【Cinema Holiday】  『シックス・センス』は面白いかな?
      =韓国だけじゃなくハリウッドも観てます。半年間のマトコメ・シネマ:その1=    

1999/11/23

この半年間はちょっと更新をサボってましたが、年の瀬も近づいてきたので、この間に見た映画のマトコメをしばらく書いていきたいと思います。まあ、殆ど自分の備忘メモに近いですけど……

wb01480_.gif (190 バイト)確かに面白い……けどこれでいいのかな?『スター・ウォーズ:エピソード1〜ファントム・メナス』wb01480_.gif (190 バイト)
(1999年アメリカ作品、監督:ジョージ・ルーカス、出演:リーアム・ニーソン、ユアン・マクレガー、ナタリー・ポートマン)

episode1.jpg (13608 バイト)    まあこの映画については、いろんな人がいろんな所でいろんな事を語っているので、今更という気がするのだが、やはり今年を代表する作品のひとつとして避けて通ることは出来ない。しかし、正直に言うと、これだけ待って待って待たされた挙句の作品としては、イマイチだったような気がする。リマスター版も全て劇場で見ているものの、僕は決して熱狂的なスター・ウォーズ・ファンではない。かと言って、殊更に醒めた目で見るつもりもないのだが、そのことを差し引いても、前三部作のそれぞれにあった得も言われぬ感動はなかった。サーガの導入部分ということで、どうしても登場人物や背景の説明的なシーンが多くなるのは仕方ないが、それにしてもアナキンがレースを始めるまでの前半部分は冗長に過ぎないだろうか?

   サーガのエンディングが既定であり、ストーリーがある種のレール上を走らざるを得ないのは当たり前だが、そのハンディを引っくり返すだけのスクリーン・パワーが絶対に必要なのだ。しかし『エピソード1』には、残念ながらその力がない。前三部作に更に磨きをかけた特撮シーンの見事さ、ナタリー・ポートマンを始めとする俳優陣の熱演(ユアン・マクレガーは印象薄かったけど……)にも関わらず、観終わった後にカタルシスを得ることが出来ない。一見、サーガの予定調話を乱すかに見える次作への伏線張りばかりが目立ち、後に残るのは玉石混合の解説本を読まねば分からないような謎ばかり。こういうことを書くと「第1作だから仕方がない」とか「その謎解きがスター・ウォーズの楽しさなんだよ」と言う声が聞こえてきそうだが、果たしてそれでいいんだろうか? 連ドラじゃなくって、映画という2時間の箱庭を観てるんだから。


wb01480_.gif (190 バイト)そういやぁ、ビートルズも一時ハマッてましたね、東の方に『マトリックス』wb01480_.gif (190 バイト)
(1999年アメリカ作品、監督:アンディ・ウォシャウスキー/ラリー・ウォシャウスキー、出演:キアヌ・リーブス、ローレンス・フィッシュバーン)

matrix.jpg (30848 バイト)    『アルマゲドン』『スター・ウォーズ エピソード1』『マトリックス』『シックス・センス』というのが、今年の日本でのメガ・ヒット映画になるのだが、鳴り物入りの前2つに比べて、後の2つはどちらかと言うと拾いモノの感が強い。中でも、もうこのままハリウッドから消えて行くのだろうかと勝手に心配してたキアヌ・リーブスの突然復活作となった『マトリックス』は、『ブレード・ランナー』以来のサイバー・パンク(これは死語だな)の伝統を正しく受け継いだ作品。しかし、何故このジャンルの映画って、よく分からない東洋テイストを持ちこむんだろうか?

   “強力わかもと”の看板があまりにも印象的だった『ブレード・ランナー』も東洋的な描写だったけど、あの映画では香港イメージの場末の乱雑さを背景として拝借しただけで、思想面まで入りこんでいるわけじゃなかった。だが、『マトリックス』に至っては、最終兵器が何とカンフーで、「精神集中すれば弾丸も止まって見える」という殆ど精神世界のネタなのだ。すごくストーリー展開は面白いし、一瞬たりともスクリーンから目を離すことのできない好作品だが、こういう上っぺらの東洋思想が出てくるとちょっと引いてしまう。『スター・ウォーズ』に再三出てくるフォースも極めて東洋的発想ではあるが、最終的にはそんな元ネタを感じさせない独自性を感じさせるツールに昇華させていた。だからこそ、あれほどの説得力と魅力に溢れていて僕らが引きつけられたのだろう。ところが『マトリックス』では“そのまんま”なんである。あれだけ緻密なストーリー構成と大胆な情景描写をしているのに、最後は「成せば成る」っていうのはあんまり強引じゃないのかな? 大ヒットのおかげで続編の製作も決定しているらしいが、全体が理論的な映画なんだから、最終兵器ももう少し理論的に構築しないと、下手すりゃ『スピード2』の二の舞にならないか、と思うのだが。

wb01480_.gif (190 バイト)イーブルはパワーズの父親だった、らしい!? 『オースティン・パワーズ・デラックス』wb01480_.gif (190 バイト)
(1998年アメリカ作品、監督:ジェイ・ローチ、出演:マイク・マイヤーズ、ヘザー・グラハム、マイケル・ヨーク)

austin.gif (21513 バイト)    という訳で、続編とは面白いものかというと、9割は面白くないのが普通なのだが、この『オースティン・パワーズ・デラックス』は残り1割の例外。メッセージや思想のカケラもないギャグの連発で構成されているのは前作と同じだが、まず金のかけ方が違う。同じような下ネタでも、前作ではマイク・マイヤーズが全部生身でやってたのを、今度はCG(のようなもの?)を多用してギャグのパワーアップを図っている。全体としては、パワーズよりも、むしろ仇敵のドクター・イーブルが主役とも言える存在で、おまけに新キャラのミニー・ミー(イーブルのミニチュア、ただし生きてる)が大暴れ。気の弱いイーブルの息子と、何故かイーブルと一夜を共にしてしまうオバサン秘書など、イーブル・ファミリーの勢揃いする秘密基地のシーンの方が見ててワクワクする。

   対して、ちょっとキャラが弱いのが、パワーズの相棒美人スパイ役のヘザー・グラハム。個人的には絶対グラハムの方が好みなんだけど、前作のエイリザベス・ハーレーほどのカリスマ性は出せなかったみたい。あと、これまた新キャラのファット・バスターズが最高。イーブル一味の悪い奴なんだが、太ってる人間の悲哀をこれでもかとばかりに突き詰めるギャグには大笑いさせられる。まあ、パワーズもドクター・イーブルもファットも(多分ミニー・ミーも)全部マイク・マイヤーズがやってるから、誰が目立っても一緒なんだけどね。

   おまけのお約束音楽ネタは、大御所バート・バカラックを前作に続いて引っ張り出して、その上今度は何とエルヴィス・コステロと共演させちゃうという神をも恐れぬ快挙!! そうそう、『60年代の博士アラン・パーソン氏の極秘計画、アラン・パーソンズ・プロジェクト』というギャグに爆笑してた人は、僕も含めてみんな30歳以上の人でした。

wb01480_.gif (190 バイト)“alll or nothing” の everything's alright 『バッファロー'66』wb01480_.gif (190 バイト)
(1998年アメリカ作品、監督:ヴィンセント・ギャロ、出演:ヴィンセント・ギャロ、クリスティーナ・リッチ、アンジェリカ・ヒューストン)

buffalo66.jpg (27535 バイト)    映画や音楽の好き嫌いに性別は関係ないと普段は思うのだけど、それでも『バッファロー'66』は男が好きになる映画だろうな、と観た後に思った。ヴィンセント・ギャロ演じる刑務所を出所したばかりの男ビリーは、全くどうしようもない奴。立ち小便をする勇気もないのに、親に思わず言ってしまった『もうすぐ結婚する』というウソを付き通すために、通り掛かりの若い女性レイラを拉致して、自分の恋人役を演じるよう脅かす。ところが、その脅しの文句は「うまくやったらお前の友達になってやる」という支離滅裂なものだった……

   ビリーは本当は心根の優しい繊細な男なのだが、生来の口下手と、今までの誰からも愛されなかった人生の反動で、斜に構えたヒネクレタ言動ばかり。しかもそれらが悉く裏目に出てしまう。レイラを連れていった両親の前でも悪態ばかりつき、喧嘩同然の挙句に家を飛び出て、行くあてのない放浪生活。こんなどうしようもない人間のクズみたいな男に感情を揺り動かされる女性はまずいないだろう。だけど、こんなナルシストなクズをクズとして認めちゃうこれまたどうしようもないところが世の男にはあるんだな。だから、ビリーの無茶苦茶な行動の裏に「ああ、彼は淋しいんだ」なんて的外れの同情を感じて、応援しちゃうのだ。それとは対照的な世の女性の代表が実はクリスティーナ・リッチ演じるレイラなのだが、何故誘拐されたはずの彼女が徐々にビリーの振る舞いに興味を覚えていくのか? ここらへんを無理なく理解できるかどうかが、この作品に対する評価の分かれるポイントなんだと思う。後日談によると、クリスティーナ・リッチ自身は、ギャロの脚本にも演出にも不満で、撮影中ずっとギャロと言い争っていたそうである。ということは、女性であるリッチにとってはやはりこんなクズは単なるクズでしかなかったのだろう。

   しかし、そんな裏ではそんな険悪な雰囲気だったなんて、到底信じられない程素晴らしいラスト・シーンは一体どう表現したらいいのだろう? 『ラスト5分のラブ・ストーリー』ってコピーは伊達じゃない。ささくれだったビリーの心を過剰な言葉なしに、ゆっくりと解きほぐしていくレイラの抱擁感。その感情の交差を俯瞰するカメラひとつで捉え切る構図の見事さ。うーん、物凄い映画だと思うんだけど、やっぱり好き嫌いはハッキリ分かれるようだ。

wb01627_.gif (253 バイト)Seeker's Holiday Camp