【Music Holiday】 『ハート・オブ・ザ・マター』のライブ・ヴァージョンは歴史的名演ですぞ!! | |
=迷走するヴォイス・オブ・カリフォルニア、ドン・ヘンリー『インサイド・ジョブ』= | 2000/7/3 |
94年のイーグルス復活を間に挟んで実に11年振りのソロ・アルバム。となるとイーグルスはどうした? という疑問が頭をよぎるが、さてどうなってるんでしょうか? 新曲4曲だけの中途半端なアルバム1枚と大々的な復活ツアーの後、再解散(?)したという話も聞かないし、さりとて新譜制作中という噂もなく、よー分からん状態になってるんだけど、とりあえず後ろ向きのイーグルスよりも百倍は時代への批評性を持つのがドン・ヘンリーのソロ作品。とりわけ前作『エンド・オブ・ジ・イノセンス』におけるアメリカ的享楽主義への厳しい批判は、音楽性の高さともあいまって、彼の存在感を際立たせていた。
そして11年越しの期待も高まる今作だが、共同プロデューサーが前3作のダニー・コーチマーからスタン・リンチに変わったせいか、一聴して分かる触感の違いがある。綿密にベーシック・トラックを構築するスタジオ職人肌のコーチマーに対して、元ハートブレイカーズのメンバーでもあるリンチはもっと直感的な音作りをする。良く言えばナチュラル、悪く言えば練り込まない彼のサウンド・プロダクションは、少々ドン・ヘンリーには合わなかったのではないか。何だか散漫とした印象の曲が多いのだ。元々詩人4、ヴォーカリスト4、ミュージシャン2くらいの人だから、彼があの哀愁を帯びた声で、鋭く歌い出せば、殆ど無条件に近く、こちらは受けとめてしまいがちなのだが……
詩作は相変わらず素晴らしい。自分の結婚を嬉々として歌い上げる『フォー・マイ・ウェディング』のような彼には少々似合わない曲もあるが、イーグルス時代から続く社会派路線は健在。ただ、環境破壊をもたらすダム建設に反対する『グッバイ・トゥ・ア・リヴァー』あたりは、捻りが全くないド直球のメッセージ・ソングになっていて、詩人としての彼の立ち位置の迷いも若干覗える。
ソロになってからの最も優れた2つの歌曲『ボーイズ・オブ・サマー』と『ハート・オブ・ザ・マター』が、共にマイク・キャンベルとの共作&共同プロデュースであり、今作中最も意欲的かつ魅力的なタイトル曲も彼とのコラボレーションであることを考えれば、ドン・ヘンリーの次なる方向は示されている、というのは言い過ぎだろうか。マイクも最近は相方トム・ぺティとの仕事よりも外での活動の方が生き生きしてるように見えるし、一気にヘンリー&キャンベルで新バンド結成!! なんて言うのは駄目かな?