日が昇る前の,薄暗い朝の公園.
住宅街の公園の中,一人の少年がたたずんでいた.

背中に大きなリュックを背負い,周りをきょろきょろと見回す.
こげ茶色に染めた髪の17才の少年だ.
あたりに人が居ないことを確認した後で,少年は服の中に隠してあった,首からかけているペンダントを取り出した.
半透明に白くにごった水晶がそこにはついている…….

これは世界を渡るためのアイテム.
ヒーローになるためのアイテム.

「我,カストーニアの名を継ぐ者として命じる,」
少年は低く小さく呪文を唱える.
「開け,異界の門!」
溢れんばかりの光が放出される!

昇る朝日よりも強く,そして周りの薄闇を駆逐する.
無重力感を感じて,そしてまぶしさに少年はぎゅっと目をつぶる.

毎年のことなのに,なかなか慣れない.
異世界へ行くときのこの感触には.

貝塚健,17歳.
普段は普通の高校生,そして,

”初めまして,勇者ワーデルの末裔よ…….”
薄桃色の髪,琥珀色の瞳の少女が微笑んだときに,健の運命は変わったのだ.

夏休みの間だけ,魔王を倒す勇者になる!


「夏休み勇者特論(ヒーロー特別論考)」


決め台詞があって,決めポーズがあって,必殺技がある.
勇者の条件,それは魔王を倒してお姫様を守ること!

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