子 欲 居 日 記

潘基文次期国連事務総長 日米に北朝鮮との関係正常化を求める


2006年12月19日


 次期国連事務総長となる韓国の潘基文(パン・ギムン)氏が14日に宣誓就任をした。氏は、韓国の現盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権下で、最近まで外交通商相をつとめていた人物であり、ビルマ(現ミャンマー)のウ・タント氏以来、ほぼ40年ぶりのアジア地域出身の国連事務総長となる。  その潘基文氏が、中国語メディアからのインタビューの際ではあるとはいえ、朝鮮半島の核問題を語った際、「アメリカと日本は朝鮮との関係正常化を実現すべきである。」と述べ、更に「(北)朝鮮以外の六カ国協議の関係国は(北)朝鮮に必要な経済援助と安全の保障を与えるべきである。今後は国連事務総長として、六カ国協議の実質的な成果を収めるよう努力していきたい。」と述べているのである。
 日本のマスコミなど、氏の就任宣誓について簡単に伝えているだけで、上のような発言をしたことなど、全く触れていない。もっとも、今や韓国の北朝鮮宥和政策は自明であり、その他、各方面での、日本政府との「差異」は際立つばかりである。
 韓国政府関係者が、上のような発言をすることなど、つい10年前までは考えられなかったことだし、一方、北朝鮮の方も潘基文氏の国連事務総長就任に全く反対の動きを見せていない。これも10年前まで考えられなかったことだ。ちなみに、韓国も北朝鮮も91年に国連に同時加盟している。
 日本の一部には、「左派」の盧武鉉政権に替わって、「右派」保守派政権の復活を期待する声があるが、その韓国の保守派とて、日本の保守勢力、それどころか革新勢力、例えば日本共産党や社会民主党などと比べても、かなり「親北」的である。というか、「親北」的にならざるを得ない。
 日本の「革新」勢力でさえ、国内の反北世論に圧倒されて、ほぼ与党と同じ行動を取っているのに対し、韓国にとっては、朝鮮半島の平和安定は重要な国益である。94年に、北朝鮮の核問題から、アメリカが第二次朝鮮戦争まで考慮した時、真っ先に反対したのは当時の金永三(キム・ヨンサン)保守派政権であった。実際、たとえ軍事的にアメリカが北朝鮮を圧倒するのは明白であるとしても、韓国の受ける被害も甚大である。ましてや、その後、旧北朝鮮地域を吸収合併を強要されることなど、韓国に取って、悪夢以外のなにものでもない。経済の破綻は目に見えている。それは、当然、日本にも波及してくるのだが。
 他方、日本の方は、保守派も革新派も、それぞれのイデオロギーに凝り固まり、「北朝鮮憎し」の感情論だけで、朝鮮半島を巡る現実の情勢が何も見えていない。下手をすると、「ソ連の崩壊を心から喜んだ」と明言する日本共産党などが、イデオロギー問題だけで、金正日政権の崩壊を喜びかねないのに、現実に直面している韓国では保守派にとっても、金正日政権の崩壊とその後の混乱は悪夢以外の何ものでもない。おいおい、日本共産党辺りよりも、かの朴正煕氏の娘率いる韓国の右派政党の方が、よほど親北的にならざるを得ないのである。
 それにしても、日本の為政者には、感情論があるだけで、戦略というものが全く感じられない。もはや、遅かれ早かれ、北朝鮮と国交正常化せざるを得ないことは自明である。日本の為政者はアメリカの顔色伺いであるが、既に北朝鮮に対して一番強硬なのは、アメリカではなく日本政府の方である。アメリカでさえ、ニクソン訪中で見せたように、いつ日本の頭越しに北朝鮮と関係を正常化しても、もはや全然おかしくない状況に来ているのである。 

参考記事   

パンギムン氏、事務総長転責への中国からの支持に期待(『人民網』日本語版)  

・ 「一人負け」の日本(『田中宇の国際ニュース解説』)



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