Web拍手ログ


過去にWeb拍手で公開していた小ネタたちです.
本編ネタばれもあるので,ご注意ください.

***Web拍手ありがとう編***

夏休み勇者特論(ヒーロー特別論考) その一

「拍手ありがとうございました!」
健は愛想よくお礼を述べた.
「ありがとうございました.」
リルカは礼儀正しくお礼を述べた.

「お礼にリルカが歌います!」
健の発言にリルカはぎょっとした.
「何を言っているの? 歌わないわよ!」
すると健はわざとらしくため息を吐いた.
「仕方ないなぁ,」
そして漆黒の瞳をきらっと光らせて,
「それでは,不肖貝塚健,歌わせていただきます!」

自分が歌いたいだけなのでは,リルカは心の底から呆れた.
すると健がどこからともなく持ってきたマイクで歌いだす.
「命かけて,と〜,誓った空は〜,」
なんと勇者はとんでもないオンチだった!
「何にもぉ,変わってぇ,いなぁいけれどぉ〜,」
リルカは35の精神的ダメージを受けた!

「タケル! 歌わなくていいわよ!」
しかし勇者はのりのりだった.
「あのとき〜,同じ花を見て,美しいと言った二人の,」
しかも歌の趣味がだいぶ古かった.

「タケル,うるさい!」
どうしてここまで音程をはずしているくせに,大きな声で歌えるのか?
「心と,こぉころがぁ〜,今は〜,もう通わない,」
いい加減絶えられなくなってきて,リルカは叫んだ.
「オンチなんだから,もうやめて〜〜!!」

痛恨の一撃!
勇者は143の精神的ダメージを受けた!
「お,俺ってオンチだったの……?」
愕然とする健に向かって,リルカはこっくりと頷いた.

……勇者の一行は全滅した.

夏休み勇者特論(ヒーロー特別論考) その二

「拍手ありがとうございました!」
健は結構いいかげんに,お礼を述べた.
「ありがとうございました.」
リルカはいちいちわざわざ,丁寧にお礼を述べた.

「お礼にリルカが踊ります!」
健の発言にリルカはぎょっとした.
「何を言っているの? 踊らないわよ!」
すると健はわざとらしくため息を吐いた.
「仕方ないなぁ,」
そして漆黒の瞳をきらっと光らせて,
「それでは,不肖貝塚健,躍らせていただきます!」

勇者は不思議な踊りを踊った!
リルカは魔力を6奪われた!

「タケル! その変な踊りは何?」
へなへなと腰砕けになりながら,リルカは聞いた.
「やめてちょうだい!」
リルカは魔力を4奪われた!

「盆踊りだよ,リルカ.」
よいよいと踊りながら,健は答えた.
「俺,こう見えても町内会のアイドルだったんだぜ.」
リルカは魔力を5奪われた!
「たけちゃんが一番踊りがうまいって言われていたんだけど,」

リルカは力なく,座り込んでしまった.
「もしかして,倒れるほどに俺って踊りがうまい?」
うれしそうな顔をする勇者の問いにリルカはふるふると首を振った.
「違うから,やめて〜〜.」
そしてどうしてそんな勘違いができるの……!?

……勇者の一行は全滅した.

太陽は君のもの! その一

「拍手ありがとうございました!」
お日様スマイルで少年は笑った.
「ありがとうございました.」
うそつきスマイルで少女は笑った.

ふと少年は何か言いたそうに少女の横顔を見つめた.
少女がそれに気付いて,にこっと微笑む.
「どうしたの? マリ君.」

まぁ,いっかぁ.
少年は思った.
自分に対しては本当の笑顔を見せてくれているのなら…….

太陽は君のもの! その二

「拍手ありがとうございました!」
暖かい笑顔を見せて,少年は笑った.
「ありがとうございました.」
顔の表面だけで,少女は笑った.

「お礼に柔道の実演をします!」
少女の発言に少年はぎょっとした.
「まずは立ち技!」
すると少女は少年の胸倉をつかんで,足を引っ掛けて押し倒す.

どすーーーん!
少年は背中をしたたか打った.
少女を上に乗せたまま,少年は顔をしかめて言った.
「……アスカ,さすがに痛いよ.」
しかし少女は聞かずに,少年にぎゅっと抱きついてくる.
「次は寝技!」
「うわぁぁ!?」
真っ赤な顔になって,少年は必死に抵抗した…….

太陽は君のもの! その三

「拍手ありがとうございました!」
きらきらと輝く笑顔で少年は笑った.
「ありがとうございました.」
てらてらと照り返すような笑顔で,少女は笑った.

「お礼にバク転します!」
少女の発言に少年はぎょっとした.
「危ないよ,アスカ.」
しかし少女は完璧に乗り気だった.
「神原明日香,行きます!」
「行かなくていいってば!」

……本当にどこにも行かなくていいのに.
ぽんぽんと飛び跳ねる少女に対して,少年は思った…….

竜を探して

「拍手ありがとうございました!」
甘く微笑んで,サラはお礼を述べた.
しかし,
「あれ? セイ,どこへ行くの?」
暗い色調の赤毛の男は無言で立ち去った…….

「恋愛指南役」シリーズ×「相対的,絶対的評価の変動について」

「拍手ありがとうございました!」
楽しげに,兄は言った.
「ありがとうございました.」
妹の方は,少し緊張気味だ.

「そういえば,和美,」
兄はぼりぼりと頭を掻きながら,妹に聞いた.
「サッカー部のマネージャーになるってマジ?」
どうしてこんなのがもてるのかしら? 白い眼で妹は兄を見る.
「そうだけど……,」

「本気かよ!? まさかあの熊男のためじゃないだろうな!?」
「悪かったわね!」
図星を指されて,妹は真っ赤になった.
しかし反撃の材料を思い出して,すぐににやりと笑う.

「真美先輩って,すごくいい人よね?」
今度は兄が方が赤くなる番だ.
「か,関係無いだろ!?」
「ふ〜ん.」
いつも飄々としている兄が動揺するなど珍しい,妹のにやにや笑いは止まらない.

「しっかり者だけど,少し抜けているところもあって,かわいいよね〜?」
すると妹は,兄にごつんと額を叩かれた.
「あいつのかわいいところは,俺だけが知っていればいいんだよ!」
叩かれた額を押さえて,妹は再び赤くなった.
「何!? 今のくさい台詞は!?」

「まさかこんな調子で,真美先輩を口説いたの!?」
「違う! いや,聞くな! 聞くんじゃねぇ!」
なんて恥ずかしい兄なんだ!?
人の恋路はしっかりと邪魔しておきながら…….

「いいわよ,真美先輩に,兄貴の恋愛指南役は大変ですか? って聞くから.」
「やめてくれ〜.」
妹の台詞に,兄はへなへなと頭を抱えて座り込んだ.
「激にぶのあいつに苦労したのは俺の方だぞ…….」

***「夏休み勇者特論(ヒーロー特別論考)」予告編***

ラウティの初陣

暗い洞窟に入り,だんだんと暗さに目が慣れてくると,俄然ラウティは強気になってきた.
「た,たいした事ないじゃん! てゆうか,魔物なんか居ないし!」
「……それはどうかな?」
すると隣を歩く黒髪の大男が,にやっとラウティに笑いかけてきた.

「何? どうゆう,」
ラウティが男に問いかけようとした瞬間,
「うわぁあああ!?」
「か,囲まれているぞ!?」
兵士たちが口々に叫ぶ,いつの間にか彼らは魔族たちに囲まれていたのだ!

「そ,そんな……,」
ラウティはおろおろと周りを見回した.
暗い洞窟の中で魔物たちの緑の目が光る.
腰から剣を抜きさると,情けないことにその切っ先が震えた…….

兄の捜索

つとリルカは健に肩を抱かれた.
「その瞳は永遠,」
リルカが「え?」と思う間も無く,強引に口付ける.

街のど真ん中でキスをする恋人たちに,道行く人々が冷やかしの声をかける.
周囲の人々の注目を集めて,健はリルカの唇をむさぼった.
「な,何をするのよ!」
リルカが真っ赤になって怒ると,健はいたずらっぽく微笑んだ.
「いや,焼きもちやいてでてくるかなぁ,と思って.」
「出てくるわけがないでしょ!」
めちゃくちゃな恋人の理屈にリルカは呆れた.

軍隊の激突

「ひさびさに本隊とお目見えね.」
琥珀の瞳を好戦的に光らせて,リルカはつぶやいた.
「みんな,腕はなまってないかしら?」
すると彼女の周囲に立つ精悍な男たちが「まさか.」と笑う.
「そう,よかったわ…….」
一度瞳を伏せてから,リルカは彼女の倒すべき敵の軍隊をきっと睨みつけた.

「カストーニア王国軍,全軍出撃!」
男たちがおぉと歓声を上げて,魔族に向かって突撃を開始する.
諸国軍との間に戦闘を繰り広げる魔物たちの軍の横っ面に突入してゆく.
突入部隊の後ろの方で兵士たちに指示を下しながら,リルカは孤軍奮闘しているであろう健の姿を探した.

***「心の瞳」エピローグ編***

ガロード青年ver.

「最悪の形で決着がついたのね.」
エンデ王国王妃の漆黒の瞳に皮肉な色が浮かぶ.
その横で若き王は隣国の民のことを思い,痛そうなつらそうな顔をした.
「カイ帝国,……海から攻めてきたのだな?」

「はい,陛下.」
王の前で頭たれて,老人は答えた.
王が戦場で初陣を果たし,その存在を万人に知らしめたときからずっと仕えている老人だ.
側近の中の側近,カイジンである.

王は紫紺の瞳を伏せて,思考を巡らす.
しかしどんなに王が隣国の住民たちに同情しても,彼にはどうすることもできない.
彼にはまず第一に守らなくてはならないものが,彼の祖国があるのだ.
「ねぇ,ガロード,」
この国では珍しい漆黒の髪を揺らし,王妃はまっすぐに王の顔を見つめた.
「私に一つ,案があるわ.……今はまだ使えないけど.」

「竜を探して」に続く……

ガロード少年ver.

「私がいつもどれだけ心配していると思っているよ!?」
砦の中に少女の怒声が響き渡る.
「ガロード,戦術っていうものを分かっている!?」
少女はえらそうに腰に手を当てて,一つ年下の少年をにらみつけた.

異世界エンデ王国へ連れられてきて,約1年が過ぎようとしていた.
平凡な日本の中学生であった少女が,日々何をしているのかというと,
「指揮官自らが,敵陣に突っ込んでいくなんて!」
日本で蓄えた歴史の知識を活かしてのお説教である…….

「しかしミドリ,私が一人で行った方が早いだろう?」
少年は困惑した態で,しかし少女の言に反論した.
少女はぐっと押し黙る,確かに少年は強い,お世辞抜きで向かうところ敵無しの状態である.
しかし,
「……ガロード,私がみんなにこっそりとなんて言われているか知っている?」
少年はきょとんと紫紺の瞳を瞬かせた.
「第7騎士団の影の軍師!」

確かにそうかもしれない…….
今度は少年が押し黙る番だ.
少年が指揮するはずの第7騎士団は実質,少女の命令によって動いている.
「というわけで,言うことを聞いてもらうからね!」
するとぷっと笑い声が聞こえてくる.

少女と少年が目をやると,少年の副官であるカイジンが楽しそうに笑っていた.
そしてふと,真顔になって,
「ミドリ,3歩だけ下がって,もう少し殿下の近くに立ってくれないか?」
少女は意味がわからずに,老人の言うことにしたがった.
老人は嬉しそうに顔をほころばす.
「背が伸びましたね,殿下.」

老人の言葉に驚いて,少年と少女は目を合わす.
ぶつかり合う視線は驚くほど近くにあった.
「わ,」
少女は顔を赤らめて,少年の顔から目をそらし老人の方へ向いた.
「私をガロードのものさし代わりにしないでよ!」
少女のどなり声に少年の顔は赤くなり,老人はますます笑い出した…….

***「竜を探して」プロローグ編***

久しぶりに同じ中学の友人にあった.
同じ沿線の高校に通っているのに,電車の中で会うのは初めてだ.
「慶子(けいこ)ちゃん,彼氏できたの?」
サラの問いに,彼女は照れくさそうに頷く.
「いいなぁ〜.」
サラは露骨にうらやましそうな顔をした.

すると慶子はぷっと吹き出す.
「サラってばすごくもてるくせに.」
栗色の長い髪,そして左右で色の違う瞳.
電車に乗っている今でさえ,他校の男子生徒たちがちらちらと彼女の方を伺っている.
「そんなことよりも,私も彼氏が欲しい.」
男性陣の視線にはお構いなしに,サラはぼやいた.

「できれば優しくて,」
背が高くて,ハンサムで,頭も良くて,もちろんスポーツもできて,
「それからカラオケもうまくて,おしゃれでセンスが良くて,いっぱい遊びにも連れていってくれて,」
「サラ……,」
次々と出てくる要求に,慶子は多いに呆れた.
これでは理想が高すぎるというより,
「あんた,子供すぎ……,」
慶子ははぁ,と長いため息を吐いた.

***「太陽は君のもの!」第7-8章の日記編***

明日香

マリ君は今日も忙しそうだ.
それはマリ君の叔父であるサキルさんがなかなか見つからないからだ.
城の廊下で会ったときも,コウリと一緒に難しい顔をして話し合っていた.
お邪魔しちゃいけないと思って,私はくるっと回れ右をする.
「アスカ,」
うわっ,マリ君ってば目ざとい,
「おはよう.」
お願いだから,私なんかを見つけて,そんなに嬉しそうに微笑まないで欲しい.

私はサキルさんをむざむざ逃がしてしまったのだから…….

マリ

アスカは今日も,サイラと一緒に剣の稽古をしている.
「兄ちゃんは結婚にまだ反対しているけど,」
サイラはアスカのことを気に入ったようだ.
「俺は応援しているからな!」
と言って,楽しそうに笑う.
「この調子だと,近隣諸国で一番強い王妃様になると思うぜ!」
アスカは,私を王位に上げるために結婚してくれたのだ.

王妃……,アスカは私と結婚したままでいいのだろうか?

サイラ

陛下とアスカは今日も,一言もしゃべらなかったらしい.
「あのお二人のことはよく分からないよ.」
母ちゃんが俺に向かって嘆く.
「多分,大丈夫だと思うぜ.」
うん,俺はそう思う.

一緒には居なくても,視線は常に追いかけている.
お互いに遠慮しあっているだけだよ.
だってアスカが俺に剣を教わるのは陛下のためだろ?

***「太陽は君のもの!」没ネタ編***

外伝「病」

「陛下はその花がお好きですね.」
王城の庭番の男のせりふに,銀の髪の少年はにこっと微笑んで見せた.
小さな黄色の花,決して派手ではない地味な花だ.
ここ,ツティオ公国ではありふれている.

死んだ母が好きだったと言い,父がよく母の墓に供えた.
マリ自身も,この花が好きだ.
かすかに控えめに匂う甘い香り.

人を穏やかに,優しい気持ちにさせてくれる花だとマリは思う.
においもきつくないし,柔らかな色彩は目にも痛くない.
だから,これを少女に…….

第九章「旅の仲間」

「マリ君,……私達,新婚なのに,単身赴任をするつもり?」
少女は少年をじっと見つめて言った.
「タンシン?」
聞きなれない単語に,少年は首を傾げる.
少女はおもむろに,こつんと少年の額と自分の額をぶつけた.
そうして至近距離で少年の澄んだ青の瞳を覗きこむ.
「そりゃ,私はいいお嫁さんじゃないけど……,」
「ア,アスカ,……タ,タンシンって,」
少年は顔を真っ赤にして,問い返した.

漆黒の瞳に映る寂しげな光,それがいつも少年をうぬぼれさせているのかもしれない.
「マリ君,私を一人にしないで…….」
体温を感じるほどに近く,けれど容易には触れられない少女.
「一緒に居たいの,だから……,」
甘いささやきに,少年の心は折れそうになる.
「いや,でも,その……,」

第18章「届かぬ宝物」

カリンに背中を魔法で治療してもらった後で,明日香は自分の部屋へと戻った.
約束を守って,金の髪の少女は過去の傷跡について何も聞かないでくれた.
ただ何か言いたげに,美しい青の瞳を曇らせていたが…….

マリ君…….
部屋のドアをくぐった途端,少女は妙に焦った気持ちになった.
とたとたと居間のソファーまで駆けより,そしてその場で崩れ落ちる.
ソファーでは,銀の髪の少年が倒れこむようにして眠っていた.

バカだ,……私は.
安堵感か徒労感か,少女はぐったりとうなだれた.
マリ君がこのお城から居なくなるはずがないのに…….

……そう,居なくなるとしたら私の方だ.

この手で受け止める(外伝)

あ,……私,この瞬間が一番しあわせかもしれない.

吹き抜けのホールで,階下に銀の髪の少年の後ろ姿を見つけた.
叔父のアカムとともに,なにやら話し合っている.
明日香は2階から,その光景を眺めた.

この城で一緒に生まれ育ったいとこの少年.
銀の髪が柔らかな光を放つ.
国王となった,……私の,

ふと少女の視線に気づいて,叔父のアカムが顔を上げる.
青年の優しい微笑みに曖昧に応えていると,銀の髪の少年も振り向こうとする.
途端に明日香はその場から逃げ出した.

「あれ? 逃げた…….」
アカムは不思議そうに,ブルーグリーンの瞳を瞬かす.
少年の方は何があったのやらさっぱり分からない.
「誰か,居たのですか?」

……王様を嬉しそうに見つめる王妃様が居た.
青年は軽く笑んで,少年の銀の髪を撫でた.
「君に片想いしている女の子ってところかな……?」

恋に破れても(外伝)

「ブラッケ殿下など,2日に1回はカリン様に手紙を送ってくるでしょう.その他にもガトー国のナッツ様とか,そういえば王城の,」
「うるさい! コウリ!」
金の髪の少女は,幼馴染の青年をきっとにらむ.
「どうしてそんなに詳しいのよ!?」
「ヒロカ様に聞いたのですよ.」
亜麻色の髪の青年は楽しげに笑う.
「よりどりみどりじゃないですか? カリン様.」

するとカリンは少しだけ傷ついた顔をして,横を向いた.
「あの人たちは皆,私の顔が好きなだけだもの…….」
「確かに,……そうかもしれませんね.」
青年が答えると,少女ははぁとため息を吐いた.
「でもカリン様,あなたは男性を馬鹿にしていますよ.」
「馬鹿に?」
青年の意外な台詞に,少女はまじまじと青年を見つめる.
「確かにあなたの外見だけで言い寄っている方もいらっしゃるとは思いますが,」

そこまで言って,青年は口をつぐんだ.
これ以上は言えない…….
少女は青年をただまっすぐに見つめ,次の言葉を待っている.
綺麗に整った顔だち,黙っているとこの少女は飾り人形のように美しい.

けれど,この少女の魅力はそこには無い.
そしてそれを知っているのは,コウリ一人ではない.
真剣な顔で,少女に愛をささやく求婚者の男性たち.
彼らの本気の想いに少女は決して気づかない.

そして,
一生,気づいて欲しくないのかもしれない…….

「あなたの肖像画は高値で売れるらしいですよ.」
青年は苦笑して,言葉を継いだ.
「はぁ?」
脈絡の無くなった青年の話に,金の髪の少女は首を傾げた…….

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