【Cinema Holiday】  やっぱアメリカっちゅう国は分裂症だわさ 
      =啓蒙風オシャレ映画『ワン・ナイト・スタンド』、可愛く楽しい『メリーに首ったけ』=    

1999/5/5

   古い映画でスミマセン。

wb01480_.gif (190 バイト)エイズも“普通の病気”になったということなのか? 『ワン・ナイト・スタンド』wb01480_.gif (190 バイト)
(1997年アメリカ作品、監督:マイク・フィギス、出演:ウェズリー・スナイプス、ナスターシャ・キンスキー)

onenight1.jpg (11587 バイト)    いやぁー、久し振りに見ました、ナスターシャ・キンスキー。相変わらず綺麗で、いったい幾つになったのか知らないけど、とってもいい年の取り方をしてます。そんな彼女とウェズリー・スナイプスという豪華組合せながら、何故かどことなく地味な『ワン・ナイト・スタンド』は、大人の行きずりの恋の行方にエイズ問題を絡ませた異色作。

   ロスでバリバリのCMディレクターとして活躍するマックスは、エイズに侵された旧友チャーリーを見舞うための訪れたニューヨークで、ふとしたことから美しい女性カレンと知り合い、一夜を共にする。やがて、一年後に病状の急速に悪化したチャーリーを再訪したマックスは、カレンと思いもかけない再会を果たしてしまい、二人の心は微妙に揺れ動く。

   悪い作品ではないのだが、どうしても目についてしまうのが、主題の中途半端さ。最初にマックスとチャーリーの再会を持ってきているので、その時点では、エイズ問題がメイン・テーマかと思うのだが、以降、前半でエイズの話は全く登場せず、マックスとカレンの成り行きをストーリーは追い続ける。こんな具合なので、「ああ、エイズの話はアクセントだったんだな」と思っていると、一年後の場面でいきなり瀕死のチャーリーを中心に話を進めるもんだから、主題がぼやけてしまっている。

   映画の後半は、静かに死んでいくチャーリーの存在がマックス、カレン、そしてお互いの配偶者達を撹乱していく様子が描かれるのだが、「何故チャーリーはエイズになったのか? 何故エイズでなければならないのか?」というポイントの掘り下げがないのに、エイズの危険さを説こうとする製作者の姿勢が見え隠れして、作品の完成度を下げている。少なくとも、僕にとっては、チャーリーをエイズ患者に設定する必然性は全く感じなかった。

   最後のオチも、面白いものではあるが、エイズ問題とは何の関係もない。そもそもマックスとカレンの関係をお洒落に描きたかったのなら、余計な啓蒙精神は不要。

   とはいえ、チャーリーが力尽きて死にゆくシーンは、思わず息が詰まって涙を流してしまうほど胸に迫る素晴らしい迫力だ。この作品で一番損をしたのは、映画上無駄に死んでいったチャーリーと、迫真の演技が作品の評価に結びつかなかったロバート・ダウニー・Jrだろうな。

wb01480_.gif (190 バイト)ここ2、3年で最高の邦題でしょう 『メリーに首ったけ』wb01480_.gif (190 バイト)
(1998年アメリカ作品、監督・脚本:ボビー・ファレリー、ピーター・ファレリー、出演:ベン・スティーラー、キャメロン・ディアズ、マット・ディロン)

mary_top.jpg (23058 バイト)    一緒に観に行った友人は「キャメロン・ディアズがそんなに可愛いとは思えん……」と漏らしていたが、そう言っちゃぁオシマイの映画。『ジム・キャリーはMr.ダマー』でコーエン兄弟のライバルとして名乗りを挙げた(ウソ)ファレリー兄弟は、ドタバタコメディ路線をベースにしつつ、キャスティングの妙を最大限に生かす作風が特徴だ。とにかく、この『メリーに首ったけ』は、周りの男みんながメリーに“ほの字”になって巻き起こる大騒動を描く、っていうだけの言葉で説明すれば実もフタもない作品。という訳で、2時間楽しめるかどうかのポイントは、観客みんなを納得させられる程メリーが魅力的か? という点に尽きる。

   僕としては、すっかり「キャメロンに首ったけ」モードで、世間大体の評判も好意的なのだが、中には前述の友人のような奴も少なからず存在する。そうなると、後は脚本と演出力の勝負になるのだが、この観点からいくと、少々弱いかも知れない。障害者ネタから動物虐待ネタからお下劣な下ネタまで、「どやっ? 面白いやろ? これでもか!!」という放送禁止ギャグの連発でストーリーは流れていくが、それもこれも観客がメリーの魅力を認めて初めて本当に面白くなるというもので、何もコントビデオを見てるんじゃないんだから、笑えりゃいいってもんじゃないだろう。

   だから、これはハッキリ評価が分かれる作品だと思う。冒頭でキャメロン・ディアズに一目惚れした人にとっては大満足の爆笑映画、キャラクター設定にすんなり同意できなかった人にとっては消化不良の小ネタ映画、っていう感じ。僕は100%前者でしたが……

   主役はベン・スティーラーが演じる内気な男デッドなんだけど、キャラクターとしてより際立っているのは、インチキ私立探偵からニセ一流建築家に転進(とは言わんか?)するヒーリー。とにかくメリーの気を惹こうと、口からデマカセ出放題、盗聴盗撮お構いなしという超アブナイ奴を、マット・ディロンが完全なハマリ役で熱演。このの人、元は二枚目の出で、いや、今も滅茶苦茶カッコイイんだけど、最近は『最高の恋人』とか『イン・アンド・アウト』みたいなこの手の二枚目半の役どころが得意フィールドになってきたようだ。

   もひとつオマケ(?)に誉めときたいのが、デッドの狂おしいメリーへの想いを、ギター弾き語りで朗々と歌い上げるジョナサン・リッチマン。この人、知る人ぞ知るカルト・シンガーソング・ライターなんだが、何でサントラだけじゃなくチョコチョコとスクリーンにも出てくるのかな? おまけにこのオヤジ、最後に殺されてしまうんだが、ということはアンタは黒子じゃなく出演者だったのか?

wb01627_.gif (253 バイト)Seeker's Holiday Camp