「サロメ、今夜の夕食は何だ?」 ブラス城での勤めを終え、クリスは夕食の卓へとついた。 そういえば、今日はサロメがはりきって何かを作るとか言ってたっけ… 「ちらし寿司ですよ。」 一足早く仕事を終えていたサロメはトレイに食事をのせてやってきた。 「チラシズシ?」 聞いたことのないメニューであった。 「今日は異国では”ひな祭り”という記念日なんだそうですよ」 てきぱきと食卓の用意をしながらサロメが答える。 「”ヒナマツリ”には”チラシズシ”を食べるんだな。」 「ええ。女の子の成長を願う日だと聞いています。」 え……? …ちょっと待って、…? サロメの説明にクリスはひっかかるものがあった。 今日の食事は自分とサロメだけで… それなのにサロメは”女の子の成長を願う日”だと言うのだ。 「女の子って……私のことか?」 少し言葉に棘を含めてサロメに問いただす。 「これは、失礼でしたかな?」 「失礼も何も…私をいくつだと思っているんだ。」 「そうでしたな。 クリス様にお会いしたことが昨日のことのように思い起こされてつい…」 「まったく。いっつも子ども扱いだな。」 10歳の差にもどかしさを感じずにはいられないクリスであった。 そんなクリスの気持ちを悟ったのだろうか、サロメが口を開く 「クリス様はそれはもう立派な女性におなりです。」 そんなクリスだからこそ忠誠を誓ったというものである。 「サロメ…。」 サロメの言葉にクリスは胸が熱くなる。 「ですが、たまに見せられるその…幼いというか、なんとも可愛らしい仕草が…」 ついつい本音をぽろりとこぼすサロメである。 「か、可愛らしいって言うな!」 真っ赤になって否定するクリスである。 …まあ、そんなところが可愛らしいのだけれど… とはさすがに口に出せないサロメである。 「すいません。失言でしたな。」 「わ、わかればいいんだっ!」 「はい。わかっていますよ。 ではそろそろ食事にしましょうか?よいお酒も入手できましたから」 「ああ。そうだな。」 食事も終わり、慣れない日本酒のせいかクリスはすっかり酔いが回ったようで上機嫌である。 「なあ〜サロメー」 「な、なんですか?クリス様。」 ソファに並んで座るサロメにクリスはじゃれ付いている。 一方のサロメは困り顔で、たじたじある。 「わたしって大人のおんなだよな〜」 「そ、そ、そうですね」 「そうだよな〜〜うんうん。」 「え、ええ。」 「サロメがいっちばん分かってるもんなっ♪」 「…!?………」 サロメは言葉を失ってしまう。 ク、クリス様 それは、い…一体どういう意味でおっしゃっているのですか… じゃれ付くクリスをあやしながら うれしさもある反面日本酒を飲ませたことを後悔するサロメであった。 |
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