年賀葉書、歓迎します
……気になることがまず一つ。
「何なんですか、この残骸は」
「コレ? 天津甘栗」
「いや、それは見たらわかります。私が聞いているのは、この惨状です」問題があり過ぎる。
せっかくの炬燵の上に、バラバラと栗の皮があっては寛げない。「大丈夫だよ。後で掃除機で吸い取れば済むから」
「そうそう。ほら、霞ちゃんも入った、入った」
「まったく……あ、頼子ちゃん、そこのミカン取って」炬燵はいいねぇ。
冬の必需品だよ。……まぁ、さすがにこの時期だけは炬燵に半纏だねぇ。
さすがに寒いんだから、仕方ないよね。
いいじゃない、炬燵に潜り込んだって。「はい、ミカン」
「どうも」うむ。
日本の正月は炬燵にミカン。これで決まりだ。家には色々あって居辛くなってるから、本当にのんびり出来る。
正直、ホッとできたのは今年に入って、今日が初めてかな。部室のテレビを見ながら、時々ミカンを食べる。
これ、幸せなり。「あー、寒い、寒い」
そんな声と一緒に、部室のドアが開いた。
入って来た義久君は、雪まみれだった。「寒いや。あ、先輩、遅くなりました」
「いーよ、いーよ。どうせ、することないんだし」
「そうですか? はい、お神酒、持ってきましたよ」
「おぉ〜」思わず手を叩いている先輩二人。
この人達はザルだ。いや、阿左美部長はタガかもしれない。「じゃ、全員揃ったところで、初詣にでも行きますか」
「そうね。頼子ちゃん、炬燵の電気消して」
「はーい」さて、私も準備、準備。
今年も着物は着てない。
着るのは来年、成人式と決めているのだ。「さて、今年は何をお願いするの?」
「そうですねぇ……」そう言えば、どこに初詣に行くんだろう。
この近所には神社なんてないんだよね。「やっぱり、アマチュアからの脱皮ですね」
「うん。頼子ちゃん、頑張ろうね」
「はいッ」元気だねぇ、お二人さん。
それを優しげに見ている稜人先輩。
おまけに笑ってる義久君。「なんだかなぁ」
今年も一人寂しく過ごすのかな。
とりあえず、今年は良縁に恵まれますようにとも、お願いしてみるか。
<了>