亀岡市・南桑田郡篠村の合併に関する調書


一九五九年(昭和三十四)、
「南桑田郡篠村条例等合併に関する協議書」
亀岡市行政文書
合併を必要とした理由
亀岡市と南桑田郡篠村は左記理由により合併を必要とする。
一、地 勢
 南桑田郡篠村は、亀岡市三宅町、矢田町、保津町等亀岡市の中心部に隣接し、他方海抜二百米ないし五百米に達する一帯の山嶽が重畳して京都市と界し、亀岡と共に保津川流域にあって亀岡盆地の一部を占めている。
二、人情風俗
 住古より亀岡市と篠村の縁故関係は多く、明治初年までは亀岡藩に属していたものであり人情、風俗、習慣等も何等異るところはない。
 現在は郡を異にしているものの、亀岡を中心として発展し、純農村として共に保津川流域に生を営んでいるもので、亀岡市に職を得、又は求めるものは多く、且年々増加している。その他南丹隔離病舎組合、病院組合、学校組合等の共同経営を初め、その他諸団体の運営においても、常に連絡協調することが多かった。
 篠村の諸文化は主として亀岡市より流入している現状である。
三、交 通
 亀岡市及び篠村の中心部を新国道九号線が貫通し、亀岡駅を起点として篠村を通過するバスは、三十分毎に往復し、又国鉄山陰線馬堀駅があって、交通は極めて便であり、篠村中心部より亀岡駅までバスで約十分内外を要するのみである。
四、産業経済
  篠村は米麦、そ菜、林産物の産地としても知られ、亀岡市は勿論広く京阪神方面に出荷している。中でも消費都市を間近に控え夏そ菜の栽培が盛んで、各方面に名声を博している。
 特に亀岡市中心部はこれに依存し、反面篠村の日常生活必需物資は主として亀岡市内業者より供給しており、相互依存の関係にあるものである。
 右のような理由により、亀岡市と合併することは、関係住民の福祉増進と当地方の飛躍的発展を齎(もたら)すものであることを深く信ずるものである。
 合併議決に至るまでの経緯の概要
 昭和三十年一月一日、南桑田郡十八ヶ町村の内、篠村、樫田村を除く十六ヶ町村の大同合併を成し遂げて亀岡市が誕生して以来、こゝに四年有半の才月を閲(けみ)した。その間、亀岡市は船井郡東本梅村を編入してその規模を拡大しつつ、市民一丸となり幾多の困難を克服し、共に信義と互譲の精神に立脚して精進した結果、今やその基礎は成り、旧町村の殻を脱してその面目は一新され、洋々たる前途が約束されるに至った。
一方樫田村は多年の宿願を果して高槻市に合併し、当時共栄圏内にあっては独り篠村を残すのみとなったのである。
 翻って、当時篠村は、現亀岡市の中心部に隣接し共に同一生活圏内にあって、当然卒先して市制の実現に努力すべきであったにも拘らず、莫大なる村有財産に頼り、かつ、未曾有の災害復旧工事に全力を傾注しつつあったこと、加うるに大災害の因たる平和池決潰に関して元亀岡町と訴訟関係にあり、住民感情のしこりは容易に溶けず、合併特別委員会の切なる勧誘説得にも拘らず、遂に参加するに至らなかったのである。
 爾来篠村は鋭意復旧に努力しつつ、機会ある毎に合併に対する与論の喚起に努めて来たが、何等進展を見るに至らなかった。
 当時村議会特別委員会は、京都市、亀岡市、独立の三観点から調査研究を進め、昭和三十一年八月、議会における結論を見ないままに与論調査を行った結果、京都市合併を可とする者が多数を占めた。
一方村民は、次第に村政に不満と不信を抱くにいたり、納税成績は極度に低下し富裕を誇った財政も遂に多額の赤字を累積するにいたり、同年九月村長辞任の已むなきに至った。
 改選の結果、独立派が当選し、村財政の緊縮、事業の庄縮を行ったが、依然財政は好転せず事業庄縮により村民の不満は益々高まるに至った。
 時恰(あたか)も昭和三十二年三月三十一日、京都府知事は、亀岡市と篠村との合併を両市村に勧告した。しかし乍ら亀岡市は、来る者は拒まずの方針は不変であったが、村内情勢騒然たる篠村に対し考慮の余地を認めなかった。
 篠当局者は漸く独立の困難を悟り、加うるに村民の不満を抑え難く、京都市に合併を申入れたが、具体化せず、三十二年五月議員は総辞職した。
 改選後の村議会は合併に関し新たな決意をもって臨み、検討を重ねた結果、翌三十三年三月亀岡市編入に関し市の意向を打診するに至ったが、市は調査の結果村内の与論不統一のため時期尚早として具体的進捗を見るに至らなかった。
 その後篠村は与論の統一に努力したが果さず、合併申入れの正式決議を強行せんとして混乱を招き、三十三年十一月遂に村長は辞任した。
 新村長は、三十四年九月末日合併を目標として各部落を歴訪し説得に努力した結果、漸くにして村民は亀岡市合併の必然性に目覚め、三十四年六月八日正式に合併を申入れるに至ったのである。
 その後両市村において、数次の協議を重ね、双方信義と誠実に立脚し、共に互譲の精神をもってこゝに相寄るべくして寄らず四年有余の歳月を費した合併問題に円満なる終止符をうち、当初の理想を実現すべく合併を決議するに到ったものである。



   「南桑田郡篠村条例等合併に関する協議書」

                    亀岡市行政文書
  亀岡市と南桑田郡篠村との合併に関する協議書
 亀岡市と南桑田郡篠村との合併に関し、関係市村の議決に基き、左記のとおり協議の上定める。
 昭和三十四年九月二十三日
         亀 岡 市 長 大槻嘉男
         南桑田郡篠村長 大橋義雄
         記
一、合併の形式 編入合併
二、合併の時期 昭和三十四年九月三十日

三、支所の設置 支所には収納事務取扱い等のため吏員を配置することができる。
1 位 置 現村役場
2 業 務 収納事務のほか、特に命ぜられた事項を処理する。
3 建 物 増改築は原則として認めない。但し、特に必要と認めその財産区等において経費を支弁する場合はこの限りでない。
四、職員の引継
引継人数一般職貝のうち次により十八人以内を市に引継ぐものとする。
吏   員   十四人
支所作業員    一人
学校作業員    一人
学校給食作業員  二人
以内とする
2 引継職員の資格基準等
(イ)引継職員の資格基準は次によるものとし、篠村において処理するものとする。
昭和三十五年三月三十一日現在における年令満五十五才以下の一般職員。
但し、作業員については満六十才以下とする。
(ロ)学校給食作業員の身分取扱いについては市の例による。
3 引継職員の給与調整
引継職員の本俸は学歴、年令、経験年数等市職員の基準により市において合併時調整し、等級号俸を決定する。その他の諸給与については市の条例による。
五、財産及び負債の帰属処分
篠村の財産及び営造物(一切の権利義務とも)並びに負債等は、次の事項を除きすべて市に帰属せしめるものとする。但し、別記財産については財産区(財産区に管理会をおくものとし、その詳細は別紙のとおりとする)を設置するものとする。
1 災害に伴う負債について
(イ)補助災害復旧起債については市が引継ぐも、会計検査院検査等原因の如何をとわず繰上償還を貸付先から命ぜられたときは、繰上償還相当額を現篠村地区から地元寄附金としてこれを市に納付しなければならない。寄附困難なときは市長が篠財産区に提案する繰上償還金相当額の財産処分案に異議なく同意するものとする。
(ロ)災害復旧出来高不足等の原因により補助金の返還を命ぜられた場合においても前項の処置をとるものとする。
(ハ)単独災害復旧起債元金未償還残金相当額を合餅協議成立前に市に寄附するものとする。
(ニ)前三項のほか、合併後において合併前の災害処理に関し財政的負担を生じた場合は、すべて現篠村地区において前(イ)項により負担処理するものとする。
2 その他負債等について
(イ)篠村一般会計及び特別会計において実質赤字のある場合は、合併前に解消の処置をとり、健全なる財政状態において市に引継ぐものとする。
(ロ)前項による実質赤字の有無並びにその額等については合併協議成立までに篠村の提出する関係簿表を基にして、府地方課長立会の上市がこれを調査認定するものとする。
(ハ)前項における調査については、調査の日の属する前年度以前概ね三ケ年間の実績に基き、当該年度の予算執行状況を勘案してこれを認定するものとする。
(ニ)前項による調査の結果、当該年度において歳入欠陥により執行不能と認定された場合においては、その認定額に相当する額について確実なる財源措置を講じ、もしくは歳出執行を削除するものとし、その選択は篠村の自由意志とし市はその解消措置について更に確認を行うものとする。
3 旧慣により住民中特に財産又は営造物を使用するものについては、従来の慣習に従う。
六、行政慣行等の是正
  本協議に定めるものの外、行政慣行並びにそれに伴う財政支出等は、合併の時からすべて市の慣行に従うものとする。
七、市税の賦課徴収等
 1 昭和三十四年度においては現篠村税条例によるものとし、翌年度から市税条例を適用する。
 2 滞納諸税の整理
 合併時における昭和三十三年度以前調定分の滞納諸税については篠村において極力整理すること。なお、篠村において着手した強制処分品については換価処分を完了するものとする。
 3 現年度篠村税については編入前に徴収率をでき得る限り市と同率程度まで引上げるよう努力するものとする。
八、国民健康保険事業
 1 承継実施する。
 2 保険税の賦課徴収及び滞納整理については市税と同様とする。
 3 保険給付については合併の時から市の条例による。
九、税外収入滞納整理
 税外収入滞納金については特別の理由あるものの外、確実に整理しておくこと。
一〇、未払債務整理
  未払債務については如何なる僅少額のものといえども完全に整理するものとするも、合併後において旧債務の支払請求をうけた場合は、その請求相当額を現篠村地区から前第五号第一項(イ)に準じ市に寄附、又は財産区において整理するものとする。
一一、農業委員会
現篠村農業委員会は市に統合する。
一二、消防団
 1 亀岡市消防団篠分団とし、市条例の規定に従う。
 2 団員数は市の配置基準に従い一二六人とする。但し、当分の間一七六人とする。
 3 消防機械器具について、市に引継ぎ維持管理するものは、耐用年数内にある自動車ポンプ、手引ガソリンポンプ、可搬式ガソリンポンプ、役場の位置にあるサイレン及びそれらの格納庫とし、以外のものについては後述自治会に一切を移管する。
 4 前項の装備基準は一部落当りポンプ一台とする。
一三、自治会に対する事務委託
 篠村部落連絡員制度を改組し、地区住民の連絡、親睦等福祉増進の任意団体「自治会」を設置し、市内各町と同一に市の事務の一部を委託し裏付補助をする。
一四、小学校  市立として現行通り
一五、中学校  組合立をとき、全施設人員を市に引継ぎ市立として現行通り。
一六、農業用施設
 共同水路、ため池等の農業用施設については、合併前篠村において篠土地改良区に無償譲渡するものとする。
一七、紛争の処理について
 現篠村地区における従来の紛争及び合併に起因する将来の紛争その他未処理事項については現篠村地区内において解決するものとし、市はこれについてあっせん、調停、その他何等解決の責を負わないものとする。
一八、参与をおくことについて
 合併後における市政の円滑なる遂行ならびに旧村の特殊事情の処理等について、旧村地区住民の民意を尊重するため、市政協力機関として次の市議会議員の一般選挙の日までの間、参与(三名以内)をおくものとする。