いよいよ休暇当日の朝。 休暇だというのに、クリスはいつもどおりに目覚め、支度をしサロンへと向かった。 そこにはいつもどおりサロメが待っているのだった。 「クリス様、おはようございます。」 「…なんでいつもの格好でサロンにいるんだ?」 「クリス様こそ」 休暇だというのについ鎧に身を包む二人はお互いを見ておかしいことに気づいたようである。 「ふふっ」 「参りましたな。」 自然と二人に笑みがこぼれる。 それはそれで実にほほえましいのだがそれではクリスの望みを叶えたことにはならない。 「う〜ん。休むといっても城にいるとつい職務のことを考えてしまうからな。」 「そうですな…どこか外にでも行きますか?」 「それもいいな」 「では支度なさいますか?」 「ああ。じゃあ半刻後に門の前で」 そんな会話が交わされて、仕事の事はを忘れて外出する運びとなった。 「では何処に参りましょうか?」 「そうだな…今日はいい天気だからヤザ平原でゆっくり話でも…する?」 「ええ、そうかと思って先ほど簡単に作ってきましたよ」 サロメは手にしたバスケットを軽く上げ、クリスに指し示した。 「あ、おべんとう。では今日は”ピクニック”だな!さあ行こう♪」 以外に幼いところのあるクリスである。 おべんとうを持って”ピクニック”というのがお気に召したようで 鼻歌交じりで馬を走らせた。 「……クリス様…早すぎます…」 よほどうれしいのかキャシィーの牧場で鍛えた成果を存分に発揮するクリスに 苦笑しながらも、あわてて後を追うサロメであった。 「風が気持ちいいな…。」 「ええ…。」 ヤザ平原の少し小高くなったところで馬をおり、二人は遠くに見えるブラス城を眺めていた。 「ずっと…この景色を、この国を守って行きたいな。」 「クリス様ならば必ずや。それに私も…いえ私達もついています。」 「ありがとう…」 いいにしろ悪いにしろ どこまでもゼクセンの騎士である二人であった。 そうこうしているうちに昼時になり、馬を休ませ、木陰で食事を取る運びとなった。 割に大きな木があったので木の幹を背もたれにし、横並びで座ることにする。 これではまるで恋人同士のシチュエーションである。 「こうやって座ってみると…な、なんだか恥ずかしいな」 「…お嫌、ですか?…それでしたら、」 心なし寂しげに問いかけ、立ち上がろうとするサロメである。 「あ、違うんだ!!その…恥ずかしいだけで…このままでいい」 サロメの気のせいか、うつむくクリスは頬を染めているようにも見えた。 「クリス様…」 「さ、さあ。お昼にしよう!ほらワインもあるぞ!」 「ええ。」 「ふぁ…こんなにゆっくりしていると眠くなって…」 空腹が満たされると今度は睡魔が襲ってきたようで、クリスは欠伸をかみ殺す。 「少し眠られますか?」 「ん…そうする……肩…かして…」 そういうとクリスはサロメの肩に寄りかかり… 「ク、クリス様!?」 「すぅ〜」 驚くサロメを尻目にすやすやと寝入ってしまうクリスであった。 最愛の女性がよりかかって無防備に眠っている状況である。 「……(これではこっちは眠れそうにない…かな)」 ため息混じりにサロメはそう一人ごちて 理性が崩壊しないことを祈りつつクリスの寝顔を見つめていた。 「う…ん…」 ゆっくりとクリスが目を開ける 「……あ〜、…そうか私寝ちゃって……」 徐々に思考回路が正常に作動し始める かくん 「!!?」 クリスが身を捩じらせようとしたときクリスの右肩にサロメの頭がずり落ちてきた 「ZZZ…」 「(サロメ!……ふふ…眠っているのか)」 どうやらサロメも睡魔には勝てなかったようである 「…しかし……ちょっとこの体勢は…」 クリスが目を覚まし体をずらした為 サロメはクリスの肩…というか胸の上に頭をおいているような、デンジャーな(笑)状態である でもサロメを起こすのは忍びないし…… しばしの思考の結果… クリスはそっとサロメの上半身を自らの腿の上に横たえた。 まあ、俗に言う膝枕というやつである。 「今日だけ。特別だ…」 数刻後…目を覚ましたサロメがこの状況に慌てふためいたことはいうまでもない。 |
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