやいた。
「しまちょうとあかせん。」
女がつぶやいた。
「生と。」
「すみません、しまちょうがないんですが。最近はいらないんですよ」
何、肉のことか、ここは焼肉屋なのか。居酒屋ではなかったのか。
((心配ですねー、この話落ちがあるんでしょうか。何か勢いで、書いてるようにおもえるのですが))
との神の声を無視して
よくみるとベスト迷彩服男も、特上ロースと特上バラをたべている。((そら痛風になるわー))
私もいつの間にか、並バラ肉をやいていた。しかし始めにきた男だけは冷奴を注文していた。
(常識のないやつだ、こんなやつがいるからここはもうかれへんねん)とななむらは思った。ん?
何か小説と現実がまじってないかい。
私は並バラ肉を焼きながら、店そのものが変わったのだと、やっと気がついた。
なるほど先ほどの雷が原因か、あの電話番ベスト迷彩服男が何かの因子なのか、そうに違いない。
。
すると私は織田信長なのか!(判った人だけ、うなづいてください)光秀は誰だ。
あたりがまた、暗くなってきた。雨もまた降り出した。遠くで雷の音がしている、それが段々と
近づいてきている。なんとか帰れそうだ。ママさんのところに。
その3、おわり
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