Kyoto Institute of Economic Research
Discussion Paper No.0402 (2004年4月)
アメリカのバイオ関連特許をめぐる問題状況
― 「人類共通の財産」と「知識の私有化」の相克 ―
京都大学経済研究所 坂井昭夫
<目次>
はじめに
T.1980年代:プロパテント政策下のバイオ関連特許動向
1.バイオ産業の誕生と米国政府による成長の支援
(1) コーエン・ボイヤー特許が意味したもの
(2) サイエンス・ドリブンなバイオ産業とバイ・ドール法等の寄与
2.生物特許の登場とその範囲の拡大
U.1990年代:ヒトゲノム解読への重点移行
1.ヒトゲノム計画の進展とセレーラ社の挑戦
2.インサイト・ショックの勃発
(1) NIHのEST特許出願事件
(2) 問題の沈静化を経てインサイト・ショックへ
V.遺伝情報をめぐる公的プロジェクトとバイオベンチャーの攻防
1.遺伝子の特許性と遺伝子囲い込み牽制策
(1) 日米欧三極特許庁間での審査基準のすり合わせ
(2) へリックス研究所の公開作戦
2.ヒトゲノム解読の顛末
(1) 解読競争の進展
(2) 米英首脳の共同宣言と解読作業完了
W.削がれゆく基礎研究成果の公共財性
X.ポストゲノム時代を覆う特許競争の暗雲
1.ポストゲノム関連市場とポストゲノム関連特許の概況
2.ゲノム創薬における遺伝子特許の意義
(1) 特許に取り囲まれたゲノム創薬のプロセス
(2) 公正取引委員会報告書(2002年6月)の憂慮
3.「アンチコモンズの悲劇」をめぐって
(1) 「共有地モデル」から「反共有地モデル」へ
(2) パテントプールは悲劇解決の切り札となりうるか?
おわりに
注
図表