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うそかまことか



「クリス様。おはようございます」

いつものようにクリスの執務室にやってきたのはルイスである。

「おはよう。ルイス」

「クリス様今日は大雪ですよ!」

「ええっ!?今日から四月だろう!!??」

春だというのに何事だと、クリスは慌てて窓を開け、外の様子を確かめる。

窓の外には緑豊かな木々が広がり、あまつさえ小鳥のさえずりがひびきわたっている。

「なんだ雪など降っていないではないか」

「ふふ。今日はエイプリルフールですよ」

ルイスが嬉しそうに笑いかける。

「エイプリルフール。そうか…」

騙されたまま1日を過ごすのは面白くない。
クリスはしばらく考えをめぐらせる。

そして一つの結論にたどり着いたようである


”いつもいつも上手を取られているサロメをおどろかせてやろう♪”


「ふふ…♪」

クリスは楽しそうに作戦を練るのだった。







「うう……頭いたい…」

一方のサロンではボルスが頭を抱えて唸っていた。

「……昨日は飲みすぎですよボルス殿。今日は休まれてはいかがですか?」

サロメが心配そうに声をかける。
ゼクセン騎士団は4月1日付で人事異動が行われるのが慣例となっている。
そのため昨夜は親しい仲間内と送迎会と称し、皆で夜遅くまで、正確に言うと明け方近くまで飲み明かしたのだった。

「い、いえ…そういうわけには!」

ボルスがあわててその提案を拒む。

例年のように行われる送迎会もまた慣例になっており、翌日は特に職務を設けられていないのが常である。
そしてその夜には今度は歓迎会と称した宴が執り行われるのである。
当然、他の騎士達ははまだ休んでいる。

しかしクリスへの朝の挨拶をとムリに出勤してきたボルスなのである。
せっかく来たからにはせめて、クリスの顔を一目見てから休みたいのが心情であろう。


「クリス様がこられるにはもう少しありそうですからソファに横になってるとよろしかろう」

そんなボルスの心情を察してかサロメはボルスに命じた。

「うう…すいません……」

素直にその言葉に甘えるボルスであった。







「サロメ!!」

ばん!と扉を開け放つクリス。

「クリス様」

サロメが振り向く。
にこにこと笑顔を浮かべながらクリスがサロメのそばに歩み寄る。

「ボルスど…」

目の前のソファに横たわるボルスに声をかけようとするサロメをクリスの一言がさえぎる。

「サロメ♪あ・い・し・て・るv」

「は???」

とつぜんの発言にサロメは固まってしまう。

そして、その発言に驚いたのはサロメだけではなかった。


「な、な、…今なんて」

ソファからボルスが起き上がってくる。

「ボ、ボルス!!??」

まさかボルスがいたとは思ってもいないクリスは驚きの声をあげる。
クリスの位置からはソファの背もたれしか見えず、クリスはボルスの存在に気づかなかったのである。


”え…え…なんでボルスが??”


そしてクリスははたと気づく


”今の…聞いていた???”


「ボ、ボルスっ!!ち、違うんだっ!!こ、これはだなエイプリルフールでサロメをからかおうと!!
その…冗談でだな…」

真っ赤になり必死で弁明するクリス。
しかし、弁明すればするほどボルスの目にはそうはうつらない


「………」


ボルスは呆然となり言葉を失っている。


「な、なあ、ほらっ!!サ、サロメからも言ってくれ!!」

クリスは先ほどから固まっているサロメに助け舟を求める。

ふいにふられて、止まっていた思考回路を回転させ、サロメもあわてて付け加える。

「そ、そうですよボルス殿。クリス様のご冗談なのですから。」

「じょ、じょう…だん…ですか」

ようやくボルスが口を開く。

「ああ!そうだっ!!冗談だ!!」

拳を握り締めてクリスは力説する。

「そ…そう、でしたか」

釈然としない気持ちはあったもののボルスはようやく理解したようである。







「それでは失礼します。クリス様。」

「ああ。今日はゆっくり休むといい。明日からよろしく頼む」

「はい。」

朝から調子の悪かったボルスは先ほどの件で余計に頭痛が悪化したようで
早々に自室へと戻っていった。

「大丈夫だろうかボルス…。相当呑んだみたいだな。」

クリスは心配そうにボルスを見送る。


いや…あなたの発言がとどめをさしたのです。クリス様。


と、思ってはいても当然ながら言えないサロメである。



「しかしクリス様も冗談が過ぎますぞ。」

「すまない…たまにはおどろかせてやろうと思ってしまってつい…」

「まったく。言われる身にもなっていただきたい。」


”こっちはどれだけ驚いたか…”


「本気にしたか?」

したり顔のクリスである。

「しませんよ。」

きっぱりとそういったものの、本当は突然のクリスの言葉に心臓が跳ね上がったのが事実なのだが…


まあ、エイプリルフールであるから


これくらいの嘘は許されるかと思うサロメである。




「しかしさみしいものですな……」

「え?」

「”冗談”、”冗談”と連発されて…
私はこんなにクリス様のことを思っているのに…」

「え?…え?……」

クリスは目をぱちくりさせる。

「う、うそ……」

クリスの心拍数が急上昇する。


「さて…どうでしょうな?」

サロメは不適に笑う。

それを見て

「あ〜〜〜〜!!!!」

クリスは今日が何の日かを思い出し、悔しそうに声を上げた。



してやられたと憤慨するクリスに

「お互い様ですよ」

となだめながら…


最後の言葉は本当なんですがね…


そんなことを一人思うサロメであった。



エイプリルフールということで…こんなSSを書いてしまいました(^^;)
最近私の書くクリス様ギャグ化してるかも…
シリアスでかっこいいクリス様大好きなんですが…ど〜もネタに走っちゃうなあ(笑)
ま、まあ…笑って許してくださるとありがたいです。
4/1の日記書いていて思いつきで書いた突発SSです。



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