『プロフェッショナル』


 

「《宝探し屋》ってのは何を持ってしてプロとされるんだ?」
「また随分と急だね、友よ」
「そもそも泥棒と何が違うんだよ」
「失礼な。一緒にすんな」
「似たようなもんじゃねえか。遺跡や墓に忍び込んで《秘宝》を勝手に持って行くんだから」
「ちげーって。ちゃんと協会からの依頼だし」
「んじゃその協会ってのは窃盗集団の会社か」
「ちーがーう。宝探しってのはひとえにロマンな訳だよ。それでな」
「まあそれはどうでもいいんだが」
「聞けよ最後まで!」

ぎゃんぎゃんと吼える青年をひらひらと手を振ってあしらい。

「んで?《宝探し屋》ってのは、何を持ってしてプロとされるんだ?」

すっかり流されてしまった問いかけを再び持ちかける。

 

「それは俺の考えでいい訳?」
「少なくとも俺の知り合いで《宝探し屋》なんて酔狂なもんやってんのはお前だけなんだがな」
「あれ、俺褒められてる?」
「いや、ちっとも全く一ミリたりとも褒めてないから安心しろ」

む、と膨れた気配を感じたがさっくりと無視を決め込んだ。

 

「まあ、プロの《宝探し屋》の最低条件は、《秘宝》を探す喜びを知る事かな」
「可もなく不可もなくって感じの答えだな」
「うわ、《宝探し屋》でもない人に駄目出し喰らった。じゃあなんだよ。何が聞きたいんだよ」
「例えば、人を殺した事があるのかとか」
「あるよ」

即答。そして間。

 

「…………お前、もうちょっと歯に衣着せて話せよ」
「お前が聞きたいって言ったんじゃんか。ま、殺さずに済むなら殺さないよ」

俺ってば平和主義だしー。と、銃や爆薬を平気で扱う事の出来る青年はさらりと言った。

 

笑う目は、戦場を見た男のそれに近く。

「生命を絶つ事に躊躇いなんて持ってたら、あっという間に化け物の餌食だし」

 

今までこの《宝探し屋》は、幾つの生命を絶ってきたのだろうか。

そう考えると、ぞっとした。

こいつは、人間では既にないのかもしれない。

 

 

「それがプロってもんだよ」

 

笑う顔は、いつもと変わらぬ、無邪気なものであったけれども。