アラビアンナイトの一の夜

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  おまけ  

蓮と雅美

雅美「赤ちゃんは本当に元気で、おなかの中から、いっぱいけってくるんです」
蓮「ほぉ。胎動か」
雅美「課長もおなかに触ってみます? 赤ちゃんが動いているのが分かりますよ」
蓮「いいのか?」
雅美「いいですよぉ。おなかに触って、赤ちゃんに話しかけてください」
蓮「こんにちは、赤ちゃん。ママの上司の篠原課長でちゅよ〜」(にたにた、にやにや)
雅美「やっぱりやめてください。赤ちゃんが怖がります」


蓮と桃子

桃子「うちの娘が、篠原課長の背広姿の写真がほしいとうるさいのです」
蓮「写真? 何のために?」
桃子「どうやら課長に夢中になっているらしくて」
蓮「ふむ。娘さんはいくつだね?」
桃子「十一才です」
蓮「残念だ。私があと三十才くらい若ければ、恋人に立候補したのだが」
桃子「リーマン萌えで、受けとか攻めとかばっかりしゃべるのですよ」(ため息)
蓮「ちょっと待て。……私の写真は断じて渡すな」


千夜子と雅美と蓮

雅美「あれ? 多田さんは今日はお弁当?」
千夜子「はい。節約のために早起きして作りました」
雅美「えらいー! そしておいしそーっ」
千夜子「よかったら、どうぞ。おすそわけです」
雅美「きゃー、ありがとー。やーん、唐揚げがおいしー」
千夜子「ありがとうございます」
雅美「はっ、そうだ。――課長! 課長! 来てください」
蓮「なんだ?」
雅美「多田さんのお弁当を召し上がってください」
蓮「……? 多田さん、いいのか?」
千夜子「困ります。私の分がなくなります」
雅美「そんな! 多田さん、もっと積極的に押さなくちゃ」
千夜子「? 何をですか?」
雅美「『私はいいお嫁さんになれます』アピールをもっと!」
千夜子「ジェンダー差別ですね」
蓮「ジェンダー差別だな」
雅美「……」(案外、この二人は気が合うのね)


千夜子と雅美

雅美「課長って今、フリーらしいのよ」
千夜子「はぁ」
雅美「結婚を考えていた女性がいたけど、去年の年末に別れたそうよ」
千夜子「はぁ」
雅美「別れた理由は分からないけど、彼女が浮気したとか、彼女が天然な性格で課長が疲れたとか、いろいろうわさがあってね」
千夜子「あの、八木さん。私は上司のプライベートに興味がないのですが」
雅美「よって今はチャンスよ!」
千夜子「……。失礼ですが、八木さんは夫と不仲なのですか?」
雅美「え? なんで?」
千夜子「禁断の恋に踏み切るほど、課長は魅力的なのですか?」
雅美「そりゃ、魅力的よ! 課長は恋人としても結婚相手としてもパーフェクトだと思うわ」
千夜子「……出すぎたこととは思いますが、不倫はよくないです」
雅美「不倫? あー、大丈夫よ。課長はモテるけれど、浮気をするような不誠実な男性じゃないから」
千夜子「……」(どうしよう、会話がかみ合わない)

***

千夜子=シェーラザード=物語の語り部。千と一夜、王に物語を話し続け、最終的には王と幸せな生活を送る。

蓮=シンドバッド

雅美=ランプの精=主人であるアラジンの願いをかなえる。

桃子=シンドバッドの部下のうちのひとり

千夜子に嫌がらせをした女性たち=アリババの兄カシム=強欲なために、宝を手に入れられずに、すべてを失う。(アリババに奪われる)
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