魔術学院マイナーデ

戦場にて

月明かりの下，赤毛の兄が立っていた．
軍の宿営地から少し離れた荒野で，ただ一人で立っていた．
金の髪の少年は言葉を失くす．
昼間とはあまりに異なる兄の纏う空気に．

兄の大きな背中が，少年を，いや少年だけではない，すべてのものを拒絶していた．
この兄が，少年には決して見せない顔を持っていることは知っている．
弟としてかわいがられながらも，どこかで距離を感じていた．

愛しげに，青年は手に持っていた何かに口付ける．
深い赤の，明らかに女性のものである飾り紐に．

あの女性の長い髪に，きっとその赤は映えるのだろう．

少年はそっと踵を返して，宿営地の方へと戻った……．