「心の瞳」より
「じゃ,ガロード.私がんばるね.」
少女が笑って言うと,少年も笑って答えた.
「うん,がんばって.」
「戦争中は月の砂漠で走り回っていたから,足には自信があるの.」
すると少年は自信満々に言う少女に向かって心配そうな顔をした.
「でも,ミドリ,最近太っただろ?」
「はい!?」
正直,少女は耳を疑った.何を言うのだ,こいつは!?
「私,太った? 誰にもそんなこと言われたことないわよ.」
いきり立つ少女に向かって,少年は普通の顔をして普通の調子でとんでもないことを言った.
「あぁ,ミドリは着やせするから分からないだけだよ.」
真っ赤になって口をぱくぱくさせる少女の反応を見て,やっと少年は自分の失言に気付いたのであった…….
「竜を探して」より
「じゃ,セイ.私がんばるね.」
一生懸命に準備体操をするサラに対して,セイは無言だった.
彼にはそもそもなぜこんなわけの分からない企画に参加しなくてはならないのかが分からない.
そしてきっと彼女がビリであろうことも容易に想像がついた.
それともまさかここでも自分が彼女を抱き抱えて走らなくてはならないのだろうか?
「太陽は君のもの!」より
「じゃ,マリ君.私がんばるね.」
少女が笑って言うと,銀の髪の少年はぶすっとした顔で答えた.
「アスカはがんばらなくていいよ.」
そうして真顔で言い募る.
「君は何もしなくていいと,いつも言っているだろ?」
「あのねぇ,どれだけ私を甘やかすつもりなのよ.」
いいかげんいらいらして少女は少年に答えた.
「それに多分,私はマリ君より足速いわよ.」
すると少年はショックを受けたように見えた.
「陸上部に助っ人にいったことだってあるんだから.」
つと少女はまっすぐに少年の青の瞳を見つめてきた.
「マリ君,私の着ていたトレーニングウェアを捨てたでしょ?」
責められると思ったのか,目に見えて少年は狼狽しだす.
しかし少女はにこっと笑って答えた.
「いいのよ.体操服なんかなくても,」
あなたは私の太陽だから,
「絶対に誰にも負けるもんか!」
少女は胸の前でばしっと拳を打った.
結果,
一位明日香,二位水鳥,三位サラ.
そしてセイの予想通り,サラは途中でこけましたとさ…….
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