銀色の髪が,お日様のように輝いている.
優しい青の瞳が,お日様のように暖かい.
私をいつか,違う世界へと連れて行ってあげると言ってくれた…….


******マリ・ツティオ******

「彼女が私の花嫁だ!」
まるで最高級ホテルのロビーのような天上の高い広広とした部屋に,少年の声が響く.
「明日,正式に結婚の儀を行う.」
少年は周囲の人々を有無を言わせない瞳で見回した.

******神原明日香******

そしてその男の後ろに立つ他の男たちに向かって,少女は自分を励ますように声を張り上げた.
「県立八条堀高校2年,神原明日香! かかってきなさい!」
少女の漆黒の瞳が,戦いの高揚に燃え上がる.
少女を囲む男たちが,驚いた表情のまま腰の剣を無言で抜いた.

******コウリ・コーディ******

コウリは軽くため息を吐き,意識の無い少女の体を軽々と持ち上げた.
少女とあまり体格の変わらない少年ではこうはいかない.
「陛下,お願いですから,アスカのことは諦めてください.」
存亡の危機にあるこの小さな国を抱え,さらにこの精神の脆弱な彼女まで背負うつもりなのですか?

******サイラ・コーディ******

「……ったくぅ.」
亜麻色の髪をぼりぼりと掻いて,サイラは漆黒の髪の少女の腕を取った.
「陛下,おはよう.アスカ,今日俺当番なんだ,一緒に御者台に乗ろうぜ.」
そうして,戸惑う少女の腕をぐいぐいと引く.
「馬車の動かし方,教えてやるよ.」

******カリン・ツティオ******

「サイラ,うるさい!」
カリンはぎっと,サイラを睨みつけた.
「お〜,怖…….」
サイラは楽しげに王族の少女をからかう.
「陛下,止めてください.」
いいかげんたまりかねて,コウリがマリに言った.
「これを止めるのは,陛下のお役目ですよ……多分.」


ツティオ公国暦24年.
国王ジョーイの一人息子である王子マリは,異世界から花嫁を連れてきたのだ…….


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