桜の下で,おまけ


「えぇっと,……優しい人かなぁ?」
明日香先輩は妙に苦しい笑顔で言った.
「そ,そうですよね! 優しいって絶対必要ですよね!」
対する私の返事も,……裏返っているよ,コレ.

なんで,こんな会話をしているんだろう? 私ってば…….
「あ,あと,外見なんて,どんなのがいいですか?」
「外見?」
先輩は首を傾げる,……なんだか,すごくかわいらしいしぐさかも.
「やっぱり背は高くないと駄目ですよね!?」
だって明日香先輩,モデル体型だもん.
隣に立つ男性は,当然,長身でなくちゃ!

「いや,私は別に背が低くても……,」
先輩はほんのり頬を染めて,手を振った.
「そうですか!? じゃぁ,顔もあまりこだわらない感じですか?」
はぁ,根堀葉堀,私ってば何やっているの?
「……うーん,」
先輩は少し考え込んでから,
「銀の髪で青の瞳だったら,なんでもいい.」

「そ,そ,そうですか!?」
先輩,そんな美人な顔で微笑まないでください!
「先輩の好みのタイプって外人さんですか?」
並の男子なんかより,ずっとずっと美少年なんですから!
私の心臓を破裂させるつもりですか!?

「そうかもしれない.」
先輩は楽しそうにくすくすと笑った.
「銀の髪が太陽の光に輝いて,すごくキレイなの.」
ん? 先輩ってばもしかしてミーハー?
ハリウッドスターのファンなのかしら?

それとも,ミュージシャンとか?
「声は高いのと低いの,どっちがいいですか?」
うわ……,さぐっちゃっているよ,私.
「……どっちだろう?」
先輩の目はどこか遠く,懐かしむように.
「高いような気がするな…….」

……明日香先輩,誰のことについて言っているの?
銀の髪って,うちの高校じゃないですよね.
……てゆうか,そんな奴いたらすごく目立つし.

「沙耶ちゃん?」
実はひそかにアニメおたくで,2次元キャラとか……?
「どうしたの?」
銀髪碧眼って白人さんよねぇ……?
いわゆるプラチナブランドってやつ.

するといきなり,先輩に肩を抱かれた.
「ぶつかるわよ.」
目の前に電信柱,うわ,びっくり!
「大丈夫?」
横には,先輩の心配そうな顔のアップ.
「あっ,ありがとうございます.」
静まれ,静まれ,私の心臓!

「どういたしまして,」
ぽんと背を叩かれて,この人が男子だったら,確実に私,惚れているかも…….
「あ,そうだ!」
先輩はおもしろいことを思いついたように笑った.
「私の好みのタイプは,沙耶ちゃんみたいなかわいいタイプ!」

……き,効いたぁ.
私はへなへなと座り込む.
「須藤先生みたいに暖かくて,斉賀みたいに明るい人がいい.」
駄目だ,明日香先輩,天然の女たらしかも.
「沙耶ちゃん? 聞いている?」
勘弁してください,先輩.
口説かれているような気持ちになりますよ,本当に…….

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