【Music Holiday】   暴走機関車ついに登場!
      =ザ・フー歴史的初単独来日公演追っかけレポ Vol.6=    

2008/12/19

   【金曜日:STAGE2〜横浜アリーナ】 

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横浜でも親の仇44年の方々多数

   4年振りにフーが横浜に戻ってきた。ロジャーが「ヨコハマ」とボソッと言ったあと、ピートが「Hello, New York !」と昨日に続くベタギャグ。喰えないオヤジである。  
   昨日の大阪公演での違和感が不安感に変わり、「もしかしたら、俺のフーは終わってしまったのかも??」なんてことも少し思いながら横浜にやって来たが、『I Can't Explain』の最初のギターリフが鳴り響いた瞬間、その音圧と迫力にチビリそうになる。とにかく音の勢いが昨日とはまるで違う。やはり昨日のフーは「俺のフーじゃなかった」のである。

   バンドの勢いも違えば客の勢いも違う。関西人としては少しく悲しいところではあるが、やはり洋楽のライブは関東で見る方が心地が良い。地味な『The Seeker』でさえかなりの合唱になっている。
   ロクオデの時も大阪より横浜の方がいいステージだったし、土地との相性っていうのもあるんだろうか、などと考えているうちに、コードプレイ冴え渡りまくりの『The Seeker』終了。
   そして少し間を置いて遠くからジャカジャカと聴こえてきたのは『Anyway Anyhow Anywhere』のイントロ! 一気に会場がヒートアップする。昨日はこの3曲目が『Relay』で、お地蔵さん続出モードになってたから、この曲の復活はまさに大英断。43年前にフィードバック奏法で衝撃的に登場した(らしい)この曲も、いまや原型を留めるのは前半2分程度で、後は大爆裂ギター大会。しかしその爆裂を成り立たせているのはザックの激しいドラミングで、ピートよりもむしろザックに視線が行きがちになる。


   続いては後ろのイメージ・スクリーンの映像がいい感じの『Fragments』で静かにゆったりと盛り上がる。30年後の変形『Baba O'riley』とでも称すべき曲で、一緒に歌える部分があまりない曲調なのが残念ではあるが、ここまでの4曲で完全に今日のライブがとてつもないものになることを確信する。すでにTシャツには汗が浮き出している。

   昨日の各駅停車から暴走機関車へと一夜にして変貌したバンドは、定番の『Who Are You』『Behind Blue Eyes』と流れる静と動のコントラストを描き出す。昨日はPA不調が引き金になって、ザックとピートの呼吸も合わず、と悪循環になっていったことは間違いなく、今日は反対の「好循環」モードに入ったようである。  
   『Who Are You』が終わった後に、ロジャーが「今日はPAの調子もいいよな、ピート?」と話しかけるが、ピート無視(笑)。続く『Behind Blue Eyes』はサイモンのコーラスが一番よく聴こえる曲だが、やっぱりバンド6人の中で一番影薄いよなぁ、あまりにも偉大かつ狂気の兄貴を持つと弟は何かとツラいのである、多分。

   3曲目に『Anyway Anyhow Anywhere』が入ったので、『Relay』はどうなるのかと思っていたらここで登場。つまり『Real Good Looking Boy』は外されてしまったということになる。地味ながら好きだったんでちょっと残念。  
   さて場所を変えて生き残った『Relay』、ピートが曲紹介しても相変わらず反応は少ないが、プレイは昨日とは段違いのパワフルさ。ロジャーが手拍子で煽るところ以降は、またもや暴走機関車モードである。ったくどうなってるんだこのオヤジどもは……


   そして次の『Sister Disco』でもまた昨日とまるで違う曲としか思えないテンぱった演奏を披露。昨日は全然ダメダメに感じたザックの重ためのドラミングも今日は文句なくカッコイイ。ちょっとラビットのシンセが邪魔なようには感じたけど(苦笑)  ここらまででもうすっかり大興奮状態の私としては、昨日の大阪はなかったことにしたいくらいの勢いである。大阪しか見にいけないヒトには大変申し訳ないが……

   しかしそんな出来不出来の比較も『Baba O'riley』がくると無意味になる。イントロのシンセ・ループが鳴り出すと「ああ、オレはこの5分間のために生きてるんだ」と掛け値なしに思ってしまう(←バカ)。『It's Only Teenage Wasteland』……ただの十代の荒野さ…… このフレーズを叫ぶ観客のみんなに年代は関係ない。十代とは肉体ではなく精神に内在するのだ。

   会場一体となった狂熱の大合唱が終わったあと、クールなビートにクール・ギターを載せた『Eminence Front』が始まる。去年まではこの辺はピートのアコギ弾き語りコーナーだったのだが、最近は「エレキ弾きたい病」に罹っているようで、ずっとこの曲である。『Drowned』とかも聴きたいんだけど、とも思うが、まぁこの曲も好きだから良しとしよう。
   ところでさっきクールなギターと言ったけど、訂正。スタジオ盤とは既に完全別ヴァージョンと言ってもいいくらいのハード・ドライヴィング・ギター満載になってて、横ノリが心地よい。


   ちょっと騒ぎすぎたので早くも疲れてきたが、昨日の大阪は最後まで疲れなかったんだから、幸せなことと思わねばならない。ステージは「四重人格」からの曲へと入っていく。
   『5:15』はなぜか昨日より短いバージョン。調子いいから長いとかそういう訳でもないのが、ヤツラの侮れないところ。曲の骨格だけが変わらなくて、後はその日の、というかその瞬間のヒラメキでプレイしていくバンドだから、昨日は3分だったのに今日は8分、なんてスリリングな展開になるのである。  
   テンションは高かったが少し短くて物足りなかった『5:15』から、「四重人格」のラストを飾る『Love Reign O'er Me』へと続く。やはりボーカリスト・ロジャーが一番輝くのはこの曲だろう。声域が年々キツクなってきているのは否めないが、まだまだ大迫力のヴォーカリゼーションを見せつけてくれる。聴き終わった後に観客をフヌケにさせてしまう曲である。

   「さぁ無法か??」とフヌケの体にパワーを再注入しつつ待っていたら、『My Generation』のギターがガンガン鳴り響く。ということは『Won't get Fooled Again』をラストに持ってくる王道パターンに戻したということである。これだけでも嬉しいのに、昨日はグダグダだった後半のインプロビゼーションが超絶で、あと30分続けてくれても良かったくらい(笑)ザックは曲中のほとんどでピートを見ながらドラム叩いていて、ピートの一瞬先のプレイを読んで勝負を挑んでるような感じだ。わがままオヤジに付き合うって大変なことだと思う。ピノのベースソロは昨日の方が良かったかな? 

   途中のピートが適当に歌うとこで、『Dance It Away』などというソロでもマイナーな曲のフレーズが登場、さらに「ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョップリンがどうたらこうたら……」と続いて、最近のパターンの『Cry If You Want』のフレーズへ。セットリストだと単に『My Generation』と表記されてしまうが、これだけお腹いっぱいになるメニューなのである。


   そしてもうコレしかない『Won't Get Fooled Again』の「ジャカジャーーーン!ギター」が爆音で会場を圧する。ワンパターンかも金太郎飴かもしれないが、最後はこの曲の大迫力で締めるのがやっぱりハマる。  
   ピートは元々エフェクターをあまり使わないヒトで、この曲では彼の好きな「大音量の生音」の魅力がこれでもかというくらいに堪能できる。何十年も演奏してる曲だが、セカンド・ヴァースでバンド全体が一瞬演奏を止めるところとか、ブリッジのところでキースよりも叩きまくるザックのドラムとか、今でも進化しているのである。  
   途中のシンセ・ループのところ、向こうのライブではあまりない拍手が巻き起こり、そしてホールの外にまで絶対に響いているロジャー&Crowdの『Yeah-------!』で危うく失神しそうになる。  更にダメ押しは久しぶりにやってくれた「終わったと思わせて、またプレイ再開」のエンディング。いやぁ、驚天動地魑魅魍魎酒池肉林の世界である。


   凄まじいハイテンションの演奏で会場中を爆撃したにも拘らず、そんなことはなかったかのようにあっさり引っ込んで、そしてあっさりアンコールに登場。淡々とピートが『Pinball Wizard』のコードを鳴らし始める。 ここから始まるアンコールの定番トミーメドレーも絶好調、と思いきや、『Amazjing Journey』〜『Sparks』のブチキレ演奏で、ピート師匠あまりにもブチキレ過ぎて、途中で弦まで切ってしまう。すぐにローディが代わりのギターを持ってくるが、これがどうもしっくり来なかったようで、そこから明らかにプレイのテンションが下降。『Sparks』はそれでもなんとか頑張っていたが、『See Me Feel Me』はあんまり弾いてなかった。その分普段は殆ど聴こえないサイモンのギターがだいぶ聴けたけど。

   ということで、オープニングからアンコールまで、ほぼ完璧と思っていたのに、最後の最後で何か残念なことになってしまった。これもライブの醍醐味と思えばいいのかもしれないが…… あ、でも『See Me Feel Me』の歓声&合唱はそれでもやっぱり良かった。 ピートも少し難しげな表情してたが、『See Me Feel Me』終わった後に笑いながらメンバー紹介。そして大歓声にあちこち手を振ってくれたくらいだから、概ね今日のライブには満足だったんだろう。

   照明が暗転し、ピートのアコギ(よく考えたらアコギってここだけだ!)で『Tea And Theatre』が静かに始まる。スタジオ盤の地味ぃーーーな印象が昨日の初生ライブで一変したのであるが、今日もひときわ感動的。決して美声ではないロジャーが力強く歌い上げ、ピートの繊細なアコギがバックアップする。そんな最強のコンビネーションが美しい。

   ロジャーが「Be Lucky」を繰り返し、ライブは終了。最後のトラブルだけが返す返すも惜しかったけど、今日のフーは神演奏であった。 


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疲れたのでホテルに行くWB01629_.gif (249 バイト)