ロインの川を越えて

目次

  おまけ フェアナンドの恋人  

ミラ「フェアナンドは、『私と結婚すればいい。その結婚によって、君と君の家族はさまざまな利益を受けられる』と言って、女性を口説きそう」
フェアナンド「なんだ、それは? 私はそんな男ではない」
ミラ「じゃあ、どんな風に女性に言いよるの? 私は今まで、フェアナンドの恋人を見たことがない」
フェアナンド「そうだな。……今の私たちの状況を考えると、結婚した方がたがいにとって都合がよい。よって早急に結婚すべきだろう。また結婚式は、私の立場を考慮して、ある程度、華美なものになる。だが私はぜいたくを好まない、とかかな」
ミラ「フェアナンド……。もっと、その、……愛しているとか何とかはないの?」
フェアナンド「なぜ、かわいそうな者を見るような目で私を見る!?」

+++

ラウリン「フェアナンドに恋人がいない理由は、簡単だ」
ミラ「そうね。フェアナンドは、理性的というか頭でっかちというか、利益や不利益ばかり考えるというか」
ラウリン「 フ ェ ア ナ ン ド は シ ス コ ン だ 。いまだに腹が痛い」
リアム「実感のこもったセリフだな。あのときのフェアナンド王子は、鬼の形相だった」
ミラ「……」

+++

フェアナンド「ミラもラウリンも失礼だな」
ワルト「殿下の場合、『仕事が恋人』ですよね」
マイノ「いや、今のはやりは、『僕の恋人は、この国さ』でしょう。ぜひ愛馬に乗りながら、言ってください。もちろん白馬でお願いします」
ワルト「殿下の運転、……じゃなかった、乗馬テクニックを、シュプレー王国中の女性たちに見せつけてやりましょう。きっと、もてますよ」
フェアナンド「よく分からんが、君たちも失礼だな!」

+++


+++

おまけのおまけ

【シュプレー王国】

「ミラ」
シュプレー王国王女(長女)。18才。緑色の瞳、赤色のウェーブヘア。
しっかり者で、世話好き。ブラコン。

「フェアナンド」
シュプレー王国王子(長男)。ミラの兄。22才。緑色の瞳、赤色のウェーブヘア。
まじめで、優秀。働き者。シスコン。

「リーナ」
シュプレー王国王女(次女)。ミラの異母妹。16才。
軽率な行動をするわがまま娘。

「マイノ」
フェアナンド個人に忠誠を誓う、壮年の騎士。

「ワルト」
フェアナンド個人に忠誠を誓う、初老の騎士。前王の代から城にいる。


【アーレ王国】

「ラウリン」
アーレ王国王子(三男)。19才。紫色の瞳、銀色の長髪。
恋には一途で、うそはつけない性格。内気で、あがり症。

「リアム」
ラウリンの護衛騎士。兄のような存在。

「グレータ」
アーレ王国王妃。ラウリンの母。
何をどう言い繕っても、女傑。


【カペー王国】

「シャルル」
カペー王国王子(長男)。28才。
ある意味、影の主役。策士。愛妻家。

+++


+++

さらに、おまけ。
【もしも、おせっかいでうるさいリアムがラウリンの留学についていったら、こうなった】

ラウリン「今日もミラ王女はかわいかった。あんな妹がいるなんて、フェアナンドがシスコンになるのも分かる」
リアム「相変わらず進展していないのか?」
ラウリン「進展するわけがないだろ。相手は大国の王女様だ。見ているだけで、せいいっぱいだ」
リアム「見ているんじゃなくて、こそこそとのぞいているだけだろ。大国の王女様だろうが何だろうが、押して押して押しまくればいいじゃないか。ミラ王女は確実に、男に免疫がないぞ。男からの好意に鈍感そうだし、がんがん口説いて、さっさとベッドへ連れていけ」
ラウリン「な、なんてことを言うんだ」
リアム「なぜラウリンはそんなに弱気なんだ。きりっとした顔を作って『結婚してください。結婚が無理なら、せめて一晩くらい相手してください』と言えばいいじゃないか。ミラ王女は絶対に処女だぞ。異性と手をつないだことさえなさそうだ」
ラウリン「ひぃぃぃ!? リアム、黙れ。そして後ろを見るんだ」
リアム「うわっ、フェアナンド王子!?」
フェアナンド「さっきから君たちは、誰について話しているんだ?(激怒)」

+++

リアム「こんにちは、ミラ王女。今日もいい天気ですね。城の中を歩いているだけで、あなたに出会えるなんて俺は世界で一番、幸福な男です。今日もあなたは、凛として美しい。明日もあなたに会うために、城の中を歩きます」
ミラ「ありがとう、リアム。お世辞でもうれしいわ。ラウリン王子も、こんにちは」
ラウリン「こんにちは。……あ、あの! ふたりきりで話しませんか?」
ミラ「え?」
リアム「ラウリン、よく言った! ミラ王女、ぜひラウリンとふたりで城の中庭でも散歩してください。ラウリンは花が大好きなんです」
ラウリン「そうです。シュプレー王国の植物にも興味があります」
ミラ「分かりました。ラウリン王子は多趣味な方なのですね。わが城の庭を案内します」
ラウリン「ありがとうございます。俺は花も草も木も大好きです」(やったー、デートだ)
リアム「じゃ、俺は立ち去るから。しっかりやれよ、ラウリン。俺の好みの花は、赤い髪で緑の瞳とはっきり言うんだ」
ラウリン「リアム!? なんて露骨なことを言うんだ」
ミラ「赤い茎で、緑の花弁? そんな花、あったかしら?」
ラウリン「へ?」
ミラ「庭師を捕まえて、聞いてみます。ラウリン王子は、めずらしい花を見たいのですね」
ラウリン「え? ちが……」(ミラ王女は鈍感すぎないか。さすがブラコンの深窓の姫君……)

+++

もっと、おまけ。
【もしも、犬のビケットがラウリンの留学についていったら、こうなった】

ミラ「ラウリン王子、こんにちは」
ラウリン「こんにちは、ミラ王女」
ビケット「ワン」
ミラ「こんにちは、ビケット。――ラウリン王子、あなたの犬をなでてもいいですか?」
ラウリン「もちろんです」
ミラ「ビケット、かわいい〜、もふもふしている〜」(大喜び)
ラウリン「……」(あぁ、ミラ王女、かわいいなぁ)

+++

【まだまだおまけ(これが最後)】

【理想の別れ方】
ロインの川を越えて、妹は幸せになる。私はそれを、笑顔で見送るのだ。

【現実の別れ方】
ラウリン「フェアナンドと別れたくないよぉぉぉ」(泣)
フェアナンド「あぁ、私もさびしく思う」
ミラ「フェアナンド。アーレ王国の王都へ着いたら、手紙を出すわ」
フェアナンド「待っている。私もシュプレー王国の城へ戻ったら、手紙を書こう」
ラウリン「今まで、ありがとう。き、君がいたから、俺はがんばれた、うわぁぁん!」(号泣)
フェアナンド「こちらこそ、ありがとう。そろそろ泣きやめ、ラウリン」
ミラ「ラウリン、ハンカチよ。これで顔をふいて」
ラウリン「うえぇぇぇぇ」

リアム「……うちの王子がすみません」
ワルト「いえ。フェアナンド殿下は、頼られるのが好きなお方ですので」
ノラン「かさねがさね、フェアナンド王子に申し訳ないです……」
目次
Copyright (c) 2020 Mayuri Senyoshi All rights reserved.
 

-Powered by HTML DWARF-