【Cinema Holiday】 次のテレビ版まで待てない! | |
=思うツボにハマってしまった『X−ファイル ザ・ムービー』= | 1998/12/29 |
(1998年アメリカ作品、監督:ロブ・ボーマン、出演:デイヴィッド・ドゥカブニー、ジリアン・アンダーソン)
『ツイン・ピークス』ってドラマが昔あったけど、今どうなってるのかな? まだやってるんでしょうか? 海外ドラマについては、全然と言っていいほど知識がないので、あくまで印象でしかないのだが、一時の盛り上がりはかなり凄かったように記憶している。それで、その勢いのあるうちに映画化されたのだけど、あれ評判悪かったなぁ。僕は元々のテレビ版も殆ど見ておらず、映画版も未見なので何とも言えないのだけど、特にテレビ版からの熱心なフリークには不評サクサクだったように思う。結局、あれからシリーズはどうなったのだろうか? 元々映画版で終わる予定だったのかもしれないけど、世間の評判だけで言えば、晩節を汚したような感じだった。
『X−ファイル ザ・ムービー』製作の話を聞いて僕が最初に思ったのはそんなことだった。熱狂的ファンの数は恐らく『ツイン・ピークス』の比じゃないだろうし、全米で放送終了したシリーズ5と新しく予定されているシリーズ6のブリッジとして位置付けられているとのことなので、失敗した時のダメージも途方もなく大きい危険な賭けに違いない。一歩間違えれば、これまで獲得してきたファンの多くを手放し、シリーズ6もオジャンになって、という結末さえ予想してしまった。
ところが、この映画版がメチャクチャ面白かったのだ。『ツイン・ピークス』よりは少しはテレビ版を見てはいたが、それも日本でいきなりゴールデン・タイム放映されてブームになった時期だけのことで、シリーズ3以降は全く知らなかった。というようなこんな僕でも、十分楽しめる立派な独立映画作品になっていたのだ。もちろん主人公は、宇宙人オタクの変人モルダーと知的美人医師スカリーのFBIコンビ。テレビ版でチラチラと登場する(らしい)イギリス秘密組織のオッサンや、そいつと繋がっている謎のアメリカ人とか、過去シリーズで御馴染(らしい)人物が色々と登場するが、そんな事前知識は一切不要。練りに練ったストーリーと、テレビ版では不可能なスケールの壮大な画面をただひたすら追うだけで、十分過ぎるほど引き込まれる素晴らしさだ。テレビ版から熱心にチェックしている人にとっては、辻褄の合わないところがあったり、逆に元エピソードとの関連からより深く楽しめたりするところがあるのだろうけど、そんなシガラミは一切抜きでも、あっという間の楽しい2時間だった。
ストーリーは、謎の凶悪ウィルスと既に地球上に存在している(らしい)宇宙人、それに世界規模の陰謀を企む秘密組織に、モルダーとスカリーが挑んでいくというもの。とにかくよく2時間に収めたなぁ、という密度の濃さで、息つく暇もなく話がドンドン展開していく。そこに、テレビ版からずっとグズグズしている(らしい)モルダーとスカリーの間の微妙な男女関係を絡めていて、これがまたハラハラさせる。「スカリーちゃん、大人だねぇ」と思わずニヤリとしてしまう秀逸の出来。
とは言え、シリーズ6に繋げるという至上命題があるため、全ての謎が解明された、という結末にはなっていない。むしろ、エンディングは、嫌がおうでもシリーズ6を見なければ気が済まないように作ってあって、なるほど商売上手と拍手せざるを得ない。特撮も中々凄く、とりわけ謎のウィルスが人体に侵入するところなんか鳥肌モノの怖さだった。
しかし、これほど面白いと、今までのシリーズ1から5までキチンと見たいという欲求がどうしても湧いてくる。だがビデオは全部で60本120時間…… 老後の楽しみにとっておこう。