正しいデートについての考察


このショートショートは「Cafe Fayerie」様の「キャラで雑談BBS」に投稿しました.

香月@義理の姉で理系大学生「適切な恋人関係を築くには,ちゃんとした手順を踏んだデートをしなければならない.」
一樹@義理の弟でバスケ好き高校生「手順を踏んだデートですか?」(嫌な予感がしますよ,香月さん…….)
香月「そうだ,あらゆるパターンを想定したデートプランを練らなくてはならない.なおかつ縁起の悪い場所は避け,古典的な手法に則った,」
一樹「……つまりマニュアル通りのデートですね.」(よかった,案外まともで…….)

理系のために理論が先に立つ香月と,体育会系のために実践が先に立つ一樹.
二人は王道の一つ屋根の下,義理の姉弟カップル.

香月「実はすでに調査済みだ.これらが参考文献だが,いろいろ疑問点が残ってな,」
一樹「って,少女漫画じゃないですか!? しかも古いですよ.」(参考文献なら最新のものがいいんじゃないですか?)
香月「まずは定石どおりに喫茶店に入ったから,次は恋愛映画を観なくてはならない.」
一樹「はぁ…….」(一樹は呆れながら,ページをぱらぱらとめくった.)
香月「ここでさっそく問題点が出てくるのだが,今は恋愛映画はこの近所では上演していないのだ.最初から遠出を強いられるとは,デートとはなかなかに困難な試練だな.」
一樹「…….」(そんな真面目な顔で力説されても困ります.)
香月「映画館の中で一緒にポップコーンをつままなければ,次のステップには進めないというのに…….」

一樹「……あの,次のステップというのはいったい.」(いつもながら,香月さんの思考は僕には理解不能ですよ…….)
香月「あぁ,冬の海で追いかけっこを興じなければならない.しかし,ここでもまた問題点が出てくる.」
一樹「寒いから困る,とかですか?」(やはり裸足になって浜辺を走らなくてはならないのでしょうか? 僕はいいですが,香月さんは辞めた方が…….)
香月「違う! そんなものは本人たちのやる気と根性でどうにかなるから,些末なことだ!」
一樹「で,でもさすがにこの季節だと風邪をひくと思いますよ.」(香月さんだけは止めなくては.)

香月「レファレンス5bのP56を見てくれ.問題のシーンに付箋を貼っている.」
一樹「…….」(そんなことより,これらの漫画はいったい誰から借りたのでしょうか?)
香月「このシーンの背景で判明するのだが,ここまで広範囲に人の居ない海など,どう探せば良いのか.」
一樹「…….」(まだ古い少女漫画で良かったですよ…….最近の少女漫画は過激だと聞きますから.)
香月「しかも筆者は,この海は日本の関東地方だと主張しているのだ!」
一樹「…….」(いや,むしろ最近の方がよかったのじゃ……,だ,駄目だ,そんないきなりな展開は……!)
香月「これは事実に裏づけされた描写なのか? 筆者は何を根拠にして絵を描いて,……一樹,聞いているのか?」
一樹「は,はい!?」(な,なんでしょうか,香月さん.)

香月「これでは今日中に最終ステージにはたどり着けない.」
一樹「さ,最終って……,」(ま,まさか,ホテルですか……?)
香月「夜の公園で初めて手を繋がなくてはならないのに…….」
一樹「それは,……どう考えても無理ですよ,香月さん.」(もうそれ以上のことも済ませてしまったのに…….)
香月「あぁ,これもまた広範囲に人の居ない,」
一樹「家に帰りませんか? 香月さん.」(一樹はがたっと椅子から立ち上がった.)

香月「もう帰るのか?」
一樹「はい,途中で本屋に寄りましょう.」(参考文献は最新のものを揃えた方がいいですよ.)
香月「そうだな,あまりにも私の立てたデートプランは机上の空論すぎる.もっと現実に即した計画を立て直さなくては.」
一樹「僕が一緒に考えますよ.」(展開が早くて,香月さんでも読めるような漫画…….)
香月「おぉ,それはありがたい.なんせ母上の貸してくれた資料は理解できぬ点が多々あってな.」
一樹「静江さんに漫画を借りたのですか!?」(まじっすか!?)

香月「あぁ,そうだが…….どうしたんだ,一樹.」
一樹「僕は一生,静江さんには勝てないような気がします…….」(一樹は伝票を持って会計へと向かう.)
香月「だが,私が一番好きなのは一樹だぞ.」
一樹「……ありがとうございます.」(香月に追い越されて,伝票を取られる.)

一樹「おごってくれるお礼に,香月さんに新しい参考文献を用意しますね.」(一樹は恋人の肩を抱いて,小さくつぶやいた…….)

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