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魔術学院マイナーデ

真夜中の内緒話

「ねぇ,サリナちゃんから見て,ライゼリートってどんな男の子?」
黒髪の少女リリーに訊ねられて,サリナは少し目を丸くした後で,頬をほんのりと染めた.
「ライムは,……すごく優しいよ.」
照れくさそうに赤い顔で,えへへと笑う.

夜,眠れないというリリーに,薄茶色の髪の少女は付き合っているのである.
明日にはマイナーデ学院へと帰りつく,長かった旅も今日で終わりだ.
「怒ってばかりだけど,それは,」
眠るライムとスーズから少し離れたところに腰掛けて,少女たちは小声で囁きあう.
「それは,……私のことを心配してくれているからだし,」
サリナはもじもじと,顔を膝に埋めた.

「いつから付き合っているの? 何年前から?」
好奇心で瞳を輝かせるリリーの質問に,少女は首をかしげた.
「……違うよ,王都に発つ前からだよ.」
眼鏡の奥の深緑の瞳が,なぜか少女に恋人の少年のことを思い起こさせる.
「あら? そんなに最近だったの.」
意外そうに,リーリアは瞳を瞬かせた.

「……ということは,ライゼリートはずっと片想いだったのね.」
するとサリナは慌てて手を振って,否定の意を示す.
「か,片想いは私の方!」
ずっと少年のことが好きだった.
マイナーデ学院に入学したときから,いつも変わらず側に居てくれる金の髪の少年のことが.
「多分,最初から一目ぼれだった.」
少年の存在が身近すぎて,なのに王子という身分のためにどこか遠くに感じて,なかなか自分の想いに気づくことができなかったけれど.

リーリアは楽しそうにくすくすと笑った.
しあわせな恋愛とは,まさにこのことをいうのだろう.
自分と国王の姿を見て育った息子が,人を愛せない人間になっても仕方が無いと思っていたのに.
「ありがとう,サリナちゃん.」
お礼を言われて,薄茶色の髪の少女は不思議そうな顔をした.
「これからもライゼリートのことをよろしくね.」
これは女同士の秘密話,少年には内緒の.
「で,」
唐突にリリーは,にやっと口の端を上げる.
実はここからが本題だったりする.
「ライゼリートとは,どこまでいってるの?」
暗闇の中でも分かる,真っ赤に染まる少女の顔にリリーはぷっと吹き出してしまった.
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