毒りんごを食べてしまった白雪姫リルカは死んでしまいました.
小人アリアが死んだ姫のひつぎの前で泣いています.
そんなとき,森の中を王子健が通りかかりました.
「タケル〜,あんたが王子様役なの?」
アリアは健の顔をきっとにらみつけた.
「あったりまえじゃん,こんなおいしいポジションを誰かに譲るわけないだろ?」
と言って,健は寝たふりをするリルカの体を抱く.
「リルカ……,」
すると口付けを予測して,リルカはがちがちに緊張する.
初めてのキスじゃあるまいし……,健はぷっと軽く吹き出した.
恋人に口付けようとすると,健はアリアに肩を捕まれて止められる.
「何よ,そのすけべそうな顔は!」
「え?」
アリアの台詞に健の顔が赤くなる.
「やっぱり駄目,タケルは王子様失格!」
リルカの体を健の手から取り戻し,アリアは強く言った.
「私の目の前で,姫様にキスするなんて許せない!」
「いや,でも,だって,」
健は妙に慌てた.
許せないも何も……,すでも何度も口付けを交わしていたりするのだが.
しかし,まさかそんなことをアリアに向かっては言えない…….
「……リルカはキスしてもいいって思っているぜ.」
健はアリアの顔から視線をそらしつつ言った.
するとアリアはぶすっとすねた顔になる.
「……思ってないわよ,」
そうして律儀に寝たふりを続けるリルカに向かって問う.
「思ってないですよね,姫様!?」
こうなると健としても負けられない.
「キスしてもいいよな!? リルカ!」
……これはいったいどうすればいいのだ?
リルカはそっと琥珀色の瞳を開いた.
「俺のこと,好きだよな!?」
想像した以上に真剣な健の顔が眼の前にあり,リルカの顔がぼっと赤くなる.
その反応を自分の好き勝手に解釈して,健はリルカに抱きついた.
「俺も好きだぁ!」
「きゃぁ!?」
「姫様に何をするのよ!?」
ごい〜ん!
瞬間,なぜか舞台の上からたらいが降ってきて健の頭に命中した!
リルカに覆い被さったまま,健は伸びてしまう.
「な,何これ……?」
リルカとアリアはあっけにとられて,降ってきたたらいを見つめた.
「いいタイミングだろ!? アリア!」
舞台の上を見上げると,ファンとユーティが手を振っていた.
「はぁぁ……,」
アリアは呆れたように長いため息を吐いた.
「これ,捨てて帰りますか? 姫様.」
意識なく倒れている健の姿を指して訊ねる.
するとリルカは頬を染めて,俯いた.
「……ちゃんと持って帰る.」
結局,この二人は想いあっているのだ…….
アリアは呆れたように肩をすくめた.
「持って帰ってもいいですけど,お持ち帰りはされないようにしてくださいね.」
リルカは意味が分からずに,きょとんと幼馴染の顔を見返した…….
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