- about Rebecca Guay Illustrations -

《Enslaved Scout》
2004/2/16(Mon)
 illus
 Alliance Common1
 Creature - Goblin
 Casting Cost - 2R
 TEXT -
 2:Enslaved Scoutは、ターン終了時まで山渡りを得る。


about Constructed

 マジックの歴史も既に10年。それはカードデザインに関する試行錯誤の歴史でもあるわけです。
 その歴史の中には当然、「コスト」が同じなのに明らかに「能力」に差があるカード、というものが存在します。
 特に初期に発表されたカードたちには(「パワー9」を筆頭に)あまりにも強力なものが多く見られるわけですが、今回紹介するのは、その逆のパターン。
 最初が弱すぎたので、だんだん強くなっていくものも存在するわけで。

 マナコスト:2R
 クリーチャータイプ:ゴブリン
 P/T:2/2

 ・・・・・・の系譜。

 発端は、ザ・ダーク(1994)。
 このセットに《Goblin Hero》というカードがありました。
 まさしく3マナ、2/2能力なし、と色マナを要求するだけにモルフにも劣る能力を誇っています。
 アルファ版から4版まで存在した《Gray Ogre/灰色オーガ》のクリーチャータイプがそのままゴブリンになっただけ。正直、何がしたいのかはよくわかりません。

 次は今回のテーマ《Enslaved Scout》(1996)。
 なんと基本的なところはそのままに、2マナで山渡りが付きます。
 ・・・・・・大した進歩です。
 ちなみに、この頃はどうもこの「渡り」がコスト的に過大評価されていた節があって、アイスエイジには3マナ2/2で沼渡り《Pygmy Allosaurus》、島渡り《Pale Bears》という引いたら泣きそうな「レア」が1枚ずつ収録されてます。今思えばあんまりです。

 時はウルザズ・サーガ(1998)。
 ここで登場する《ゴブリンの洞窟探検家/Goblin Spelunkers》にはついに何もしなくても山渡りがついてしまいました。リミテッドでは同キャラ戦の貴重なダメージソースではありましたが、構築でみればまだこれでも十分に弱いわけです。
 《ゴブリンの従僕/Goblin Lackey》を見習ってください。

 が、これが終わりではないのがすごいところ。

 6版(1999)での《ゴブリンの勇士/Goblin Hero》再録。

 ・・・・・・何故に。

 そりゃ7版には《ゴブリンの洞窟探検家/Goblin Spelunkers》が入りますわな。
(ちなみに8版は《ゴブリンの戦車/Goblin Chariot》3マナ2/2速攻)

 とまあ、歴史的に非常に右往左往しているわけです。
 で、これがなぜに構築にコーナーにあるかというと。

 昔、某有名プレイヤーのトーナメントレポートに「ゴブリンハイランダー」との対戦がありました。
 そこで語られていたのは・・・・・・。

 1番バッター《ゴブリンの洞窟探検家/Goblin Spelunkers》
 2番バッター《Enslaved Scout》
 3番バッター《ゴブリンの勇士/Goblin Hero》

 と、ご丁寧にも強い順で出てきたというお話。
 ちなみにレギュレーションは当然「エクステンデッド」。私的に伝説と化しています。


about Limited

 前回の先制攻撃に引き続いて、今回もリミテッドにおける特殊能力のお話。当然ながら、テーマは「渡り」。
 実は、リミテッドの環境把握において、この能力はかなり重要だったりします。
 特に序盤に登場するパワー2の「渡り」は、環境における色の安定性に大きな影響を与えます。ミラディンで《ニューロックのスパイ/Neurok Spy》がもてはやされるように「序盤からのダメージクロックはやばい」ということですね。

 最近のエキスパンションではあまりコモンで「渡り」の姿を見なくなりましたが、その分MOでお馴染みの基本セットドラフトではこれらの法則が見事当てはまります。
 8版を例に取ると、コモンの渡りは、
 黒《疫病甲虫/Plague Beetle》(1マナ1/1沼渡り)
 赤《峡谷の山猫/Canyon Wildcat》(2マナ2/1山渡り)
 緑《ラッシュウッドのドライアド/Rushwood Dryad》(2マナ2/1森渡り)
 と存在しますが、除去が自然と集まる赤の《峡谷の山猫/Canyon Wildcat》や、クロックとしてはいまいちな《疫病甲虫/Plague Beetle》(《邪悪なる力/Unholy Strength》でも付いたら話は別)と比べ、緑のミラーマッチでの《ラッシュウッドのドライアド/Rushwood Dryad》はまさにキーカードとも言える存在。
 かつてのマスクスブロックドラフトでもそうでしたが、特にクリーチャー除去能力に乏しい色にとって「渡り」は非常に対処にしにくく、2ターン目に置かれるだけで死んでしまうことも珍しくありません。
 結果として、こういったカードがあるということだけで、その環境における緑白・青緑といった色選択の評価を下げることになるわけですね。

 とはいうものの、今回の元ネタになっている《Enslaved Scount》がどうだというと、さすがに「渡り」にマナが必要となると、序盤のダメージクロックとはなりにくいですね。あくまでも、ほっといてもダメージが入る、というのが肝要。


about Illustation

 Rebeccaがゴブリンを描いたのは、後にも先にもスクイーのみですが(あるやん)、そもそも赤いカードを描くこと自体が珍しいわけです。基本的に、白か緑ですから。
 個人的には結構味があると思いますが、歴代のイラストやフレーバーなどからコミカルっぽいイメージも併せ持つこの種族、やっぱり似合わないという感じはしますね。


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