正しいデートについての考察3


このショートショートは「Cafe Fayerie」様の「キャラで雑談BBS」に投稿しました.
ちなみに店のど真ん中でキスをしているご夫婦については,こちらのサイトでお探しください.キーワードは王子様と妄想と某映画です(笑).


真っ当な道から外れつつある数学教師,その名は一村 圭(いちむら けい).
馬鹿そうに見えて芯から馬鹿な女子高生,その名は藤原 壱架(ふじわら いちか).

二人は少女漫画定番の教師×生徒カップル.
一応,禁断の恋.


短くも儚い少女の時間は,惜しむべきである.
生き急ぐことなど無い,ましてや彼女は大事な恋人だ.

「だから,先生はブラックコーヒーを頼んでね!」
初めてのデートは,遠くの街の喫茶店で.
うきうきとはしゃぐ壱架の希望に沿った,定番のデートプラン.
「それでね,私が砂糖を入れてあげるの! 先生,先生! 何個がいい!?」
むしろ恥ずかしくなるぐらいに,おおはしゃぎである.
砂糖を入れたらブラックとは言えないが,……水を差すのはかわいそうだ.
「壱架,ここにあるのは角砂糖ではなく粉砂糖だが,」
「そんなぁ,ひどいぃ……,」

どうやら,角砂糖のある喫茶店を選ばなくてはならなかったようだ.
ショックを受けたらしい壱架は,意味無く粉砂糖の壷をスプーンでかき乱す.
「他の人の迷惑になるから辞めなさい,それで,壱架は何を注文するんだ?」
オーダー表を差し出すと,なぜか壱架はぽかんと口を開けて余所見中.
「どうした?」
視線を追いかけると,店のど真ん中では外国人のカップルが濃厚なキスをしている.
「ドライな奥方だねぇ.」
どこがだ!?
まるでハリウッド映画のような光景に,俺は唖然とする.
「人前用のキスだから.」
なんだ,そりゃ?
二人きり用があるのか,くっ,羨まし……,いやいや,駄目だ,この店は教育上,よろしくない!

「先生,先生!」
案の定,壱架は瞳を過剰にきらきらとさせている.
「わ,私も,したい!」
「却下! 壱架には10年早い!」
秘め事ができない壱架に,手など出せるはずがない.
「えぇ〜〜〜,やだよぉ,デートって言ったら,あーゆーのしないと駄目じゃない!」
「指で指すな! 指で! 失礼だぞ!」
立ち上がりかける恋人を慌てて制する.
「あれは大人だけがやることだ!」
お前の精神年齢は,小学生程度だろ!?

「16歳は大人だもん!」
憎たらしくも頬を膨らませる恋人.
これを愛らしいと感じてしまう俺は,ロリコン……?
「あれをしないとデートって言わないもん!」
はいはい,どんなデートをご所望なのやら…….
「なら,壱架,正しいデートをするためのレッスン1,」
頼むから,そう何度も何度も大声で,言わないでくれるとありがたい.
「先生ではなく,圭(けい)と呼んでくれ.」
染め上がる恋人の頬を視界の端に,俺はホットコーヒーとチョコレートパフェを頼んだ.

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