Web拍手ログ10


過去にWeb拍手で公開していた小ネタたちです.
本編ネタばれもあるので,ご注意ください.


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ここから先は,10−8話の没ネタを
お楽しみください.


「落ちついたら,ときどきでいいですので,遊びに来てください.」
「うん.スミ君も元気でね.」
「ミユさんこそ,お気をつけて.ウィル先輩とはすぐに会えると思いますよ.先輩もあなたを探しているでしょうから.」
てゆーか,探していないわけがないよな.
むしろ今,俺がミユさんと会っていることを察して,怒っている気がする.
――本当にそんな気がする.(激汗)
ミユさんに関することで,先輩に不可能はないし.
国のひとつやふたつぐらい,平気で壊しそうだよな.
先輩も,ルアンさんも.
何だろう,寒気がする…….
背後に黒猫が立っているように,背中がぞわぞわする.
これは,はやくミユさんをウィル先輩のもとへ送らねば!
「それでは,ミユさん.さようなら.一刻もはやく王国の方へ行ってください!」
「スミ君,なんでそんなに急いで?」
「俺の身の安全と世界の平和のためです.」


「また,城から抜け出したのか?」
「今日は置手紙に行き先を書いたわ.禁足の森まで行きますって.」
「それでも,バウス殿下にしかられると思うなぁ.」
「大丈夫よ.スミと二人でいるから心配しないでって書いたから.でも城に帰ったら,一緒に謝ってね.」
「むしろ俺が殿下に殺されそうなんだけど.(激汗)」


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ここから先は,11−6話の没シーンを
お楽しみください.


「まるで王子様だねぇ.」
村長の感想に,みゆは心の中でのみ「彼は本物です.」と答えた.

村へ帰ると,まさに大騒ぎである.
すべての村人が,帰還したみゆたちを興味津々で囲む.
小さな村では,大事件だったらしい.
みゆは大勢の前で,事情を説明する羽目になった.
特に村人たちは,ライクシードがみゆを助けたくだりを聞きたがり,みゆを困らせた.
彼は通りがかりの他人であるという設定で,どのようなうそ話を作ればいいのやら.
みゆが多くを説明できないでいると,村人たちは勝手に話を補完していく.
ああだったにちがいない,こうだったにちがいないと.
あっという間に,シャーリーは良心のかけらもない冷酷な人物に,ライクシードは王族の血を引く流浪の旅人になる.
派手な立ち回りを演じて,みゆを劇的に救出したことになった.
剣の一振りで三人の大男を倒すスーパーマンだ.
「こうやって,うわさ話は事実から遠ざかっていくのですね.」
みゆがため息をつくと,ヘイテが楽しそうに笑う.
「あら,でも実際にとても素敵な方だったのでしょう?」
卑劣な悪人の手から村の娘を守った,正義の騎士ライクシード.
彼の名前は,大いなる脚色をされてカーツ村に長く残るだろう.

そして五日後,みゆは夜明け前に目を覚ました.
暖かな布団からはい出て,眼鏡をかける.


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ここから先は,11−17話のおまけをお楽しみください.


彼はじゅうたんの上に座って,針で繕いものをしている.
器用な手先で,みずからの衣服はもちろん,みゆのものまで修繕する.
今,ぬっているものは,みゆのスカートだ.
短かったすそを長くすると,次は刺しゅうを始める.
草と花の模様だ.
それらが終わると,次は文字をぬいつける.
「何をぬっているの?」
みゆはウィルの手もとをのぞきこんだ.
――彼女の名前は,みゆです.
彼女を拾ったら,王城の国王陛下のところまで届けてください.
「……迷子札みたいなんだけど.」
「そう?」
そして迷子センターが国王とは.
ウィルは一国の王を,相当便利に使っているようだ.
さらに彼は,ぬい続ける.
――ミユちゃんの持ち主は,元黒猫のウィルです.
「ウィル,こんな刺しゅうは必要ないのだけど.」
私は大人だし,とみゆは思う.
「そうだね.」
ウィルは,にっこりと笑った.
「僕が君の気配を見失うわけがないもの.」


「ウィルは,娼婦を抱いたことは一度もないの.」
エーヌは,柔らかい笑みを作った.
「あなたと出会ってからはもちろん,あなたと出会う前から.」
眼鏡の奥の瞳を見つめて,慎重にうそをつく.
みゆと出会う前,ウィルにはエーヌとの間に肉体関係があった.
しかし,みゆと出会ってからは,二人は逢瀬を重ねていない.
なので,ウィルは潔白である.
しかしエーヌは,彼には,一点のくもりもない幸せな恋愛をしてほしかった.
だから,いつわりを述べてでも,彼が不幸になるかもしれない要素は取り除く.
だがみゆは,エーヌの話を聞き流しているようだった.
どうやら彼女は,恋人の誠実さをまったく疑っていないらしい.
これは,失敗したのかもしれない.
笑顔を保ちながら,エーヌはあせった.
エーヌが話をすることによって,みゆは,恋人の浮気を疑うという負の気持ちを知ってしまった.
白雪のように無垢なみゆの心に,元娼婦が汚ない手で触れてしまったのだ.
エーヌがどう挽回すべきか考えていると,彼女は何かを思い出したように,黒の瞳を見開く.
無邪気に笑って,
「ウィルの女装は,かわいかったですよ.」
エーヌは思わず,飲んでいたお茶をむせた.


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ここから先は,11−18話のおまけをお楽しみください.


「セシリアは,もう十六才か.」
ライクシードは懐かしそうに,青の両目を細める.
「さぞかし美しくなっているだろう.」
「そうですね.」
みゆは同意した.
「セシリアには会う機会はなかったのですが,」
ライクシードのために,彼の家族の近況をくわしく聞けばよかった.
「スミ君とは仲よくやっているようですよ.」
「え? スミ君?」
まさか男? とライクシードの顔が険しくなる.
「あの子に悪い虫がついているのじゃ,」
物騒なことに,腰の剣に手が伸びる.
そう言えば,彼はスミのことをほとんど知らないのだったと,みゆが思い至った瞬間,
「誤解だよ,ライクシード.」
ウィルがにっこりとほほ笑んだ.
「誤解?」
ライクシードが,まゆをひそめる.
「うん,誤解.」
ウィルは完璧な笑顔だ.
「そうか,誤解か.」
ライクシードは,ほっとする.
ウィルに視線を送られて,みゆも愛想笑いを浮かべた.
スミのことは,絶対にライクシードには言えない.
彼は,想像以上にシスコンだったらしい.


しかし,ある程度,スミの援護射撃はしたい.
「でもセシリアほどの美少女ならば,すぐに恋人ができますよ.」
みゆは,にこにこと笑みを作った.
だが,失言だったらしい.
ライクシードの笑みが,あっという間にひきつる.
「確かにあの子はかわいいし,――世界で一番かわいくて,すべての男がセシリアに夢中になると思うが,」
みゆは笑顔を作ったままで,彼のシスコンぶりにドン引きした.
「恋人なんて,まだはやい.そんな目障りな男は,あと十年くらいはいらないな.」
再び,腰の剣に手が伸びる.
「死なない程度に留めておいてね.」
ウィルがにっこりと笑う.
「力加減が難しいな.」
ライクシードは笑った.


「君,何か知っているだろ?」
ライクシードはウィルにたずねた.
「知らないよ.」
ウィルの返事はそっけない.
「教えてくれ.」
ライクシードはねばる.
「やだ.」
ウィルは断る.
「君と私は,寝食をともにした仲じゃないか.」
「気持ち悪い言い方はやめてよ.」
ウィルは顔をしかめた.
二人の間に何があったのか,みゆは思い悩むのであった.


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ここから先は、第7話のおまけ「両手に花」をお楽しみください。


ルーファス「これは、いったいなんだーーーっ!?」
綾子「あ、あの、私たちは今日、初めて会ったの」
リヴァイラ「私は綾子さんに興味があって、手紙を送ったの」
綾子「手紙を受け取った私は、彼女を昼食に誘ったの」
リヴァイラ「最初は気まずかったけれど、話すうちに、私たちはお友だちになったの」
ルーファス「そうだったのか」
綾子「リヴァイラさんと仲直りしたし、社交界に出ても、私は大丈夫だよ」
リヴァイラ「私もお友だちも、綾子さんをいじめたりしないわ」
ルーファス「そうか。俺のせいで苦労をかける」
綾子「ううん。ルーファスと結婚するためだもの」
コンコンコン。
セーラ「食後の菓子を持って、……ででででで殿下!? なぜここに!?」
綾子「……」(やばい。うその苦手な人が現れた)


ルーファス「つまり、初めから裏で手を組んでいたのだな」
綾子「ごめんなさい!」
セーラ「申し訳ございません」
ルーファス「俺がいったいどれだけ悩んだと思っているんだ!?」
リヴァイラ「うふ、うふふふ」
綾子「リヴァイラ、どうしたの?」
リヴァイラ「おーほほほほほ! だまされる方が悪いのよ!」
ルーファス「何だってー!?」
リヴァイラ「綾子が城に戻ってきて、おかしいと思わなかったの?」
ルーファス「そ、それは、母上が迎えに行ったのだと」
リヴァイラ「王妃殿下がおひとりで、そんな大胆なことをなさるわけがないじゃない。あと、綾子が浴場に現れたときも、変だと感じなかったの?」
ルーファス「変、とは?」
リヴァイラ「異世界から来た綾子が、湯女なんて知るわけがないじゃない。誰かが入れ知恵したと、気づいてもいいはずよ。そしてその入れ知恵の犯人は、貞淑な王妃殿下ではありえないわ」
ルーファス「う……」
リヴァイラ「あなたは、だまされやすいのよ! おっほっほっほっほ!」
綾子「……」(ゲイルに負けず劣らず名探偵だ)
ルーファス「最初から、こうゆう性格だったんだな!」
リヴァイラ「悪い?」
ルーファス「俺の友人たちに言いふらしてやる!」
リヴァイラ「いいわよ。私も綾子にあのことを言うから」
ルーファス「あのこと?」
リヴァイラ「『綾子を忘れたことはなかった。どんな女を抱い』」
ルーファス「わー、わわわーーー! 黙れ! しゃべらないでくれ!」
綾子「えー、何? 気になる」
リヴァイラ「『綾子を忘れたことはなかった。どんな女を』」
ルーファス「お願いだ! 言わないでくれ! 俺も何も言わないから!」
リヴァイラ「分かったわ。取り引き成立ね」
ルーファス「くそっ」
綾子「……」(あとでこっそりとリヴァイラに教えてもらおっと)


ルーファス「とにかく俺は怒っているからな!」
綾子「ごめんなさいー」
リヴァイラ「干しブドウとクリームを、二枚のクッキーではさんだのね」
セーラ「本日の菓子は、シェフ自慢の一品です」
ルーファス「ずっと俺をだましていたんだな!」
綾子「ごめんなさいー」
リヴァイラ「ブドウの甘酸っぱさ、舌の上でとろけるクリーム、自己主張しすぎないクッキーの甘み」
セーラ「リヴァイラ様にほめてもらえると、調理場の者たちが喜びます」
ルーファス「もう女なんて信じない!」
綾子「ごめんなさいー」
リヴァイラ「すばらしい出来栄えだわ。どこの茶会に出しても、評判になるでしょう」
セーラ「ありがとうございます」
ルーファス「なんであいつは、ごく普通に菓子を食っているんだ?」
綾子「ごめんなさいー」
ルーファス「おい、とりあえず『ごめんなさい』と言えばいいと思っていないか?」
綾子「……」(ぎくっ)

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